第253話 着ボイス

タクシーに乗った


運転手は角刈り髭面のオッサンだ


「広島駅まで」と行先を告げると、同じタイミングで


「電話来てんで〜?ウチが代わりに出よか〜?」


女の子の声で運転手に着信


「はい実車中です」


運転手は手短かに答え、スマホを切る


特段、2人の間に変な空気が流れることもなく、タクシーは発進する


着ボイスか・・・

沖縄弁の女の子のがあれば設定しても良いかな・・・


そんな事を考えながらスマホを開いて「着ボイス 女の子」と検索してみる


ほう・・・

萌えボイスってのもあるんだ・・・


どんなこと言うんやろ?

ん〜文字が小ちゃくて読めんぞ?


・・・と、セリフ部分をピンチアウト(拡大)したのが間違い


それはサンプルボイスの選択画面だった


突然かなりの音量で車内に萌えボイスが流れる


「ただいま電話に出れないにゃ♡ ご用件のある方はメッセージを残してにゃ♡…あ、無言は禁止だぞっ。にゃ♡」


あわわわっ?!


あたふたしてる間に全セリフが流れ終わる


俺はただ無言


運転手は辛うじて無反応を装ってはいるが、背中が震えている


駅までの10分間は長かった

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