第527話 亡者と暴虐、“貪欲”と“傲慢”。薄汚れた手へと……
「おおおおおおおおおおッッ!!」
「ああああああああああッッ!!」
空へと迫れば迫る程、“無限光”が激しくなっていく。神へと迫れば迫る程、焼け溶ける様な火炎を全身に感じる――
「それでもおぉおおおおッ!!」
フランベルジュの噴き上げる雷火を地に向けたダルフは、さらなる加速を経て、並走していた鴉紋を抜き去った――
「ッおい、こんな時まで食って掛かってくんじゃねぇッ!」
額にピキリと青筋を立てた鴉紋は、背の暗黒を爆発させながら、先をゆくダルフを追い立てて風を切る衝撃波の中を爆進し始めた。
だがその時、勢い付いて迫る虫ケラを眼下に、神の指先が差し向けられていった――
『小さき羽虫めが――』
「ん――ッア!!?」
するとそこで、ダルフの腹を一本の光線が射貫く――
想像を絶する威力の白銀の線は、か細い刃と成りながら、地平の山まで届いていた。
「――ぐ……ぅ――――」
これまで闇雲に宙を占拠していくだけの神秘の一筋が、明らかな意志を持って放たれて来たのである――
「くそ……っ!」
『この光は異分子からの干渉を受けない。遮るモノは例外無く塗り潰し、ゆくべき道を貫き、地を照らすのみ』
腹を貫通した痛みに、しばし中空に留まるダルフ。光の速度で迫り来る白銀は避け難く、いともたやすく肉を突き抜けてしまっていた。
この凄まじい威力を見るに、ヤハウェによって
……そんな風に、至極真っ当な思考で足を止めたダルフの元へ、眼下より黒き閃光が追い上げて来るのが見えて来た――
『もう一匹――』
「何時までも俺を虫扱いしてんじゃねェッ! 殺すぞぉッ!!」
「待て鴉紋――! この光は、強引にどうにかなる様な問題じゃない! 受ければ貫かれるだけだ、避けろ!!」
「――ッうるせぇぇあッッ!!」
『その
「やめろ鴉紋――――!!」
拳振り上げ雄叫びを上げた悪魔を迎撃せんと、空より煌めきの一瞬が過ぎ去る――
「――――――ッッ!!!」
真正面、無謀にも振り抜かれた黒腕が“無限光”を捉えた時、小爆発を起こす発光がダルフの視界を奪っていた……
そして次の瞬間、彼等が目にしたのは――
「グオオオオオオアガァァアアァアア゛ッッ!! ソコで待ってろヤハウェェエ――ッ!!」
『ハ――――?!!』
「な――ッ!!!」
神の定めた神秘をへし折り、
「今更俺の拳でブッ飛ばせねぇもんなんざ、ッある訳ねぇダろうがッ!」
『私の定めた現象を……奇跡の結晶体である“
動揺を刻み付けた声音に、世界が
『ッ――
――
怒り狂い、漆黒の煌めきを打ち上げながら、獣は叫ぶ――
「あるんだったら、テメェが見せてみろゴラァァアアッ!!!」
『――――、――く!!』
“極魔”によって切り拓かれた閃光の一筋。神秘も奇跡も知った事かと。雄々しく、そしてどこか
先程までの余裕は何処へやら、慌てふためき始めた“神”を横目に、ダルフは思わず吹き出しながら、猛る男へと微笑み掛けていた。
「……っハ! なんだよそれッ!」
――その時、ダルフの中より、迷いが切り払われた。
「無茶苦茶だ、お前は何時だって無茶苦茶で、向こう見ずだ……」
眼前に構えたフランベルジュより、太陽の如き瞬きを解き放ちながら、雷火の螺旋が、“無限光”を
『こちらの羽虫もっ!? 何が起こって――!』
「……認めるよ。俺はずっと、
鴉紋を見詰めるダルフの視線――そこには何時だって、憎悪に紛れて
「追い掛けていたんだ……」
力に手を伸ばす。伸ばし続けた。人ならざる常人の息を超え、憎き怨敵の背中を追っていた。
「憧れていたんだ……」
飽くなき欲望は底を知らず、“天魔”の力を授かり得ても尚、留まる事を知らなかった――
「お前の……
渇望する。亡者の様に
そうし続けてきた。その
――欲しい。お前の様な力が。
破壊する為じゃなく、人々を守る為の力が――!
やがてお前さえ喰い潰し、悪意を叩き伏せられるだけの力が――!!
――――
飽くなき力の渇望が、次なる力を得る可能性を与える――!
「お前と二人でならきっと、出来ない事なんて無い」
深みへ達した
「オオオオオオオオオオオアッグァァアァアァアァア゛アアアァアア――ッッ!!!」
「ぅおおおおおおおおっっ!! ウォオアアアアアアアアアアァアア――ッッ!!!」
『なん――――……だ』
覚醒を果たす――
揺るぎ無き眼光を
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