第一章　息子さんを亡くした、２０代の女性の洗礼

第一節　引き留めるベム

　クリスマスイブ、１人目の洗礼。

　「今日はどういったご相談ですか」

　ベムは教会まで足を運んできた信者に

優しく問いかけた。

　「今日はクリスマスイブなので、

教会に来たかったのです。

教会の周りの

クリスマスオブジェやクリスマスツリー、

素敵ですね」

　頭に花が咲いたような女性信者は、

教会内のクリスマスの飾りつけを見てこう言った。

　「本当は、

何かお悩み事があるのではないのですか？」

　ベムは信者の表情から、それを察した。

　信者は２０代の女性だ。

　「洗礼を受けますか？」

　「いえ、主人に、

『教会に行くなら、洗礼を受けるな』

と言われました。

なので、今日はこれで帰ります」

　「待ってください。

あなたのようなお方こそ、

このクリスマスイブにふさわしいのです。

神様があなたのことを心待ちにしておられます。

洗礼を受けてから帰りましょう」

　強引なベムの引き留めに、

２０代の女性信者は、しり込みしていたものの、

しばらくして、首を縦に振った。

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