第768話 Wake Up Dead
数ヶ月前、横浜で外人さん数名と打合せがあり
6連泊しなければならず、極力安いビジネスホテルを取った
寝ることだけを考えれば申し分ないのだが、問題はバスルーム
シルバニアファミリーか・・・と突っ込みたくなるほど狭い
便座に至ってはF1のコクピットほどの窮屈さ
便座横の張り紙には
「建物全体の水圧の関係で逆流する恐れがあるため、20時以降は使用を控えてください」
と書かれている
完全な欠陥ホテルやないか
嫌な予感がしたので、部屋でウ〇コするのだけは止めておこうと思っていたのだが
宿泊3日目の早朝、どうしても我慢できず便座に座った
狭いため、エビが背中丸めて後ろにシュッシュッと逃げる感じで、便座に収まる
そして案の定、尻を拭く段になって壁が邪魔になり、手が後ろに廻せない
それも想定はしていたので、若干体を浮かせながらとか、ひねりながらとか
数回、かなり不自然な体勢で尻を拭いていると
突然、右肩甲骨が攣(つ)った(,,゚Д゚)
強烈な痛みが上全身を襲う
「ううう・・・」
右腕を尻に回したままの体勢で、便座からずり落ちる
床のタイルに、馬に鞭打つ騎手のような格好で顔を押し付けたまま、激痛で微動だに出来ない
今ここに刺客がきたら俺は瞬殺・・・
脂汗を掻きながら強烈な痛みに耐えていると、ベッドの方からスマホが鳴りだした
目覚ましに設定しているメガデスの「Wake Up Dead」という曲
~浮気のバレた俺は、明日の朝ベッドで彼女に撃たれ、二度と目覚めることはないだろう~
過激なのか間抜けなのか分からん歌詞の、元祖スラッシュメタル
俺も今、ある意味死んでいる
曲が鳴りっぱなしのまま5分ほど経過
ようやくゆっくり立ち上がれたので(右腕はまだ痛くて動かせない)
となりのバスタブに移り、左手でシャワーをひねり、尻を洗う
結局その日は首も廻せず・右腕も上げられず
前日まで打合せで派手でアメリカンなジェスチャーを繰り出していた俺が
残り3日は野村萬斎のような所作になってしまい
何故彼は前半3日でこれほど覇気が無くなってしまったのか
後に通訳から聞いた話では
相当激しい女性を連れ込んだのだろうと噂されていたという
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