第36話 誰だっけ?

昼前に、客先へ書類を持って参上した


受付の内線を鳴らすと、担当部長は外出中


アポを取っていたわけでもないので


「では、書類をお渡し願いたいのですが」と伝え、受話器を置く


程なく扉が開き、事務の女性が出てきたのだが


「あっ!・・・あれ?・・・あれ?」


彼女をみて、思わず指を指してしまう


彼女も俺に気付き、サッと周りを見渡し誰もいないのを確認すると


俺の腕を引き、パーテーション奥の打ち合わせテーブルへと連れて行く


「絶対、内緒ですよっ」


彼女が口に人差し指を立てて言う


「あっ勿論だけど、いつからここに?」


「派遣でちょっとお世話になってて」


「あ、そうなんだ・・・うん、了解」


持っていた書類を渡し、じゃあ、と踵を返す


彼女が再度、俺の背に


「ホントに言わないでくださいよっ」と言うので


笑いながら振り向き、うんうんと頷く


エレベーターに乗り、一階まで降り、ビルを出て腕組みする


・・・誰だっけ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る