第49話・泰斗大号泣
いきなり探索者達が来たと同時に、俺に頭を垂れて言った。
「貴方様が泰斗様でしょうか、貴方様の為この命捧げましょう」
と
・・・・・・
しばしの沈黙の後、俺はその探索者達をよく見てその正体が分かった。
俺が蘇らせた人だ。
特に身体が薄い紫色で右腕が剣の人なんてさっき蘇らせた人以外いるわけないしな。
それならば死霊魔法で蘇らした影響で眷族化したためこの態度になっているということだろう。
・・・
俺はその事実に何故か無性に腹が立った。俺の家族は死体すら残っていないから蘇生が出来ず完全に死んだ。
それなのにこいつ等は生きている。まあ、俺が蘇らせたけど、だけど、だけど、腹が立つ。完全に八つ当たりだけど。
自分でも何したって家族が生き返らないことは分かっている。だけど、何かに八つ当たりをしないと気が済まない。
「お前らには何の怨みはないが、俺の八つ当たりに付き合ってもらう」
「八つ当たりとは、一体どうしたのですか、何か気に障るようなことをしましたでしょうか」
「いや、ただ、俺の家族はこの魔物暴走に巻き込まれて死んでるのにお前らが生きていることに腹が立っただけだ」
自分でも何の筋もない酷い理由だと思う。でも、今の俺にはぶつけるものがないと狂ってしまいそうだ。
「あのう、家族が死んだとおっしゃっていますが、今回の魔物暴走で死んだのはダンジョンに潜っていた探索者数名と魔物暴走を食い止めようとした探索者数十名のみですよ、一般の人は皆避難していますが?」
・・・・・・
「マジで」
「はい、マジでございます」
「避難場所は何処だ、早く早く言え」
俺は探索者の胸倉をつかみそう叫ぶ。
「はい、避難場所はダンジョン連合の地下シェルターです」
俺はその言葉を聞くと同時に死にかけの魔族にとどめを刺しドロップ品を適当に闇空間に放り込むと本気で飛行してダンジョンから飛び出るとダンジョン連合まで走った。
ドン
ダンジョン連合に着くと扉を乱暴に開けて鬼気迫る顔で言う。
「地下シェルターは何処にある」
「は、はい、地下シェルターはこちらになります」
俺はダンジョン連合の受付の人に案内された場所に向かうと。
そこには学校の体育館の10倍以上はあるであろう地下に災害の避難場所のような感じで人が避難していた。
そこを探すとすぐに見つけた。お母さんと妹だ。
その瞬間涙が溢れる。
「良かった、生きてた、生きていたよ」
泣きながら、俺はお母さんに抱きつく。
「泰斗どうしたんだい、そんなに泣いて、それに確か広島にいるんじゃなかったの」
お母さんの声を聴いて、更に涙が溢れる。
「グス、グス、グス、生きていたよ、生きていたよ」
泣いている俺の頭をお母さんは優しくなでてくれながら優しい声で言った。
「どうしたのそんなに泣いてまあ、一旦落ち着こう、ほら、深呼吸して深呼吸」
ハ~フ~、ハ~フ~。ハ~フ~、ハ~フ~。
深呼吸すると大分落ち着いた。
「落ち着いた?じゃあ、お母さんに何が会ったのか説明して」
自分が人を蘇らせたとかは除きお母さんに説明する。
「そうだったのね、ごめんね、心配かけて、でもお母さんはこの通り怪我一つしていないから安心して、それよりも泰斗こそ怪我をしていない?大丈夫?」
「うん、大丈夫、大丈夫。元気いっぱい怪我一つしていないよ」
「そう、それならいいけど、あんまり危険な事をしちゃ駄目よ」
「うん、分かっているよ、あ、そういえばお父さんは何処?」
「お父さんは今、地下シェルター内での区間整理のボランティアをしてるよ。お父さんも無事だから安心してね」
「家族皆無事か、本当に良かった、本当に良かった」
また、涙が溢れ出してくる。
「もう、そんなに泣かないで」
