第32話 誘拐された令嬢達2
「マ・・・マルシア・・・」
魔道具の光によって照らされたマルシアは確かに無事でした。
ですがその姿は少し以前とは違っていて・・・
「貴女・・・髪が・・・」
マルシアはいつも髪型をポニーテールにしているのですが、今は髪がざっくりと切られ髪が短くなっていました。
「んん・・・」
小さく声を出すマルシアにハッとして、他にも何かされていないかと拘束を解きつつ確認していきますが、他に何かされた様子はなく、私は安堵しながらマルシアを抱きしめました。
「良かったですわマルシア・・・貴女が何かされたかと思ってとても心配しましたのよ・・・」
「マシェリーさまぁ・・・うぅ・・・」
それまでは静かな様子を見せていたマルシアでしたが、現実に感情が追いついてきたのか泣き出してしまったので、私は胸元にマルシアの頭を抱き宥めます。
「えぇ・・・怖かったですわねマルシア・・・」
ヨシヨシと胸元に抱いた頭を撫でていると・・・急に周りが明るくなったのを感じました。
(ッハ!?迂闊でしたわっ!)
またレイラ達が来ましたの!?と、マルシアの姿を隠すために扉の方へと背を向けつつ扉の方を見ると、扉の方向は暗いままでした。
あら・・・?と拍子抜けしてしまい呆けかけてしまいましたが、頭を振って思考を現実に戻します。
(なら一体この明るさはなんですの?まるでサマンサとくっ付いた時に見える魔力の様なあかる・・・さ・・・)
それに気付きよくよく周りとマルシアを見てみると、その明かりは赤い炎の様でマルシアの周囲に火の玉の様に漂っていました。
又もや呆けかけてしまいましたが、胸元のマルシアが急に動かされたことで不思議に思ったのか声をかけて来た事により私は次の行動に移ることが出来ました。
「うぅぅ・・・どし・・・ぐすっ・・ましぇ・・」
「大丈夫ですわ、なんでもありませんわよ」
ヨシヨシと再び頭を撫でてマルシアをなんとか落ち着かせると、マルシアとシーラにちょっと待つように伝えて扉の方へと近づき様子を伺います。
扉へと耳を着けて音を聞いたり、僅かな隙間から向こう側を伺いますが、扉の向こうにある部屋には誰も居ない様でした。
これならばしばらくは大丈夫かなと、私はマルシアたちの元へと戻り、未だ拘束されている2人を解放する事に決め、先ずはシーラへと近づき拘束を解いて行きます。
「今縄を解きますわシーラ」
「んん・・・」
先に一声かけてからシーラの拘束を解くと、シーラもマルシアと同じく感情が爆発したみたいで泣き出してしまいました。
なので先程と同じく、私がシーラを抱きしめて宥め始めると・・・
「あ・・・」
「ぐすっ・・・うぅ・・・?」
「何でも有りませんわ・・・怖かったですわね、ヨシヨシ・・・」
マルシアの時と同じく、シーラの周囲にも光が見えました。
(青色で優しい光・・・。間違いない、魔力の光ですわね)
ここまでくると何となく魔力が見える条件が解りかけましたが、今は細かく考える事は後回しにして、現状をどうするかを考えなければなりません。
シーラを落ち着かせると、最後の1人を拘束から解放する為に立ち上がりそちらへと歩いて行きます。
「ごめんなさいサマンサ。待たせましたわね」
「んん・・・いえ、大丈夫ですお姉様。それよりも・・・」
サマンサの拘束を解くと、彼女は私に抱き着いてきました。
サマンサも怖かったのでしょう、マルシアとシーラと同じように抱きしめてあげようと思っていると・・・
「大丈夫ですかお姉様・・・頬と髪が・・・」
サマンサはそんな風に私を気遣い、逆に心配していた様でした。
「ええ、痛みますが歯が折れたりはしていませんわ。・・・って髪ですの?」
髪を残バラに切られたのはマルシアでは?と思っていると、「気づいていなかったのですか・・・?」と手を取られ、頭の方に持っていかれ・・・そこで初めて気づきました。
普段私は「その髪型どう作ってるんですか?」と聞きたくなるようなツインドリルヘアーをしているのですが、今はそれがバッサリと根元から切られてマルシアの様にショートヘア―風になっていました。
「あら・・・随分とスッキリしてしまいましたわ?似合っていますかしら?」
「ず・・・随分と軽いんですねお姉様?ショックじゃないんですか?」
実の所・・・それほどショックではありません。
元のツインドリルヘアーですが、それほど私的にこだわりが無く、ノワールが毎朝セットしてくれるのでそうしているだけだったのです。
