第一回:本編から削った設定と書く程ではないキャラの裏話色々。

* 第二連隊長執務室の執務机の話。


 フランツの執務机は南窓に背を向ける形で置かれています。

冬場は良いのですが、夏場は後頭部が熱せられて修業の日々を送る事になります。

またこの机はかなり古く、第二連隊の庁舎が出来た時に設置されて以降、一度も交換されていません。そして、過去、幾人かが移動と交換を試みましたが、いずれも成功していません。理由は、床に固定されているからです。

 当時の連隊長が何を考えていたのかは分かりませんが、ガッツリ固定されてます。

 もし第二部を書く機会があれば、いよいよ我慢ならなくなったフランツが騒動を起こすシーンを入れる為の伏線にしたかったのですが、そも第一部が終わるかどうかも分からなかったので削りました。

 因みに、とある禁じられた物が発見されます。




* アリシアがエリザベスを『リリー』と呼ぶ理由。


 グルンステインは過去、ファブリスという王国と併合しています。

これは戦争による併合ではなく結婚による平和的統合なので、グルンステイン上位ではありましたが、両国の貴族はお互いを対等に扱いました。ファブリスは若い王が病を患い、次期後継者が幼い娘のみ、という事で、王女をグルンステインの次期王妃に据えて国内貴族と国民を対等に扱う事を条件に、国土の併合を願い出ます。ファブリスは南部の大国アンデラと全面的に国境を接していた国で、自分の死後にアンデラが攻め入ってくる事を知っていたのです。

 当時のグルンステイン国王は快諾しました。楽して一気に国土が増えますからね。

 そして、王太子オーベールとファブリスの王女を婚約させます。かなり歳は離れていましたが、二人は仲睦まじい夫婦となりました。ファブリスの王女の名は『エリザ=リベット』と言い、王女は自分の名前を何だか半端で面倒臭い名前だと思い、好きではありませんでした。そこで王女は自らを『エリザベス』と呼ぶように周囲に言いつけます。エリザベスそのものがエリザ=リベットの愛称になりました。でも、オーベールは彼女をエリザベスと呼びません。二人きりの時には、エリザ=リベットを捩った『リリベット』。さらにそれを捩った『リリー』と妻を呼びました。

 グルンステインの王都リリベットは、遷都の際、オーベールが自分だけが呼ぶ事を許された愛称を、新しい王都に贈ったのが命名の経緯です。王都リリベットは出来たばかりで、若く美しく、これからも益々磨きが掛かって行くだろう妻を連想させたからです。王都リリベットは、繁栄するグルンステインの象徴として両国の国民に愛されるようになりました。それはオーベールの妻に対する想いと願いそのものでもあったのです。

 それから、グルンステインではエリザベスという女性の愛称にリリベット、リリーが用いられるようになりましたが、その愛称はオーベールのみが呼ぶ事を許された名だと言う印象もあり、畏れ多いのでその愛称で呼ばれる人は実際には少数です。

 でも、アリシアはオーベールとエリザ=リベットの愛の物語に胸キュンなので、迷わずエリザベスをリリーと呼ぶようになったわけです。

 余裕があれば、ファブリスの物語も書きたいです。




* ロシェット大尉について。


 フランツの副官ロシェットは、ロシェット男爵家の次期当主です。

王宮庭園に屋敷は構えておらず、地方の領地で慎ましく暮しています。定期的に軍人や官僚を輩出していますが、あまり目立った出世をして中央でブイブイ(古い?)言わせる一族ではありません。理由は融通が利かず、頭の堅い言動が原因です。ロシェットもまたそういった一面が理由で、優秀であるにも関わらず出世から取り零された人でした。

 ですが、フランツは彼の事務処理能力と状況判断能力を高く買っています。自分の出自に忖度しない彼を必要としたのはフランツの方でした。大隊長時代に彼を副官に据えてから、彼はずっとフランツの副官です。

 お堅い性格のロシェットは神経質そうな顔付きで、落ち着き払っているので実年齢より上に見られがちですが、第三話の時点で29歳です。結婚もしていて子供もおり、妻との関係も良好です。そんな馬鹿な、と思われるかもしれませんが、妻からの熱烈アプローチを受けての結婚でした。それも10代の内に、です。

 ちなみに妻はロシェット家と同様に地方で倹しく暮らす貴族で、隣の領地の幼馴染みです。

 誰よりもロシェットを理解している女性です。

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