「ごめん、お母さん、でも、どうしようもなく涙が溢れて来るんだよ」
そうやって、俺が泣いていると今まで俺に話しかけて来ることすらほとんどなかった妹が話しかけてきた。
「アニイ、私さ強くなりたいんだけどどうすればいいと思う」
・・・
「どうした急に強くなりたいなんて」
妹からの唐突な強くなりたい宣言に驚きつつもその理由を聞いてみる。
「いや、あの私さ今回の魔物暴走の時に何もできなかったのが悔しくて悲しくて、弱い自分が嫌になったの」
弱い自分が嫌かその気持ち分からなくはないが・・・反対だな。
「そっか、なるほどな、でも別に強くなくたってもいいじゃないか、ダンジョン連合の人だっているし、兄としては妹に危険な目にあってほしくはないんだ、強さを持つってことにはそれ相応の危険が付きまとうから」
「分かっているよ。そんなことは、それでもそれでも強くなりたいんだ」
今まで一緒に暮らしてきて初めて見た妹の覚悟を決めた目に俺は負けた。
ここまで妹が覚悟を決めているんだ、兄である俺がそれをないがしろには出来ないな。
「よし、そこまで覚悟を決めたのならば、俺の全身全霊を持って強くしてやろう」
俺はそう言うと泣いていた自分の顔を拭うと闇空間からいくつかのスキルの書を取り出していく。
まずはさっき倒した魔人のスキルの書2つを鑑定する。
一つは光り輝くスキルの書でスキルは【極・風魔法】2つ目は真っ黒で禍々しいスキルの書でスキルは【心無者】だった。
流石に【心無者】は渡せないけど。【極・風魔法】はピッタリだな。どうせ俺は闇系統の魔法を使っているし他の属性に手を出すつもりはないしな。
後は身体強化や精神強化に骨強化や打撃耐性や魔法耐性や吸収に放出に蓄積やらのスキルも鑑定して出していく。
1分後
俺の妹の前に様々なスキルの書がある。
「これを使えばかなり強くなれるよ」
「え、でもアニイこれかなり貴重な物なんじゃ」
「何を言って言るんだ、そんないくらでも手に入るスキルの書と大切な一人の妹を天秤にかけた時その程度のスキルの書ゴミみたいなもんだよ」
「ありがとうアニイ」
妹が俺の渡したスキルの書を使っていく。妹がスキルの書を使ったのを見届ける。
「よし、じゃあ、俺はちょっと地上に出てやらなければならないことがあるから行ってくるよ」
家族の無事も確認できたし、今回の魔物暴走を起こした魔人も殺したし、魔物も俺がほとんど殺したし、後は魔物によって破壊された街の復旧だな。
俺には特殊スキル【千鬼死霊大行進】もあるしな。よし、サクッと街を復旧しますか。
てくてくてくてく
俺は地下シェルターから出て地上に戻るとそこには荒れ果てた街があった。
今まで余裕がなくて街を見れてなかったが、本当に酷い。家はボロボロ、マンションは崩壊して辺りに倒れている、地面は穴だらけで生えていた木はほぼ全て倒れたり木端微塵になっている。因みに周りには人っ子一人いない、そりゃそうだな。
「千鬼死霊大行進発動」
ドンドンドンドンドンドン
その音とともに千の鬼と万の死霊が現れる。
「命令だ、魔物によって荒らされたこの街を元の状態にいやお前らの持てる技術を全て使ってこの街により良い家をマンションを木を塀を作れ」
俺はせっかくなので元の状態に戻すよりもより良くした方が良いと思い。
そう命令を出した。だけど俺は気付いていなかった。この千鬼死霊大行進の力をさらに支配者の効果で眷族の力が倍になっているという事実を。それによって起こる事を。
――――――――――
次回
【やらかしちゃたよ、いやゴメンんて・蘇生辺】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます