「ひと夏の冒険 ~毛嫌い編~」
※本作は若干、下ネタ、性的な表現が含まれております。
その男は、毛が嫌いだった。
男はどういうわけか、生まれつき体毛が濃かったのだ。
小学校低学年の時、早いうちから陰部の毛が生えそろい、同級生たちを驚愕させた。
更に小学校高学年にもなると、脇からも毛が生え、顎には立派な髭が。
それは思春期の少年にとって、恥ずかしく、悩みの種になった。
男は気になる部分の毛という毛を剃った。
だが、数日したら、また生えてくる。
なので、男は毛が生えるたびに毛という毛を剃った。
だが、やはり、数日したらまた生えてくる。
しかも、剃れば剃るほど、毛は太く、頑丈になり、更に毛が生える範囲も広くなった。
男は自分の体毛の濃さに悩んだ。
その体毛の濃さで、人にからかわれ、不快な思いをし、深く傷ついた。
『毛なんて、この世からなくなればいい……』
男は心の底から、そう呟いた。
高校卒業後、男は人に接しない工場で働くようになる。
男は朝も昼も夜も関係なく、とにかく働いた。
そして、その働いて得た金をすべてつぎ込み、男は髪の毛と眉毛以外の毛という毛を全身から永久に脱毛。
ついに、男は念願だった鼻から下には毛が存在しない体を手に入れた。
男は長年の悩みが消えたと同時に、自信を手にする。
工場の仕事を辞め、高級レストランのウェイターとして働くようになり、そこで男は運命の女性と出会う。
男は、その女性と結婚を前提にした付き合いをするようになった。
……そして、ある晩。
男と女性は、ラブホテルの一室に居た。
男はパンツ一枚だけの姿になり、ベッドの上に腰を置く。
一方、女性は男の目の前に立ち、服を一枚ずつ脱いだ。
下着姿になった女性は更にブラジャーを外し、男の目の前に自分の乳房を晒した。
男は興奮し、心臓の鼓動が早くなる。
そして、女性はパンティーを脱いだ。
女性は一糸まとわぬ、生まれたままの姿となった。
妖艶に微笑む女性。
……だが、男は裸になった女性を見て驚愕した。
女性の股間を見つめる男。
男はさっきまで興奮していたのに、打って変わって困惑している。
「え?え……?え……!?」
女性は間違いなく、女性だ。
それは間違えようがない。
だが、男は女性の裸を見て、血の気が引いていく。
「え、え……?ど、どうしたの、それ……?」
戸惑いながら、男は女性の股間に指をさす。
「フフッ……剃っちゃったの……。その方が興奮するかと思って……」
女性は妖艶に色っぽく、そして悪戯っぽく答えた。
「……ッ」
男は言葉を詰まらせた。
さっきまで、興奮していた体が急激に冷めていく。
男はベッドから立ち上がり、床に脱ぎ捨ててあったズボンを履き始める。
「えっ!?あ、あれ?どうしたの?」
態度が豹変した男に困惑する女性。
男は構わずに、Yシャツに腕を通す。
「え、え!?ど、どうしたの急に!?私、なにか、あなたの気分を害するようなことでもした?」
慌てふためく女性の言葉に対し、男はため息を吐き、ガッカリした表情で口を開いた。
「なんで、そこの毛、剃るんだよ……。萎えるだろ……」
完
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