第74話 犬の毛タクシー

新神戸からタクシーに乗る


目的地まで20分ほどの距離だったので


疲れていたこともあり、出発後すぐウトウトし始めた


・・・しかしどうも眠れない


一眠りしたいのに眠れない


何かが・・・不快に感じる


運転のしかた?・・・違う


座り心地?・・・でもないな


なんやこの微妙な不快さは?


・・・そう思いながらも一瞬、寝落ちしかけたが、また瞬時に不快さで目を覚ます


あっ?・・・そうか!!


わかったわ謎とけたわ、このタクシー微妙に「生・臭・い」のや



寝付こうとして眠れず、ゴソゴソ体の位置をかえながら


それでも一瞬、寝ついたかと思えばハッと起きて鼻を膨らませ、顔をしかめている・・・


そんな俺をおそらくずっと、バックミラーで見ていたのだろう


信号停止したところで運転手が「匂います?」と訊いてきた


「あ、いや、うーん・・・」


曖昧な返事をしながら運転席を眺める


そこで初めてハンドルの異様さに気付き、凝視してしまった


いや、ハンドルだけじゃない


シフトレバー

サイドブレーキ

ダッシュボード


至る所が "毛" で覆われている


それも薄汚れたベージュ色・・・くすんでツヤも無い


運転手が続ける


いや~気付かれたお客様にはお話してるのですが

これ私が飼っていた犬の毛なんですよ

可愛がっていたのですが数年前に死んじゃって

こうやってそばに置いてやってるんですよ

もしかしたらこれが臭うのかもしれませんねぇ


いや、それしかないだろう・・・


俺はこのあと無言になった

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