第30話 テスト結果帰ってきて、木下とデート約束

 

「ほら見てみて春翔くん! この前じっくり教えてくれたおかげで苦手科目の英語で65点も取れたよ、本当にありがとう〜っ!」

「本当か木下さん!! おめでとう! お役に立てて何よりだよ」


 ようやくテスト期間が終わり全ての科目のテストが返って来た今、もうストレスが無くなった。しかも今回は月愛とのゲームで勝負をしてるからな、全ての科目で90点台を取ってる俺が負けるはずがない……っとそんなことよりも木下さんに集中だ。


 ああこの笑顔だ……木下さんの天使のような笑みが今俺だけに向けられている。

 なんて幸せなことなんだろう……このまま天国まで昇天していけそうな気分だ。


「本当に感謝してるんだからね颯流くん! おかげでテスト順位で初めて200位台を抜け出せる気がするよ!」

「ありがとう木下さん。嬉しいけど、それは木下さんが努力した結果だよ」

「そうだね。けど颯流くんの功績も本当にデカいんだから! それを自覚してね?」

「あ、ああ……そこまで行ってくれると何だか照れるなぁ」


 そうやって頭を掻いてると真横でいちゃついてるバカップルが突っ込んで来た。


「ぷっ、あはははっ」

「ったく、本当マイペースだよなぁこいつら?」

「っ……何だよ2人とも」

「そ、そうだよ……特にナゴミン急に笑うなんて酷いよぅ」

「ご、ごめん優希、だって、本当に可愛らしいんだもん〜。ねえしゅーくん?」

「ああ、全く……焦ったいもんだぜなぁ?」

「なっ? 何を意味深に笑ってんだよお前ら……」


 間違いない……俺と木下さんのやり取りを見て笑ってるんだろう。

 俺が木下さんのことを好きだと知られているせいでハラハラドキドキしてしまう。

 うっかり大事な情報を漏らさないように俺がしっかり手綱を握っておかないとな。


「いんや別にぃ〜?」

「んなことより颯流お前今回も流石だよな。隣で観察しても全教科90点台だろ?」

「えっ!? それ本当なの颯流くん!?」

「今回も学年1位で間違い無しっぽいよね〜」

「まだ掲示板は出てないけど、恐らくそうなんだろうな」


 恐らく今日の放課後に貼り出されると思うが、俺はもうほぼほぼ確信している。

 今回のゲームは俺が勝ったな……まだ月愛の点数は1個も聞いてないが大丈夫だ。

 今まで学年トップの成績の保有者として君臨し続けて来たからこそテストで100点取ることの難しさを分かっている……いくら月愛と言えども至難の業だろうさ。


「なあに邪悪な笑みを浮かべてやがるんだお前〜?」

「優希も見たー? 今のん絶対良からぬことを考えてたときの顔だよね〜」

「え? せ、颯流……そうなの?」

「いや何も企んでないから。ただ手応えがあまりにも良かったからほくそ笑んでた」


 いかんいかん……目の前に最愛の木下さんがいると言うのにあんな悪魔野郎のことなんざ考えてちゃ……頭から追い出して目の前の天使ともっと仲良くするぞ!

 クロワッサンと小山のバカップルの目線を気にしてないで男を見せろ俺!


「それにしても全科目で学年1位って凄いよ颯流くん! 私にはとても無理そうだからね〜ニャハハ」

「点数が多く取れるに越したことは無いと思うけど木下さんもじっくり教えてくれる役割の人間が居れば点数伸びるようだし、これから少しずつ点数上がると思うよ」

「そ、そうだね……けどその人には何だか悪いよ……私のために時間を沢山使うことになるんだもん」

「いや俺はむしろ良いことだと思うぞ? 勉強ってのは教えてる側も復習を同時に行えるからな。木下さんがそこまで億劫に感じる必要は全然ない」

「そうなんだ! あ、そういえば前に何だかそういう話を聞いたことがあるよ」


 俺がこうして木下さんと2人だけで話してる真っ最中も真横のバカップルはお互いに耳打ちし合ったりしててクスクス笑っているが、外野は無視しておこう。

 何とか木下さんとデートに行けるように話を持っていきたいものだな。


「……それじゃあさ木下さん。これからも木下さんの家庭教師のような役目を担う存在に、俺を頼ってくれないか?」

「……へ……」

「俺なら実力不足は無いと思うんだ。だからどの教科でも好きなだけ教えられるよ」

「……あ……」

「だから木下さんさえ良ければ今後も勉強をつきっきりで教えてあげるよ。……その、もし木下さんが嫌ってわけじゃなかったらだけど……」

「そんなことないよっ!」

「うぉっ!?」


 少し大きめな声量で木下さんが言葉を吐いた影響でちょっと驚いてしまった。

 みるみるうちに頬も赤くなっていくぞ……本気で何なんだよこの可愛い生き物は。

 今すぐに抱きしめて頭を撫で撫でしたくなる衝動に駆られてしまったが自制だ。


「あ……ごめん颯流くん……」

「俺は大丈夫だ木下さん」

「……だから、その……私も勉強をつきっきりで教えてくれる相手が、颯流くんが良いから……今後も私の家庭教師になってくれないかな?」

「っ……もちろんだよ! これからも木下さんに勉強を教えてくから共に頑張ろう」

「うん! 今後もよろしくね颯流くんっ!」


 うおおおっしゃああっ!!

