第35話 語り部不在の部屋にて② ~本〜
やぁ。
残念だけど、レーヌ嬢はいないよ。
暫くここへは帰ってこられないと思う。
何故って?
それはね、僕がヴォルムに足止めさせてるから。どうやらヴォルムとレーヌ嬢は旧知の仲のようだし、丁度いいかと思って。
え?何故そんなことをするのかって?
そうだな・・・・ねぇ。
あなたは、レーヌ嬢がずっとこのままでもいいと、思ってる?
・・・・ふふっ、どう答えていいかわからない、って顔をしているね。
じゃあ、そんなあなたに、この本を。
これはね、ギャグ王国とロマンス王国に生まれた人なら誰でも知っている話が書かれた本だよ。
それこそ、小さな子供でも、みんな知ってる。
難しい話ではないから、読んでみて。
そして、聞かせてほしい。
さっきの僕の質問への、あなたの答えを。
答えを聞かせてもらいに、また会いに来るよ、あなたに。
ああ、今日のことは、あなたと僕だけのヒミツだから、ね?
じゃあ、またね。
※※※※※※※※※※
【星になった守護神レーヌ】
はるか昔のこと。
この世界にギャグ王国とロマンス王国が同時に誕生しました。
わたしたちの住む王国、双子の王国の誕生です。
生まれたばかりのこの双子の王国の守護神となったのは、若き女神のレーヌでした。
レーヌは守護を任された双子の王国を、それはそれは大切に見守りながら育てましたので、ギャグ王国の民もロマンス王国の民も、真っ直ぐな心根の優しい民ばかり。
レーヌには、それが何よりの自慢でした。
誰よりも双子の王国を愛したレーヌは、度々人間の姿となって、両王国の王族との交流を深め、よりよい国へと発展するよう、様々な知恵を授けました。
それだけではなく、城から出て街を歩き回り、両王国の民との交流も深めていきました。
レーヌは神として両王国を見守るだけではなく、愛する民たちのことをも、もっと深く知りたいと思ったのです。
そんなレーヌは、いつしか両王国の民たちから『レーヌ嬢』と呼ばれ、親しまれる存在となっていました。
ところが。
暫くすると、穏やかで平和なギャグ王国とロマンス王国の周りの国で、小さな争いごとが起るようになりました。
人間の成長のため、文明の発展のためと、他の国の守護神たちは、ただそっと見守るだけ。
そのうちに他の国の人間たちの中には、魂を闇に染める者まで現れ始めました。
そしてあろうことか、その闇はギャグ王国とロマンス王国にまで迫り始めたのです。
守護神の役目は、守護する国を導き見守ること。
知恵を授けることはあっても、神の力、人ならざる力を与えてはいけない。
これが、守護神の掟。
けれども、レーヌは双子の王国を愛するあまり、掟を破って、両王国の民たちに人ならざる力を与えてしまったのです。
掟を破ったレーヌは、神としての力を取り上げられ、守護神の任も解かれてしまいました。
今。
わたしたちのギャグ王国とロマンス王国には、守護神はいません。
けれども、レーヌ嬢が与えてくださった力で、王を筆頭に民が自らの力で守り続けています。
ギャグ王国とロマンス王国の民を、レーヌ嬢はきっと、この先も見守り続けてくださることでしょう。
一際輝く星となって、進むべき道を照らしながら。
※※※※※※※※※※
P.S.
レーヌ嬢は星になんかなっていない。
だって、そうでしょう?
あなたも僕も、確かにレーヌ嬢と会っているのだから。
この話からは、大切なことが抜け落ちている。
僕は、そう思っている。
だから、故意に削除された事実を、今ヴォルムに探って貰っているんだ。
実はヴォルムは・・・・ああ、もう時間が無い。
ごめんね。続きはまた今度。
from ヒスイ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます