第283話 Powerpuff girls

2年前の3月頃だったか


那覇から羽田行きの飛行機に搭乗した際に


右手脱出扉横の窓側に俺は席を取ったのだが


俺の左側2席に、アメリカ人の5〜6歳の女の子と、その母親らしき若い女性が乗ってきた


女の子が俺の左、通路側に母親が座る


じっと見た訳ではないし、マスクもしているが


それはそれは可愛い、典型的な外人の金髪おさげの女の子だ


さて


那覇〜羽田は2時間ちょいというところだ


離陸してから直ぐに俺は寝落ちして、次に目が覚めると既に1時間10分ほど経っていた


ふと左を見ると女の子は寝ていて、母親は単行本を読んでいる


あと1時間も無いが・・・映画の続きでも見るかな


座席前のポケットに入れていたiPadを引き出し、ダウンロードしていた映画を開く


ちなみに「クロール」というパニックホラーだ


巨大ハリケーンが襲い街が水浸しになり、そこにワニが大量発生するという内容だ


途中まで見ていたので、ちょうど佳境の続きからだ


シートのテーブルにiPadを立て、Bluetoothでイヤホンを繋ぎ、見始める


見始めて5分ほど経った頃に、気配を感じて左を見ると


難し〜い顔をしながら女の子が見入っている


いつの間に起きてたの?


その間にもワニが、ガバガバ水中から主人公の女性を襲ってくる


あ〜ダメだ、こんなの見せては。


しかし無言で画面を閉じるのも女の子に素っ気ない・・・というか


こういう時、大のオッサンなのだから何か機転が利かないものか?


自問していて、あっ!と思い出した


最近、孫娘(当時9歳)がドライブ中に、暇だからiPadを見たいと言い出した


彼女は英会話を習っている関係で、海外アニメが好きだ


そのため「Powerpuff girls」 というアニメを、彼女用に10話ほどダウンロードしていた


彼女はそれが入っているのを知っているので、自分でiPadを開いて視聴を始め、ケラケラ笑っている


真剣に聞いている訳ではないのだが、主人公?が早口過ぎて、何言ってるのか俺にはさっぱり聞き取れない


しかしどうやら、その早口加減が逆に勉強になるらしい


・・・それを思い出したので一旦映画を止め、Powerpuff girlsの動画を探す


まだダウンロード期限が切れていなければ観れるはずだ・・・あった!


となりの女の子は、映画をやめてiPadを指スクロールする俺の一連動作を、じっと見ている


ちょっと待っててよ〜


イヤホンは・・・渡さなくても音小さくすりゃいいか・・・よし。


準備ができた


少し女の子側にiPadを傾け、適当な1話を再生する


女の子は依然、顔色変えず難し〜い顔をしながら画面を見ている


どう?お気に召されませんか?ってな感じで女の子に微笑んでみた


すると今まで難し〜い顔をしてアニメを見ていた女の子が、俺を見上げて突然


「この子らな、早口やから嫌いや」


か、関西弁・・・

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