第553話 ガールズバー
何気に通る路地にガールズバーがあって
オープンが15時、クローズが22時となっている
外から見えるキャパとしては、カウンターに10人というところか
この店がいつも早い時間から8割がた埋まっていて、本当なのかどうか、店前の看板に掲げる値段設定も恐ろしく安い
俺はキャバクラとガールズバーは行かない主義なのだが
この店はどうも気になる
何でこんなに流行っているのだ?
いつか、席が空いてそうな時にフラッと入ってみようかな・・・
そんなことをぼんやり考えて数ヶ月が経ったある日
平日の夕方4時半だったか、その店を横切る際に店内を見ると
・・・お、客が4人くらいしかいないぞ?
一旦は通り過ぎたのだが、あれこれ考えた末にバックして店の戸を開ける
「いらっしゃいませー」
20代の、メイド姿のような女子が3人、俺を迎えてくれる
客層は様々だ
小汚いオッサンにチャラい若者2人、サボって飲みにきたような真面目サラリーマン。
「こちらどうぞー」奥のカウンターに促される
「お客様、初めてですか?」
小首を傾げながら俺の正面に立った女子が聞いてくる
「うん、前の道は通るんやけどね。いつも一杯みたいだから素通りしてた」
「わー、じゃあ気にかけてくださってたんですね!嬉しい♡」
あ。いま少し、入ってしまったことを後悔したかも。
こんなノリはやはり、好きではない
「何を飲まれますか?当店は何たらかたら・・・」
システムを説明してくれたが、とりあえず「じゃあ濃いめのハイボール戴こうか」と注文する
ちなみに、今俺を接客してくれている女子は、先程まで俺の一つ席を空けて右隣の、小汚いオッサンの前にいた
オッサンは露骨につまらなさそうだ
すまんのぉー
俺、初めてでなぁー
「あ、え~っと貴女は・・・さゆりちゃんか。俺は良いぞテキトーに飲んでるから。ほら、隣の方。寂しそうにしてるから」
さゆりちゃんという女子はチラッとオッサンを見たが直ぐに俺に向き直り
「良いんですよぉあの人、毎日来られてるし」
「あっ常連さん?じゃあ気兼ねしなくて良いのね?ならさゆりちゃん、一杯飲むか?・・・あ、こういうお店は女の子は飲んじゃいけないんだったかな?」
「ぜ~んぜん!有難うございます♡いただきます♡でもさっきから飲み過ぎちゃっててぇ、ソフトドリンクでも良いですか?」
「えーよえーよ、お好きなものを」
「有難う♡」
10分ほどの会話のうちにも、1人2人と客が入ってくる
「流行ってるなぁ~」
しかしやはり、客層的には俺が来ちゃいけないところだ。
彼らの楽しみを奪っちゃいかんな・・・
「あのぅ、こんなこと言うと、初対面なのに怒られちゃうかも知れないのですけど」
「ん?なに?」
「う~ん・・・あのね?お兄さんはぁ、ここに来ちゃいけない気がする」
えっ?
「似合わないか?」
「だって周り見てよ。あーんなお客さん達ばかりだよ?お兄さん、遊び慣れてんじゃん絶対」
「はっは!ストレートに言うねぇ~」
「私はお兄さんみたいな方がお越しくださるのはすっごく嬉しいですけどねー」
「なんで?」
「だってもう、スタッフの気持ちとか、分かって下さってるじゃないですかぁ。安心できますもん~」
「そ~んな物分かりの良い客じゃないぞぉ?まあでも、また来させて貰うよ。さゆりちゃんに会いに」
「いやん嬉しいですぅ♡」
俺「・・・とまあ、そんな店やったわ。たまにはああいう業態の店も良えもんやな」
坂下「なんだTさん、ハマったんですかぁ~笑」
宮里「あの店そういう感じなんですね~俺も行ってみようかな~」
そんな話をしていると金城くんが
「Tさんともあろうお方が・・・」残念そうに言う
俺「なんだよ笑」
金城「教えてあげましょうか?あの店の女子全員、初めての客には必ず『貴方みたいな方が来るところじゃない』って自尊心くすぐるんですよ。なにセオリー通り幻惑されてんですか?」
( ̄◇ ̄;)
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