第16話 どうやらこれからこの美人姉妹にからかわれる日々が始まるようです
「えっ・・・・・・」
リビングに入ってきた人物を見た僕は目を見開いて固まった。
「一昨日ぶりね。誠司」
艶めかしい笑みを浮かべて僕のことを見ているのは、一昨日合コンで会ったあの女性だった。服装は合コンの時を同じ。煌びやかな真っ赤なドレスを着ていた。
確か、名前は響子さんだったよな。
どうして彼女がここに……。
「奈美。驚いてる誠司に説明してあげて」
「この人はね。私の姉さんだよ」
「えっ……」
たしかにどことなく似ているなとは思ったけど、奈美さんが言っていたお姉さんがこの人だったとは……。
「そういうことだからよろしくね。誠司♡」
響子さんが俺にウインクをした。
「それで、姉さんどうなった?」
「もちろん半殺しにしておいたわ」
「半殺しか~ちょっと足りない気がするけど……」
なんか聞いてはいけない会話を聞いている気がする。
「そんなことより、いい物をゲットしたんだけど見たい?」
「いい物?」
「誠司関連の物よ♡」
「見たい!」
奈美さんは即答で頷く。
響子さんは手に持っていたハンドバックの中からスマホを取り出した。
「この写真なんだけど……」
ん? んん?
なんだか嫌な予感出した。
「え、何この写真! 可愛い♡」
「ね、可愛いわよね♡」
美人姉妹は僕関連の写真を見て「可愛い」と言い合っていた。
「ちょ、ちょっと待ってください! な、何の写真を見てるんですか!?」
僕は美人姉妹の間に割って入って、奈美さんが持っていたスマホを奪い取った。
その画面に表示されていたのは僕の黒歴史の写真だった。
「な、なんでこの写真を……」
僕は響子さんのことを見た。
「ん~あのクズ男名前なんて言たっけ? どうでもいいから忘れちゃったけど、そいつのスマホの写真フォルダに入ってたから」
山崎のことだ。
この写真を持っているのは世界でただ一人。山崎だけだ。
響子さんが山崎とどんな関係なのか分からないが、その口ぶりから良好な関係ではないのは明らか……って、そんなことはどうでもいい。問題のは、僕の黒歴史を奈美さんに見られてしまったということだ。
「あ、あの奈美さん。それは……」
「姉さん。その写真後で私に送って♪」
「分かったわ」
「絶対にダメです! その写真は今すぐ消してください!」
僕の抗議虚しく響子さんは写真を奈美さんに送ってしまっていた。
その写真に興味津々の奈美さんは質問をしてくる。
「ねぇ、誠司君。これはいつの写真なの?」
「それは……高校生の時です」
「へぇ~。もしかして文化祭?」
「……はい」
「そうなんだ~♪ 生で見たかったな~。誠司君のバニーガール姿♪」
そういた奈美さんの目は「やってほしいな」と言っているように見えた。
「そんな目で見られても絶対にやりませんからね!」
「ちぇ~」
奈美さんは不満そうに頬を膨らませた。
「あ、そうだ! いいこと思いついた!」
嫌な予感がした。
「今度、私たちもバニーガールの恰好するから誠司君も一緒に……」
「絶対にやりません!」
首をぶんぶんと横に振る僕を見て奈美さんはくすくすと笑った。
もう二度とあんな恥ずかしい恰好をするのはごめんだ。
「ねぇ、そろそろ私も混ぜてほしいんだけど」
「あ、ごめん。姉さん」
「いいわよ。それにしてもこうして生で見るとひどい傷ね」
響子さんは僕のそばにやってきて、奈美さんが手当した箇所に触れた。
触れられた瞬間、脳が痺れた。
「痛々しいわね」
僕はその場から動けなくなった。
響子さんから目が離せない。
「でも、もう大丈夫よ。もう二度と誠司をこんな目に遭わせたりしないから」
「それは、どういう……」
「あの男。名前何だっけ?」
「響子さんが誰のことを指しているのか分からないですけど、山崎のことですか?」
「あ、そうそう。そんな名前だったわ。その山崎ね。もうすぐ逮捕されると思うから」
「えっ……」
まったくもって話が見えなかった。
山崎が逮捕される……?
