第31話 誘拐された令嬢達
(そして起きたらこの状況と・・・ん~・・・)
私は朝からここまでの状況を思い出し、隣から漏れている声も併せて推察します。
すると見えて来たのは・・・
(新しい使用人達は誘拐犯・・・いえ、賊とでもいうのかしら?それが私の家を含めて他3家?となると計画的犯行ですわね・・・)
と言うか前日に言ってたフラグを見事回収では?などと考えていると扉が開き、光が部屋を照らします。
暗い部屋から明るい方を見ているのでシルエットしか見えませんが、どうやら女性が2人部屋へと入って来たようです。
「あ、起きてるわ」
「ほんとね・・・まだ寝てたらスムーズに進んだのに」
声と、徐々に近づいてくることにより見えた姿に相手の正体が解りました。彼女達は・・・
「んんんんん・・・(貴女達・・・」
「あ、お嬢様やっほー」
「さっきぶりね」
レイラとイニエラでした。
彼女達は持っていた魔道具を起動させ、部屋を明るくすると私達へ近寄ってきました。
「んんんんんっ!んんんんんんんん!(待ちなさい!何をする気ですの!」
彼女達の表情から良からぬことを考えていたことが解った為、私は手足を縛られた状態でしたが何とか動き、怯える3人の令嬢達の前へと出ました。
「かっこいいじゃんお嬢様。てっきり後ろへ逃げるかと思ったのに」
レイラはヒュゥ~と口笛を吹きながら手をパチパチと叩いた後、ニヤニヤとした顔をしながら私達の方へと近づき、私へと手を伸ばせば届く距離まで近づいた時に呟きました。
「でも用があるのはお嬢様じゃなくて後ろの子なのよねー。えーっと赤髪の子だからー・・・あの子ね」
「レッド、どうせなら・・・」
「んんんん!」
私は衝動的にレイラへと体当たりを仕掛けていました。
(狙いはマルシアですって!?許しませんわよ!)
マルシアは一見勝気そうな少女に見えますが、実は意外と怖がりなところがある子です。
現に先程も扉が開いて2人が現れた時に、少し震えているのが見えました。
そんなマルシアが狙いだと聞いて私はついカッとなり、咄嗟に飛びついてしまったのです。
この時私は何も考えていませんでした。その結果・・・
「っだ!?何するのよ!」
「ん゛ん゛っ!」
レイラに殴られて吹き飛び壁に激突、そして当たり所が悪かったのでしょう・・・目の前が暗くなってきました。
『レッド、あんまり傷つけないで。後で・・・・・・』
『あー、ごめんごめんイエロー。んじゃやることやり・・・・・・・』
レイラとイニエラが何かを喋っていた様ですが、そこで私の意識は途切れてしまいました。
・
・
・
(あら・・・誰かが・・・泣いているの・・・かしら・・・?)
私はぼんやりとした意識の中、近くから聞こえる押し殺したような泣き声に気付くと段々と意識がハッキリしだし・・・意識を取り戻しました。
そして体に妙な重みを感じたのでそちらへと視線を向けると、未だ少しチカチカとする私の目には黄色い光に照らされたサマンサの顔が見えました。
「んんんん・・・(サマンサ・・・」
「ん゛っ!んんんんんん!」
私が声を出すとそれに気付いたのか、サマンサは私にぐりぐりと顔を押し付けてきます。
「んん゛っ!んんんんんんんんん!?(いたっ!ちょっと貴女角でも生えてますの!?」
サマンサは私の胸元あたりへ顔を押し付けて来たのですが、何故かゴリゴリとした感触がしてちょっとした痛みを私へと与えてきました。
それをサマンサが長く続けるものですから私はたまらず・・・
「んん゛っ!んんんんんん!(ちょっと!おやめなさい!」
サマンサの頭へ頭突きをかましました。
「んん゛っ!?」
頭突きをかまされたサマンサはよっぽど痛かったのでしょう、床をゴロゴロと転げまわり始めました。
すると明るかった黄色い光が消え始め、再び室内は暗闇に包まれてしまいました。
(ふぅ・・・ってあら・・・?いきなり暗く・・・って痛ったたっ・・・あちこちから痛みがっ!!)
気を抜いたからか・・・思い出したかのように私の体のあちこちから徐々に痛みが発生しだし、私も暗闇の中でもだえ始めてしまいました。
(あだだだっ・・・ってそうで・・すわっ!私はレイラに殴られてぇ・・・つぅ・・・)
痛みでもだえている内に段々と直前の記憶が蘇り、レイラに頬を殴られて吹き飛ばされた事を思い出しました。
そしてそれを思い出したからか、余計に頬がずきずきと痛み出します。
(これっ・・・絶対パンパンに腫れてますわっ!そう言えばっ・・・口の中に血の味も・・・ってそういえば・・・マルシアっ!?)
