第五回:田舎の鳩『過ちの王から始める異世界選択 〜落ちぶれ三十路サラリーマンが憑依したのは、史上最悪の暴虐皇帝?!〜』(3)



―――― 影響を受けた作品 ――――


▼ 作者に聞け  童話のように語られる本作品ですが、作風で影響を受けたり、参考にしたりしたものはありますか?


● 田舎の鳩  あります! 影響を受けたのは、ボカロPのぬゆりさんという方が作られた『ロウワー』という曲です。


 この作品のアイデアが浮かぶ前に公開されていて、当初は感情移入できなくて「あんまり」な曲だったんですが、この作品のアイデアが生まれた時にたまたま聴きに行ったら、急に「感情移入すげえ!!」となって運命を感じました(笑)。それから作品が完成するまで、繰り返し聴いてました。


 テーマの「狂信」は同じなんですが、自分の作品は「集団の中での依存と救い」、あの曲はもっと「個人的な執着と救い」に焦点を当てているので、少し違うかもしれません。


 でも、曲の展開の美しさがとても気持ちがよくて、「狂信する側」の掌返しの様とか、全体のスピード感は、すごく影響を受けていると思います。


 大学で絵本を何冊か作ったことがあって、童話っぽいものはよく読むので、文体は多分そこから来ているかな。


▼ 作  自作の『狂信者の民』が「ライバル」だと仰っていましたが、鳩さんが最もおすすめしたい短編は、何ですか?


● 鳩  自分の作品で?


▼ 作  ご自分のでも、他の方のでも構いません。


● 鳩  これは別に、司会者の田崎君を持ち上げるわけではないけど、ここ最近では『釣り人』がめちゃめちゃハマりました。


 田崎伊流『釣り人』

  https://kakuyomu.jp/works/16816700429179412827


● 鳩  自分自身、物事には何にでも「意味」を見出しがちなんです。割と病的に。作品にもそんなところがあって、緻密に「意味」を証明したいというか。


 そんな中であの作品は、主人公の本当に当たり前の日常の中での、ちょっと残念なワンシーンであるにもかかわらず、主人公は「意味」とかそんな固いことも考えず、すっと納得して、また次の日を生きていく。そんな自然さが、すごく自分に刺さるものがありました。


▼ 作  なんかヤラセみたいで、恥ずかしいですね(笑)。ありがとうございます。


● 鳩  やらせじゃないよ!



――――「狂信」と「指導者」というモチーフ ――――


▼ 作  『狂信者の民』は、狂信という意味で『過ちの王から始める異世界選択』と似た印象を受けましたが、両者に共通するモチーフはありますか?


● 鳩  そうですね。「指導者」というモチーフは共通していると思います。 


▼ 作  「指導者」?


● 鳩  はい。『狂信者の民』では、村民たちが「神」と呼ばれる男に、正しい道を「指導」してくれるよう期待している。『過ちの王から始める異世界選択』のルドルフも、自分の配下たちに叛逆の道を「指導」する人でした。誰かの運命や命を握るような重い責任のある「指導」をおこなう立場というところが共通しています。


 「他者の幸福への責任を負う人」と「他者に自分の幸福の責任を負わせる人」という共犯関係のようなものが、自分の好きなテーマなんでしょうね。この点で、二つの作品は通じ合うところがあるような気がしています。


▼ 作  『狂信者の民』にも、選択に対する責任のなさがあるわけですね。


● 鳩  はい。「盲信」して、「選択」は神様にお願いしてるので(笑)。


▼ 作  ありがとうございました。『狂信者の民』は、人間の信じる心を的確に表現し、それに従う者を描いた洗練されたショートショートです。約千八百字と手ごろな長さなので、ぜひあわせてお読みください。

                                                                                            

 「小説家のつどい」のメンバーから、鳩さんへの質問はありますか?



―――― 最終的な構想、小説執筆のきっかけ ――――


▼ 作  『過ちの王から始める異世界選択』に戻りますが、最終的にどこまで話を広げるか、現時点で決めていますか?


● 鳩  結末はできてるんですけど、一章が終わってから、その結末までの間はほとんど決まってないですね。できればあまり広げたくないし、綺麗にまとめれれば、いいなと思ってます!


▼ 作  小説を書こうと思ったのは、いつ頃ですか? またそのきっかけは?


● 鳩  小学六年生の時に、上橋菜穂子先生の『獣の奏者』に影響を受けて、家にあった箱みたいなパソコンで、ワードにパチパチしてました。データはなんかの拍子に飛びました(泣)。


 あれが最初だったかな。「好きだ!! 自分も書きたい!!」って感じですね。


▼ 作  小説を書く時、特に意識していることはありますか?


● 鳩  変な習慣なんですけど、お祈りしてます。書く前に、小説に対して、「今日も小説を書かせていただきます。よろしくお願い致します」とか、寝る前に、「今日はこんな話ができました。こんなアイデアが生まれました。ありがとうございました。明日もよろしくお願いいたします」という感じです。なんか、これをやってると調子がいい気がしてます。


▼ 作  小説を書けることへの感謝を忘れないってことですね。


● 鳩  「小説」が自分と切り離された存在だったらいいなと思っていて、そこから来るのかな。でも、普段こんなことは誰にも言いません!


▼ 作  この作品は、主人公が皇帝の位を簒奪しているということで、政治にもかかわることがあると思います。それに関連して、この世界の地図は作られたりしているでしょうか。


● 鳩  地図は作ってませんね。東西南北に何があるかの設定くらいかな。



―――― テンプレ要素との距離感、リアルな死の描写 ――――


▼ 作  この話を作るにあたって、「小説家になろう」のような一般的テンプレ要素に近いものが存在すると思います。そういう要素をわざと意識して多めに入れたり、わざと外したりっていうようなことはありましたか?


● 鳩  意識はしてます。そもそも他のテンプレを参考に作ってるので、自分が書いたら勝手に外れていくやろな、と思っています。流れの外枠はテンプレ適用で、中身は自分の具材を入れてく感じです。


▼ 作  初の長編だそうですが、短編とちがって何か意識していることはありますか?


● 鳩  書き直しはできるだけしたくないんですが、なかなか難しいんですよね。短編なら、完結した時点で「一個の球体」みたいになるんですけど、連載ものの長編は、「大きな球体」の中で、ミミズみたいな細い線をちょっとずつ泳がせていく作業みたいな、そうしていつか、大きい球体が見えるようになるみたいな意識で書いています。


▼ 作  鳩さんの喩えに撃ち抜かれます(笑)。なるほど、すごい分かりやすいです。


 主人公が死ぬシーン、すごいリアルに描かれていますね。死因は急性アルコール中毒とのことですが、あの描写はどのような経緯で生まれたものなのでしょうか。何かインスピレーションを受けたものとかあれば、教えてください。


● 鳩  自分は酒に弱いタイプなんですけど、あの死因を思いついたのは、リアルの知り合いで、実際に急性アルコール中毒になり運ばれちゃった人がいて(無事でした)、その話とかを聞いて「怖っわ!!」と思った時の体験が活きてるかもと思います。あの時の先輩、元気にしてるかな。


▼ 作  そんなことがあったんですね!


 さて、最後になりますが、読者に向けて一言お願いします!


● 鳩  はい! ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!! もし拙作に興味をもっていただけましたら、現在一章の途中まで公開中、不定期連載中ではありますが、お読みいただけると嬉しいです!!


 一章を読み終わるころには、あなたの人生において「意味のある物語」となったらいいな(笑)、と思いながら、鋭意執筆中です。


 こんな素敵な機会をくださった「小説家のつどい」のみなさん、いつもありがとう!! これまでとこれから、インタビューを受けるみんなの作品も、ぜひよろしくお願いいたします!




インタビュー  二〇二二年三月十一日、「小説家のつどい」内のチャットで実施

ゲスト  田舎の鳩

司会進行  田崎伊流(たいりゅ)

質問者  なん、ムツキ、冬乃こたつ、みやつば

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