「逆に頭が軽くなって気持ちいいくらいですわ・・・っと、それはともかくサマンサ、2人の所へ行きますわよ」
「お姉様がそれでいいなら・・・はい・・・」
微妙に納得していない風のサマンサでしたが、今はそれよりもこの状況について話し合わなければなりません。
私はサマンサを連れて2人の元へと戻り、部屋の隅の方へと移動をして光の魔道具を囲みます。
「さて・・・まずは謝らなければなりませんわね。色々迂闊でしたわ、ごめんなさい」
話し合いを始めると、先ずは3人へと頭を下げて謝罪をします。
これはまんまと罠に掛かったり、その後迂闊に犯人へ飛びかかったり行動したりと色々な意味があり、それを3人へと伝えます。
しかしその言葉を聞いた後、マルシアが再び泣き出してしまいました。
「マルシア・・・ごめんなさいね・・・私のせいで・・・」
謝ったところで許してはもらえないかもしれませんが、私は謝る事しかできませんでした。
謝罪しながら再び頭を下げたのですが、何故かマルシアは余計に泣き始めてしまいました。
「3人とも、本当に申し訳ありませんわ。何とか・・・何とかして見せますわ!だから・・・」
「ち・・・ちが・・・。これ・・・わた・・・うわぁぁん・・・」
未だ何の考えもありませんがここで弱気になってはもうダメだと思って、何とかして見せると言ったのですが、マルシアはボロボロと涙を流し続けていました。
その様子に、やはり原因の私が何を言っても駄目なのかと思っていたのですが、シーラがマルシアの背中を擦りながら「あの・・・実は・・・」とマルシアが大泣きしている原因を話してくれました。
「マシェリー様・・・元々この誘拐はトリム家を狙ったモノのようなんです・・・」
「え・・・?」
私が殴られ気絶した後にレイラから聞いた話だそうですが、元々この誘拐はトリム家の鉱石関係を狙った犯行の様で、私とサマンサ、シーラはどうやらおまけの様でした。
といっても、私達はおまけにしては大きすぎると思うんですが・・・
「一緒に出掛ける予定を知ったので・・・だそうです・・・」
「えぇ・・・」
そんな、本当についでに攫ってみました、的な感じの犯行に、ついつい私は呆れてしまいますが、いや待てよと考え直します。
もしかしたらレイラ達が所属する賊はよっぽど強力な力を持つ集団なのかもしれません。
「申し訳ありませんわ・・・先程どうにかして見せると言いましたが・・・そんな大きな組織だとは思ってみませんでしたわ・・・」
私は漠然と『賊くらいチートスペックの私ならどうにでもなる』と考えていましたが、国内有数の力を持つ私達の家を敵に回す様な組織では、流石にどうにもならないと諦めが入ってしまいました。
ここで私が諦めてしまえば終わりだと言うのに、どうにもならない絶望感が心の中を支配しかけ、私がつい泣きそうになってしまった時、シーラ達の言葉を聞いて絶望感は薄れていきました。
「いえ・・・?大きな組織ではないはずです・・・」
「うちの国の近くには魔王様が多いですからね、大きな組織は潰されて無くなる筈ですからね」
「ぐすっ・・・確か『カラーズ』とか言う小さな賊が家の領地の近くを嗅ぎまわってるって・・・うぅ・・・そんな事を聞きました。多分犯人はそいつらです・・・うぅ・・・こんな事なら早く潰す様にお願いしておくべきでした・・・」
「カラーズ・・・?」
確かにそんな名前の大きな組織は聞いたことが・・・ないと思ったのですが、私の記憶の中に何故かその名前は強く残っていました。
何故?何処で聞いた?と唸りながら記憶を探ると・・・思い出しました。
「あ・・・サブイベントの盗賊団ですわ」
それはロマンスにあるサブイベント、それに登場する盗賊団の名前でした。
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マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「ドリルヘアーはお嬢様の嗜み」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してくだされば幸いですわ。
☆や♡がもらえると アナタの髪型もドリルヘアーになりますわ。
マシェリーの一口メモ
【そう、私の髪型はドリルヘアーでしたのよ?因みにこれは毎朝ノワールが5分ほどで仕上げてくれるのですが・・・どうやったら5分でこの髪型に?魔法より魔法ですわ】
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