2話 平原の戦い(1)
ブリタニーはカルナックの村を横断したが、小さな村を横切るのはあっという間だった。
最後の家の前を通りすぎてしばらく行くと、ブリタニーは当時流行していたバラッドの最初の節を口ずさみながら、しばらく自分の時間を過ごした。
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サンマロからゲランドへ
小さな女の子、大きな女の子
歌って、亜麻を紡いで
だから、市場ではエドワードの息子に
樽一杯分の上質な金貨を提供できるほど売れた
そうすれば、彼は最後には
我らの親愛なる主君デュ・ゲクラン卿を
返してくれるだろう
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ブリタニーは「さあ、ブルゴ。さあ、友よ!」と軍馬に声をかけると、詩から散文に切り替えた。
「もう時間がない。夜が来るから急ごう。カルナック城まではまだ遠いし、ここは雪を降らせるような冷たい風が吹いている」
ブルゴの速度を二倍に上げようと、ブリタニーは景気づけにバラッドの二番を歌い始めた。凍えかけた脚部をよく動かすには、体を温める準備運動が必要だ。
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こちらの主君ゲクラン卿は勇者である
ローマを追われた教皇が
アヴィニョンから祝福を受けて
ベルトランと名付けられた彼が
サラセン人の額に
ブルターニュの旗を押し立てて
善良であれば悪人も溶かすことを示した
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ブリタニーは二番の終わりまで来ると、三番を始めずに、ふんふんと鼻歌を歌った。長い歌詞を忘れてしまったのか、それとも続きの歌詞が気晴らしにふさわしくないと認識したためか、どちらかだった。
ちょうどこの時、ブリタニーは分かれ道に来ていた。
これは予期していなかった事態で、彼は「どちらの道を行くべきか」と非常に困ってしまった。立ち往生している間に、日がどんどん短くなってきた。
ブリタニーは、カルナック城までのルートを村で確認しなかったことを後悔しながら馬を止めた。間違った道を進むくらいなら一度村に戻って道を聞こうとしたとき、地平線上にぽつりと何かが見えた気がした。
この一点をじっと見つめ、自分の方に向かってくると気づいたブリタニーは、「あれが人間なら、正しい道を教えてくれるかもしれない」と願って、その点に向かって歩みを進めた。
その点はしだいに大きく、さらに詳細に見えてきた。
ブリタニーは、自分のところに向かってくるのは馬に乗った人間だと確信した。この確信に加えて、積雪のせいで変化しやすいこの地形をできるだけ早く前進させるために、ブルゴに拍車を二回かけた。
数分後、ブリタニーは小馬に乗った農夫の前でブルゴを止め、相手も立ち止まった。
「友よ、教えてくれ。この二本の道のうち、カルナック城に通じているのはどちらだろう?」
ブリタニーは出迎えた農夫にたずねた。
「カルナック城ですか。まだまだ遠いですが、この道を行けば着きますよ」
「ありがとう」
ブリタニーは礼を言って別れようとしたが、農夫は「カルナック城ですか……」とつぶやき、何か言いたそうな気配を漂わせた。
「ああ、そうだが?」
「今日じゃないとだめなんですか」
「できれば今日がいい。なぜ、そんなことを聞く?」
「もし俺があなただったら、明日まで旅を延期しますね」
ブリタニーは理由をたずねた。
「あと一時間もすれば暗くなり、カルナック城に行くには平原がほとんど見えなくなってしまう。この平原は夜よりも昼に渡った方がいいし、できれば渡らない方がいいくらいですよ」
「そうなのか! 平原に何かあるのか?」
「そこら中にある大きな石は悪魔に捧げられていましてね……」
ブルターニュ地方のカルナックは、三千個もの巨石が並ぶ先史時代の遺跡で知られているが、15世紀当時は「ドルイドの石」と誤認され、気味悪がられていた。
「恐ろしいことに、真夜中から夜明けにかけて動き出し、奈落へ導く悪霊と踊り始めるのですよ。……笑っておられるのですか、騎士さま?」
「悪いが、私は悪霊を信じていない」
農夫は驚いた表情でブリタニーを見つめて「まぁ、いいや」と言ったが、「悪霊を信じなくても狼ならどうですかね」と続けた。
「確かに。私は何頭か出会ったことがあるが」
「騎士さま、この先の平原で大群と出会うことが期待できますよ」
「悪霊よりもそっちの方が問題だ。その狼はどこから来る?」
「オーレの森から間違いなく」
農夫はもう一度警告した。
「騎士さま、あなたは自分が来た道を戻った方がいい。カルナックの村へ戻れば、俺の茅葺き小屋がありますし、美味しいスープをごちそうしますよ。ブナの暖かい火に当たりながら夜九時までよもやま話でもして、そして良いベッドで明日まで眠ることができます。急いでいるなら、夜明けに出直せばいい」
「ご親切にありがとう、友よ。だが、私は今夜中にカルナック城に到着すると自分に誓ったのだ。だから、予定通りに行く」
「神が騎士さまをお導きになりますように。最後に、あなたの名前を教えてください。もし、オーレからの帰り道であなたの死体が食い荒らされているのを見つけたら、埋葬して墓碑銘を刻み、あなたのお母さんに訃報を知らせると約束します。お母さんが生きていればの話ですが」
ブリタニーは微笑みながら、親切な農夫に自分の名前を教えた。
「私はアルテュール・ド・リッシュモン大元帥に仕えている。しかし、私が名乗ったのは、あなたが私の主人に何か嘆願したいときに、私が仲介できるようにするためだ。狼に食い殺されて弔ってもらえないことを恐れているのではない。幸い、私は狼より大きな獲物を狩った経験があるのでね。平原の狼に怯むことはない」
「お望みのままに、騎士さま」
「忠告をありがとう、友よ。神があなたを導いてくれますように」
「俺も同じ願いです」
ブリタニーと農夫は別れて、それぞれ反対側へ歩みを再開した。
先を急ぐブリタニーは馬上で前屈みになって拍車をかけ、農夫は小馬ののんびりした足取りを再開し、小麦粉の袋が馬上で跳ねた。
しばらく行くと、親切な農夫はブリタニーが通り過ぎた地平線の彼方に消えた。戦死者にかぶせる大きなシートのように、この淡く暗い広がりの荘厳な静けさを乱すものは何もなかった。
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