レイラめぇ~!と私の中で怒りゲージが上がっていたのですが、何故殴られたのかをハッと思い出すと、マルシアの事を探します。
レイラ達はマルシアに用があったみたいなので、『もしかしたら何処かへ連れて行かれて酷い目にあわされているのでは!?』と私の心の中に大きな焦りが生まれました。
「ん・・・んんんん!?んんんん!?(マ・・・マルシアっ!?どこですの!?」
体の痛みを無視しながら探そうとするのですが、部屋の中は暗く、全く様子がつかめません。
(ぐっ・・・こう暗くては・・・っは!そうですわっ!)
私はつい先ほどの事を思い出し、近くで小さく唸っている声を頼りにサマンサへと近づき、体をくっつけます。
すると黄色い光が近くに現われ、周りをほんの少しだけ照らし出します。
(見えましたわっ!・・・って全然光が広がっていきませんわ!)
私の狙い通り、サマンサの体にくっ付くことによって何故か発生した魔力の光で周りの様子を確認する事ができたのですが、何故かその光は周りへと広がらず、一定の距離以上から先は暗闇から変わりを見せませんでした。
(もうっ!何でですのっ!?・・・って痛い!ゴリゴリとするのをおやめなさい!他の場所も痛むのに痛む個所を追加しないでくださいまし!)
「んんん゛!ん゛ん゛っ!」
「んんんんん!んーんん!」
狙い通りにはなったものの、予想外の結果になった事に対して心の中で文句を言っていると、サマンサが再び私へと頭を擦りつけてきました。
何故かやっぱりゴリゴリとした感触があり、『サマンサ実はオーガ説』を考えだした頃、漸く私は気づきました。
(あら・・・?ゴリゴリしているのってサマンサ側じゃなくて私側ですの・・・?あ・・・そういえば・・・)
そういえば出がけの際にノワールが、「これだけでもお持ちください」と渡してきた物を身に着けていた事を思い出しました。
(あれは確かペンダントの様な物で・・・首にかけておいたのでしたわね。ノワールが持たせたからには何かの役に立つ物なのかしら・・・?)
若干焦り気味の頭では大して考えが出てきませんでしたが、もしかして発信機とかかしら?と思いつつ、特訓の甲斐あって自力で生成出来る様になった魔力を流してみます。
(恐らく魔道具でしょう!?何か役に立つことが起こってくださいまし!・・・んん?何ですのこれ???)
ノワール頼みますわよ!と祈りながら魔力を流していると、急に頭の中にイメージが浮かび上がり混乱してしまいましたが、直ぐにそれの正体に気付きます。
(これは・・・アイテムボックスの魔道具ですの!?)
ロマンスだとチュートリアルでゲットできる必須アイテムの魔道具で、他のゲームだとデフォルトのシステムでついている物が多い、所謂『ストレージ』です。
(ナイスですわノワール!流石ですわよっ!)
万が一を見越して渡してくれたのだと思いますが・・・こういう状況でも見越していたのでしょうか?
エスパーの様なスーパー使用人兼護衛に驚嘆しつつも、私はストレージを確認して中に入っていた明かりの魔道具とナイフを選択します。
すると直ぐ近くに黒い穴みたいなものが開き、そこから選択した2つの物品が出て来たので、私は先ず明かりの魔道具のスイッチを入れます。
「んんっ!?」
すぐ傍で明かりが着いたからでしょう、サマンサが驚いたような声を出していましたが私はそれどころではありません。
何とかナイフを使い手足のロープを切って立ち上がり、口の布を取り外すと、明かりの魔道具で辺りを照らします。
(マルシア・・・無事ですのっ!?・・・居たっ!)
ここはソコソコの広さがある部屋みたいで、私達から少し離れた位置に2つの人影があるのを見つけました。
私はサマンサに「すぐ戻ってきますわ、少しだけお待ちになって」と囁くと離れた位置にある人影へと近づきながら小さな声で呼びかけます。
「マルシア、シーラ!無事ですの!?」
人影からは小さく声が返ってきたので安心しましたが・・・
明かりに照らされて見えた姿は・・・
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マシェリーより:お読みいただきありがとうございますわ。
「面白い」「続きが読みたい」「サマンサ実はバイコーン説」等思ったら、☆で高評価や♡で応援してくだされば幸いですわ。
☆や♡がもらえると ユニコーンが来ますわ。
マシェリーの一口メモ
【この世界の人間は地球と比べて身体能力が色々な要因でバカ高くなっておりますわ。なので女性が軽々と少女を吹き飛ばしたり、吹き飛ばされた少女も割と大丈夫だったりしますのよ。まぁ大丈夫と言っても結構怪我をしましたが】
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