第446話 なんやねん・・・

7~8年前だったか、ふらっと立ち寄った地方の波止場で


車載していたタックルを持ち出して、のんびりルアー釣りをしていた


いつの間にか背後に、犬を連れて散歩途中のお爺さんが立っていて、俺の釣りをじっと眺めている


いつから居られたのだろう・・・気づいた時点で軽く会釈する


「何、狙ってるの?」


「いや、何も決めてないんです、ちょっと立ち寄っただけなので」


「ふーん。ここなぁ、大物の穴場なんよ。」


「え?大物って、何がくるのですか?」


「クエ。それも規格外。」


「クエですか?!ここでですか?!」


「うん。生き餌泳がせて、“ほん”そのキワでな。」


「えー!どれくらいのがくるんです?」


「ワシ掛けたのは65Kg、5尺あったかな。」


「・・・ご、ごしゃく?!」


「うん。上げるのに40分掛かった。そこいらの連中にも助けてもらったけど。」


「5尺って・・・1.5メートルくらいですよね・・・」


「うん。刺身にしたら80人分くらいあった。」


淡々と話されるので嘘とも思えない。


「あの・・・そんな大物ばっかり狙ってらっしゃるのですか普段から」


「うん、まあ。ここらじゃワシを知らん奴おらんわ。普段は沖に出とる。」


「あ、漁師さんですか!なら専門ですねぇ」


その後も15分ほど釣りの話をして、興味深い情報も多々、教えてもらった


「あ、そろそろ帰るわ。まあ頑張って」


お爺さんは犬の散歩の続きをしに、去って行った


数分後、入れ替わるように


同じく散歩途中のおじさんに声を掛けられる


「あのお爺ちゃん、今日は何釣ったって言ってた?」


「えっ?何って・・・大物釣られた話のことですか?」


「何釣ったって?」


「え、5尺のクエを、ここで釣ったと・・・」


「またサイズアップや笑」


「え?」


「あの人、釣りなんかせんで?」


「え?漁師さんって・・・」


「八百屋!商店街の。」

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