第582話 はいはいどうせオッサンは汚ねえですよ。

密を避ける世の中であるのに、昨日


とあるショッピングモールのエレベーターに乗ると


あとからあとから乗り込んできて、超密になった


皆マスクをしてはいるが・・・気にならないのだろうか?


ほとんどがオッサンだ


いつもなら外国人客で賑わう場所だが、日本人だけ


俺の前にノースリーブの若い女性が、正面から覆い被さるように押されて引っ付いてきた


よほど好き同士でも、人前でこれほど密着しないだろう、というほどの接地面だ


こういう時の時間は長い


こんなオッサンに密着しなければならないその女性には、申し訳ないと思いながら


満員電車のように両手をPut your hands up状態にする


手を上げているのは俺だけだ


1階から乗り込み、俺は3階で降りたかったのだが、殆どの乗客が最上階の8階まで行くようだ・・・止まる気配がない


1番奥にいるので仕方ない、ガサゴソ動くのもなんなので、そのまま手を上げて立っていた


ここ2週ほど髭を伸ばしているので、マスクを付けていると鼻下の髭がマスクに押されて、鼻の穴にそよそよ触れる


我慢してはいたのだが、3階で降りられないと断念した時点で、無性に鼻がこそばゆくなってきた


あかん、くしゃみが出る・・・


正面はまずい、左右も微妙


結局斜め右上を向き、なるべく音が出ないようにと構えたのちに


裏声まじりで「へっぴゅ」とくしゃみが出た


「ぴゅ」で終わったのは、極力コンパクトにまとめようと口をつぐんだ結果だ


しかしそれでも注目を浴びたようだ


くしゃみ・咳に敏感な皆さんが、後ろの俺に迷惑そうな目で振り向く


ぴったりフィット中の女性は、空いた左手で自分の頭頂部をさり気なく触る


飛沫飛ばしてませんよ(ー ー;)


ていうかアンタらなぁ・・・


「グワッショォォイ!!」なら謝るけど「へっぴゅ」でっせ?


それもマスクしとるのよ?


まぁ、すみませんでしたねぇどうせ俺は汚ねぇですよ


・・・と、俺に釣られたのか


「くちゅ」


ぴったりフィットの女性が、女性特有の超コンパクトくしゃみをした


・・・なんやアンタら、無反応かい。


俺の時は反応しただろうがよ

迷惑そうな目でよ


ほんならアレか?

俺も「くちゅ」なら許されるんか?


・・・せんけども。

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