第25話 街へ

ダンジョン攻略を終えているにも関わらず、アル達は1ヶ月以上、隠しダンジョンでレベリングを繰り返していた。


「ヨッシャァァァッ!ドラゴンの首をとったど~ッ!そして、またまたレアアイテムゲットぉぉぉッ!レベルアップもすげぇし、ここはパラダイスだなッ!」


“プルプルプル(ご主人様はレベリング中毒ですね。)”


アルとの連携技でドラゴンのとどめを刺したヴァンは感心しながらアルを誉めた。


『アルはスゴいね♪一か月前の貪欲さが全く衰えていないよね♪むしろ、ここに来る前よりも元気になってるじゃん♪このまま何年もレベリングしても平気なんじゃない♪』


ザックは、疲れを全く見せないアルとヴァンの様子を疲れた表情で見つめていた。


「…アル様、そろそろ一旦街に戻りませんか?テスラ達の安全空間があるとはいえ、食料等も補充すべき頃だと思います。」


ザックの言葉を聞いて、アルは何かを思い出したように手を叩いた。


「おおッ!そうだなッ!テスラ達の真面な服も買わないといけないからなッ!コイツらをこのまま街に連れていったら、俺までヤバイやつだと思われちゃうからなッ!」


アルの言葉にテスラが力なく反応する。


≪…あ、主様…、私達は何百年もこの格好でして、…………。ゴニョゴニョ…。≫


ムトゥもテスラに同意する。


≪そ、そうだぜ。オレは服なんか着たことねぇし………。ゴニョゴニョ…。≫


サリバンは、自分のスーツをペタペタ触りながら慌て始める。


≪ワ、ワタクシは良いザマスわよね…?そうザマスわよね…?うん?…えっ、言葉づかい!?…えぇぇぇぇッ!理不尽ザマスッ!≫


テスラ達がザワツキ始めたため、ザックがフォローに入る。


「サリバンはともかく、テスラとムトゥは街ではその外見は目立ちすぎますよ。なにも180度格好を変える訳ではありません。ちょっと街の雰囲気に合わせるだけですよ。安心してください。」


ザックの言葉にテスラ達は少し安心した表情になる。


アルは小声でザックにお礼を言う。


「ザック…。ありがとな。しかし、”物は言いよう”という言葉を再認識したよ。ほんと、詐欺師の才能あるよ。流石、ウットポッシュ王国一の商人ッ!」


ザックは、静かにアルを顔を覗きこみ目を静かに見開いた。


「アル様、人聞きの悪いことを言わないでください。というか、こういうときだけウットポッシュ王国一なんて言わないでください。わかりましたか?」


アルは笑いながら大袈裟に逃げるフリをして走り出した。


「あははッ!わりぃ、わりぃッ!」

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