第13話 幸せ
その殺伐としたお茶会はローズマリーを取り戻したい帝国側と、ローズを守る王国側での丁寧な戦争だった。
父である公爵は、かつて愛した妻そっくりに成長した娘の姿に涙を流した。リアムは終始、ローズマリーと目を合わせることができなかった。
大人しかった婚約者は今は強い意志を持って、彼を視線で射抜いていたからだ。
二度と現れるな、と言われていたのにこうして平然と目の前にやってくるその神経が分からない。
公爵は初めて出会う孫に警戒され、さらに落ち込んでいた。
三人の子供たちもあの悲劇の物語は知っている。今ではその少女がかつての母であったことも知っているのだ。
「私は今が一番幸せなのです。母と神が私を助け、王国でようやく家族を得たのです」
家族という言葉が止めになったのだろう。
その会談は王国側の完全勝利に終わった。
その後もローズマリーは忙しくも幸せに、人を愛しそして愛された。歴史を代表する魔女として名を残し、僕にもついに彼女とお別れする時が来たのだった。
綺麗にきらめき、ヒビもない綺麗な魂。
僕はキラキラと輝くその魂を神界へ送った。彼女が死んでしまっては、僕もこの時代に残ることは出来ない。
ローズを通して神殿も作ってもらえたから、多少の干渉は出来るだろう。
彼女の魂は豊穣を司る姉が受け止め、ゆっくりとした安寧に包まれた。これからまた生まれ来るにしても、神界で家族を見守るにしても、どちらにしても僕とはお別れだ。
僕はローズの旅立ちを見守った。
「さよなら、ありがとう、私の友だち」
「さよなら、大好きだよ」
言葉を交わして、僕らは別れた。
それから僕はまた闇の中に戻ることなった。キラキラと落ちてくる魂の欠片たち。その欠片に幸せな夢を見せながら、再生か消滅を選択させる。
僕のかわいい子たち。煌めく魂たちは、闇の中を静かに静かに小さくなりながら落ちていく。
幸せな生を与えれば、二度と会うことのないこの子たちの幸せを願いながら、僕はまた人間たちの不幸な人生を鑑賞するのだった。
いつかまた彼らの願いを叶えるその日まで――。
呪われた令嬢は、神に愛されて幸せになります!~願いはたった一つ、彼女の幸せ~ 夏伐 @brs83875an
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