響子さんは何を言ってるんだ?
どういうことだ?
痺れいてた脳にはてなマークが大量に浮かんだ。
「説明してほしいんですけど」
「ん~。誠司をこんな目に遭わせたから半殺しにしちゃった」
そう言った響子さんはてへっと舌を出した。
「いや、てへっじゃないですから! 何やってるんですか!? てか
説明になってないです!」
「だって、許せなかったんだもん」
「だからってそんな危ない真似……」
「心配してくれるんだ。一回しか会ったことのない私なんかのことを」
響子さんが俺のことを見つめてくる。
「そ、そりゃあ、心配しますよ。山崎のことは僕が一番よく知ってるんですから」
視線を合わせておくことに耐えきれず僕は目を逸らした。
「誠司は優しいんだね。安心して、私はこの通り何一つ危害は加えられてないから。頼れるボディーガードが守ってくれたからね」
山崎に何の危害も加えられてないこと証明するように響子さんはくるっと一回転した。
「ね。大丈夫でしょ?」
「そうみたいですね」
響子さんに何も危害が加えられてないと知ってほっとした。
僕のせいで奈美さんのお姉さんに怪我でも負わせていたら、僕は奈美さんに合わせる顔がなくなるところだった。
「それで、ちゃんと説明してほしいんですけど……」
「別に説明も何も、私が山崎とその取り巻きを半殺しにしただけよ」
「だから、そうなった理由を説明してほしいんです」
「説明ね~」
響子さんはそう呟くと、どうでもよさそうな口調で何があったのかを教えてくれた。
「ごめんなさい。僕のせいでお二人に迷惑を……」
その説明を聞いた僕は二人に向かって頭を下げた。
まさか山崎の奴が本当に二人に連絡をしていたとは思ってもいなかった。
しかも、僕が殴られた後の写真を送られてきたということだった。
だからか、奈美さんがあんなに心配していたのは。
「誠司君。言ったでしょ。心配も迷惑もかけてくれていいって。だから、頭を上げて。頭を下げるくらいなら私たちに笑顔を見せてちょうだい。私たちはその方が嬉しいから」
「奈美の言うとおりね。誠司の笑顔を見せてほしいな。好きな人の笑顔って、見るだけで幸せになるじゃない」
「あ、それ分かる! 誠司君の笑顔見るだけで幸せな気持ちになるわ♡」
「そういうことだから。頭を上げて。私たちは誠司に謝ってほしいなんてこれっぽっちも思ってないんだから」
二人はこう言ってくれてるが僕は申し訳な気持ちで一杯だった。
合わせる顔がない。
そう思って二人に頭を下げ続けていると……。
両耳に「ふぅ」と息を吹きかけられた。
「っん!?」
「いつまでも頭を下げ続けてるなら」
「私たちに何されるか分からないわよ?」
両耳に囁くように二人が言うと、耳たぶを甘噛みされた。
右が響子さんで左が奈美さん。
「な、何するんですか!?」
耳たぶを甘噛みされた僕は咄嗟に頭を上げた。
「ふふ、やっと頭を上げてくれたね♪」
「驚いてる誠司の顔。可愛いわね♡」
「可愛いよね♪」
「二人してからかわないでください!」
僕は二人から逃げるようにソファーまで後ずさりをした。
「なんで逃げるの?」
「ねぇ、奈美。このままソファーに押し倒して襲っちゃおうか♡」
「あ、いいね♪」
「ダメですから!」
今日一の声でそう言うと僕はソファーの後ろに隠れた。
どうやらこれからこの美人姉妹にからかわれる日々が始まるようです。
☆☆☆
今後は二人の誠司への攻めをお楽しみください♪
誠司も、もちろんからかわれっぱなしではありませよ(笑)
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