第215話 おじさん違い

新大阪から博多に向かう新幹線


俺の座る席の数列後ろに、新神戸駅から家族連れが乗ってきたようなのだが


何となく聞こえる会話から、若夫婦と幼児一人かなと推察する


博多近くになり、今までおとなしかった子どもがぐずりだし


しまいには大泣き状態


まあでも特に気になるでもなく、アナウンスで到着まであと3分と聞こえてきたので


荷物を持ち、車両後部の降り口に向かう


後部座席の家族は、30代の夫婦と2歳くらいの男の子だ


男の子はお父さんに抱きかかえられ、俺が通り過ぎた後ろを付いてくる


進行方向右手の降り口に向かい立っていると、男の子はようやく泣き止んだ


母親「あー泣き止んでくれてよかったー」


男の子「ぱーぱ」


母「おーじーさん。ぱーぱはこっち」


子「ぱーぱ」


母「おーじーさん。これは?」


父「かーもーのーはーし。これは?ぺーんーぎーん。」


母「ほんとにぃ?パパ適当なこと言ってない?」


子「ぱーぱ」


母「ううん、おーじーさん」


もしや男の子は、背後で俺のことを「ぱーぱ」と言ってるのだろうか?


父「これは?ぺーんーぎーん。これは?」


子「ぱーぱ」


母「パーパはこっちだよぉ笑」


父「じゃあこれは?ぺーりーかーん」


完全に俺をパパ呼ばわりしている・・・

なんか申し訳ないなぁ・・・


父「ぺーんーぎーん。ぺーりーかーん。かーもーのーはーし。」


母「ほんとかなぁ?これペリカン?ほんとにぃ?」


子「ぱーぱ」


父「あ、着くよ」


新幹線がホームに入った


母「じゃあ、もう降りるから。おじさんにバイバイしよっか」


あ、俺?

振り向いた方が良いのかな?

止まってからで良いのかな?


新幹線は完全に停止、プシューッと扉が開く


母「おじさんばいばーい」


ホームに降りながら俺は、満面の笑みを浮かべて振り返りながら手を振る


そして家族は、自分たちの後ろにいる白髪のおじさんに手を振っていた


家族には気付かれなかったが


白髪のおじさんには、満面の笑みで手を振る寂しい俺を見られてしまった

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