第563話 保健指導

事務所に、特定保健指導の女性が問診にやってこられた


何やら3月末に受けた検診結果の中で


食生活の乱れによる栄養の偏りがトリガーとなり、脳卒中などを引き起こす恐れがあるため


1日3食、蛋白質に偏らず糖分も適度に摂り、"普通の食事"を心掛けてくださいとのことであった


10分ぐらいで済むものと思っていたのだが


色んな指導・アドバイスを伺っているうちに、気付けば1時間も経っていた


あくまでも無料カウンセリング、報酬の受け取れる仕事でもないだろうに


問診中ず~っとカリカリカリカリ、手を止めることなく一心不乱に用紙に書き込んでおられる


俺という一個人のために、これほど親身になって戴いていることに少なからず感動を覚えた


「ではここまで色々とお伺いしてきた中で、有効と思われる努力目標を記しておきますので、是非、参考にして戴いて、今後の生活習慣改善に努めてください」


そう言って、先程までずっとペンを走らせていた複写の問診用紙の一枚をビリッと剥がし、俺に差し出す


受け取ったA4複写の紙にはこう書かれてあった


「ワイン月に3本減らす」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る