第314話 知ったかぶり

沖縄の、とあるステーキハウスでの接待


どうしても俺とイシくん(ウチの小さな営業マン)に用事ができてしまい


予約はしていたので、お客様の引率係として宮里くん(脳筋天然社員2号)を指名した


「彼が案内しますんで、先に始めておいてください」


お客様にそう言いながら、宮里くんには


「あとから顔出すから。コースも頼んでるし、一緒に肉、食べてこい」


そういって送り出したはいいが・・・


こと料理に関して、生姜焼き定食程度の知識しか持ち合わせていない彼に、一抹の不安はあった


送り出して20分後。


宮里くんから電話が掛かってくる


「Tさん!○○さんが凄く高いワイン頼まれたんですけど!」


トイレに行く振りでもして席を立ったのか、手で覆い隠したような、こもった声で早口で言う


そんな高いワイン置いてたっけ・・・?


少々心配になり、「なんていうやつ?」と聞いてみた


「あっ・・・ちょっと後で画像送ります」


そう言って電話は切れたが、程なくメニュー表の画像が送られてきた


ジュヴレ・シャンベルタン・ラ・キュヴェデュ・ジェネラル・ルグラン/¥14,500-となっている


なんだよ、10万以上のワインかと思って焦ったぞ・・・


「OK。ちなみにそれ、フランス産。ピノノワール、黒ぶどう」


まあ聞かれることもないだろうが、一応情報も添えて返信する



それから30分後。店に到着し合流すると、客が爆笑している


ワイン、詳しい?と客に聞かれた宮里くん、「これってどこ産か知ってる?」と振られ


「フランス産ですよね」


「おっ、なんだ君、知ってるじゃん」


「ピノノワール、海ぶどうですよね」



だから知ったかぶりするなと・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る