第646話 あんたかい

これから夏場に向かうと、乗ったタクシーで嫌なことに遭遇する


それは、締め切った車内で蚊を発見してしまうことだ


よく話題になるが、俺は恐らく「蚊に噛まれない」体質だ


そうは言っても運転手と俺しかいない空間で、対象者が2名しかいないのだから


いくら俺の血が不味くても、我慢して刺してくるかも知れない


蚊を発見したところでタクシーは発進する


このコロナの時期なので、クーラーは付いているが薄っすら窓も開いている


しかし蚊は、薄暗い足元に見え隠れして、一向に飛び去る気配はない


ちなみに俺は半パンだ


足元ばかり気にしているのも格好悪いので、目線だけ足元に向けておく


運転手「すみません、蚊がいますでしょ」


なんだ気付いてたのか


俺「ああ、いてますね」


運「すみません、車外に出そうとしたのですが」


俺「仕方ないですね」


運「蚊はお嫌いですか」


何だその質問。


俺「蚊が好きな奴など居らんと思いますが」


運「まあ彼らも必死に・・・あ、たぶん私、もう数カ所噛まれてるので大丈夫だと思います」


俺「ああそうですか・・・ああ、私がもう噛まれないってことですか?」


運「あ、私が」


おい。

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