第660話 大物

孫息子の海(かい)は小3で、まだ船で沖に連れていくには少々不安があるため


1時間ほど走った離島(無人島)の湾内の浅瀬などで釣りをさせる


彼の自己記録は68センチのカスミアジ


といってもカスミアジの引きは凄まじいので、彼のプライドを傷つけない程度にアシストしたが。


とある日曜日


海を連れ、渡嘉敷島の辺りまで遠征に出た


お客様もよく案内する小島の浅瀬に船を止め、アンカーを下ろす


餌となる小魚をサビキで釣り、それを今度は大物用のフックにかけて、海底まで沈める


水深は20メートル。


まあこの深さなら、居付き(ずっと住んでいる魚)も想定内のサイズだろうから、孫でも対応出来るはずだ


小魚 (オジサン)を針にかけ、底まで落とし、1メートルほど巻き上げ、後は待つ。


その一連の作業は海1人でこなす。


いざという時のため、ロッドにはロープを括りつけてある


一投目、沈めて5分もしないうちに「ジージ!」海が呼ぶ


振り向くとすでに、竿がグイングインしなっている


あっ、ちょっとデカそうだが・・・う~ん、大丈夫かな?


「海くん、それちょっと大きそうやけど、どうする?自分でやる?」


「自分でやる!」


「わかった。じゃあゆっくり(竿受けから)外したら、すぐ合わせてみ?」


「わかった!」


竿受けからはボタンを押せば外れるのだが、海がボタンを押した途端


グゥイィィィ~ン!!


竿が海中に引き摺り込まれかける


「ジージ!!ジージ!!」海は軽くパニックだ


それでも竿を自分の小脇に挟む


挟んだは良いが、今にも体ごと引き摺り込まれそうだ


ドラグ(リールから糸の出る調節)がギャギャギャギャギャ~ッ!!と鳴る


全く魚が止まらないようだ

これは危ない


「はなせ!はなせ!!」


「えっ!はなすの?!ジージ!!」


「はなせ!!はやく!!」


「ジージ!!ジージっ!!!」


「早くはなしなさい!!」


「ジィ~ジィィ~!!!!」


海に駆け寄り、竿を奪い取る


「はなせって言ってるのに!何やってんのさ?!」


「だからずっとジージに話してんじゃんか!!」


いや・・・

この状況でそこ間違うかな


※結局93センチのヤイトハタが上りました(´皿`)

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