 話の流れで今後も木下さんと2人で居られる口実と約束まで出来たぞ!!

 マジで勇気出して良かったよ、やっぱりこの世の中は捨てたものじゃないんだな。


「くっくっく良かったじゃねえか颯流ぅ〜」

「っ……揶揄うなよクロワッサン」

「優希も専属の家庭教師がつけるなんて良かったね〜? いやー学年トップの成績者が家庭教師何だからアンタは物凄く恵まれてる。だからちゃんとお礼しなさいよ?」

「う……うん、そうだよね……分かった」


 すると木下さんがまた頬を少し赤ながらも真剣な目つきで俺に向き合った。

 隣のカップルも「おっ」とか言い合って再び観察に徹したようだ。

 俺も木下さんがこれから何を提案するのかと思うと心のドキドキが止まらない。


「颯流くん。今回だけじゃなくこれからも私の勉強に付き合ってくれるんなんて、奇跡みたいな出来事だと思ってるよ」

「そ、そんな大袈裟な」

「ううん。颯流くんの貢献は計り知れないし、颯流くんが思ってることよりもずっと大きなこと何だからね」

「そ、そうなのか?」

「うん。だから私にもお礼をさせて欲しいの。颯流くんが望むことなら私……何でもするよ?」


 そう顔を赤くしながら上目遣いで俺を見てくる木下さん。

 ドッキュン〜……今の仕草はずる過ぎるだろ木下さん……マジでますます惚れる。

 それにそう言うことはあまり男に向かって言うものじゃないと思うぞ木下さん。


「……木下さん。その、あれだ……気持ちは嬉しいけど、安易にそう言うことを男に言うものじゃないぞ」

「……へ?」

「そんな提案をされたら男は絶対に調子に乗りたがるものだ……木下さんは本当に可愛いからな。本当に何をされたとしても……文句は言えなくなるんだぞ?」

「……あ……そうだったね。ニャハハ、ごめん。今後は気をつけるね。……けど……颯流くんはそう言うこと、しないんでしょ?」

「……それは俺だって分かんねえぞ?」

「……へ、え、えっ……?」


 この子はあまりにも純粋過ぎるから俺が男だということを忘れてるんじゃないか?

 本人と接する中で常に隠しているが俺にだってセックスしたい欲求はあるのだ。

 だから俺は木下さんさえ許してくれればいつだって押し倒したいと考えている。


「だからお礼は軽めので良いよ。そうだな……ジュース奢ってくれ」

「へっ? だ、だめだよそんなに軽いのじゃ。全然釣り合ってないよ」

「……なら、昼ご飯奢るとか?」

「まだまだ軽いよ……あっ! 良いの思いついた」

「お、なんだ? 言ってみてくれ」


 すると顔を赤くしながらも木下さんが提案をしてくれた。


「お礼に私が颯流に似合う服を取り繕ってあげるから、一緒に出かけに行かない?」

「え……行きたい」

「んっ!?」

「そうだな、一緒に出かけよう木下さん! そっか木下さんってファッションに詳しいんだもんな。そんな人が服を選んでくれるなんて光栄だよ、本当にありがとう!」

「う、うん……また空いてる日が出来たら誘い直すから、それまで待っててね?」

「待ってるよ木下さん! 俺は例えその日に予定があっても無理矢理開けるぞ!」

「へっ!? そ、それは嬉しいけど流石に相手が可哀想じゃないの!?」


 まさかの木下さんからデートに出掛ける誘いを貰う日が来るだなんて……!

 今日まで生きてて本当に良かったよ俺は……これは本気で嬉しいぞ!

 本人はデートと言ってないが、俺がデートのつもりで臨めば良いんだ!


 よおおおおっしゃあああああああっ!!!

 好きな人との初デートの約束ゲットだぜぃ!!

 ひゃっほう〜っ!! 今日は今まで生きてきて最高の日だ!!


「いや〜良いものを見させてもらったねえしゅーくん?」

「本当にな……2人とも、毎度毎度ご馳走様でしたぁ!!」

「えっ!? ちょ、ちょっとなに!?」

「やかましいぞクロワッサン! それは主に俺のセリフだろうがっ!」


 そう4人で談笑を続けながらも、俺は心底ウキウキしていた。

 だが、奥の方から月愛がこちらを見てニヤリと笑っていたことに気づかなかった。

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