第31話 王都邸をなんとかする
公爵邸に戻って、いつもの冒険者装備に着替えてローブを纏う。
魔導師の外見に剣装備というあれだ。
クレアも女性剣士スタイルになる。
タマは公爵邸でお留守番だ。
タマは公爵邸のメイドさんにより、可愛い衣装に着替えさせられていた。
さすがうちの子、どんな衣装も着こなせて、まるで貴族令嬢のようだ。
これであの魔盾亀のテイマーなのだ。
あの亀を暴れさせたら公爵邸が更地になるぞ。
「行くぞ」
「でも、館の使用人の数なんて知らないわよ?」
「ん?」
頼みの綱、クレアがおかしなことを言い出した。
「そこはお母さまの管轄だし、たぶんお母さまの配下がやってるから。
それに、剣一筋の私が知るわけないでしょ?」
そうだった。こいつ剣と魔力量以外は残念さんだった。
「となると?」
「執事に任せれば良いわ」
これが貴族か……。
誰かが横領していても気付かないんじゃないか?
貴族には、多少横領されても問題ないだけの余裕があるのかもしれないな。
待て、俺にはそんな余裕なんてないぞ。
そもそも領地も無いのに、どうやって館の維持費を出すんだよ。
奴隷だって、飲み食いするわけだし、人数が多ければ多いほどがっつり経費がかかるだろ。
「うちの財政的に、公爵家の執事に任せたら危険だ!!」
公爵家の感覚で使用人を配備したら財政が破綻する。
こうして、俺が全てを差配することになった。
◇
奴隷商に到着した。
貧民街の端っこ、歓楽街の隣にその奴隷商はあった。
地方も王都も同じような立地だ。
「まず、館を掃除するメイド、そしてそのメイドたちの食事を作る料理人だな。
馬車関係は公爵家から借りる。
庭の管理は庭師を外注する」
極力小さく収める。
それよりも重要なのは安定継続した収入だ。
「失礼ながら、申し上げますが、領地が無いならば、年金が出ているのでは?」
執事が俺の知らない情報を告げる。
「なんだそれ?」
俺は何もかも知らなかった。
「そもそも領地が無いというのは本当ですか?」
「たしかに。俺が知らないだけであるのかもしれない」
俺は何も知らなかった。
とりあえず、メイド5人と料理人1人の契約奴隷を雇って王都邸に向かった。
ちなみに、契約奴隷とは一定期間奴隷として働くという契約を結んだ奴隷だ。
期間限定の身売りという感じだろうか。
さすがに変なことが出来ないように法で保護されている。
シュタイナー伯爵王都邸に到着した。
一度も来たことがないので、俺も初見だった。
「結構、良い館じゃないの」
公爵令嬢のクレアから見ても、悪くない建物だった。
建物自体にガタが来ているようには見えない。
人の手が入らずに、庭が荒れ、掃除が行き届いていないだけだ。
その様子にメイドたちがちょっと引くが、年長のメイドが適格に指示を出して仕事を始めた。
「掃除道具なんかもあるんだな」
普通、何年も放置された掃除道具なんて使えるものではない。
だが、そこは貴族の邸宅。
物置には中の道具を維持するための魔法がかかっていた。
「いっそ建物も魔法で維持してくれれば良かったのに」
「魔力切れのようです」
「え?」
「維持魔法の魔力を供給していた魔石の魔力切れです」
メイドさんの指摘で、どうやら魔石を交換していればこんなことになっていなかったと発覚した。
一度も来てないし、誰も管理していなかったからな。
「ご主人様、お手紙がこんなに……」
それは正門横の衛兵室の中から発見された。
誰も居ないので、そこに投げ入れられたようだ。
「王城からの召喚状……。
こんなにあったのか……」
これ不敬罪でしょっ引かれてもおかしくない量だわ。
「こっちは領地からの収支報告書?」
「領地!」
どうやら俺は領地持ちだったようだ。
その領地は代官が治めていたようで、その報告書……いや、さっさと解任してくれという督促状が来ていた。
どうやら、王家に任命されたまま、俺の領地になった後もずっと代官をやってくれていたようだ。
「怒ってるね」
「年を追うごとに、中身がきつくなってるね」
どうやら代官はもう限界のようだ。
むしろ、今発見されて良かったのか?
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