キャラクター語り(12)エティエンヌ

 翻訳者だって「ひとりの読者」としてネタバレ感想書きたい!

 そんな主旨で、好き勝手に語ります。


 ここからは、各章の「登場人物紹介」ページの順番にならって、私が思ったことを書いていきます。



▼エティエンヌ・シュヴァリエ(18歳)

シャルル七世に仕える小姓ペイジ

大きな青い目、長い金髪、上品な風貌、注意深さと大胆さを兼ね備えた美少年。まだ子供といっても通じる年頃。

アニエス・ソレルの幼なじみで、ひそかに愛している。

シャルル七世に対して表向きは辛辣だが、本心では慕っている。



(アルファポリス版「登場人物紹介・第四章」でイメージイラスト掲載:https://www.alphapolis.co.jp/novel/394554938/191633648/episode/5794493)




キリスト教で最初の殉教者・聖ステファノをフランス語にするとエティエンヌだそうです。殉教者とは、信仰・信念のためにみずからの命を犠牲にする者のこと。


デュマ先生、はじめから殉教者の役にするつもりでこの名前にしたんだろうな。


なお、聖ステファノは天使のような顔を持ち、「不思議な業としるし」によって人々をひきつけたため、これをよく思わない人々によって訴えられたとか。


原作「Tristan le Roux」では、エティエンヌの美少年ぶりが何度も言及されます。

単純に「顔がいい」だけでなく、相手が誰であろうと忖度しない毒舌ぶりと聡明さ、アニエスへの秘めた思いと自己犠牲的な優しさが混ざり合い、他に例えようのない魅力的な美少年キャラだと思っています。

好きなセリフがいっぱいあるので、名言(迷言)を集めたbotを作りたくなる。


個人的に、エティエンヌの死はこの物語のターニングポイントでした。

先に述べたようにシャルル七世目当てだったため、「大体のあらすじがわかればいいや」くらいのかなりゆるい感じで読み飛ばしていました。ストーリーの細部まで注意を払っていなかった。


それが……。

死亡フラグよろしくエティエンヌが悲惨な死を遂げ、さらにトリスタンの「主人公としてあるまじきイキリ言動」が重なって、一読者として大きなショックを受けると同時に、物語の結末がまったく予想できなくなりました。


つまり、シャルル七世抜きでストーリー自体に惹かれるきっかけが「エティエンヌの死」だったのです。


適当な読み流しでは済まなくなった。

最後まで見届けたい、ことあるごとに読み返したい——、心に残る名著のひとつになりました。


過去に二次創作をやっていたオタクとしましては、エティエンヌ生存ルートを模索したくなります。


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