第4話 戦闘

―キョウシュウエリア ロッジ周辺―



「このまま真っ直ぐ進めばロッジに着きますよ」


ヒグマ達と別れた俺は、護衛を名乗り出てくれたリカオンの案内でロッジ…今はロッジアリツカと呼ばれているらしいが、とにかくそこへ向かっている。

いや、同伴してくれるアニマルガールを探す手間が省けた訳だし、彼女が同伴してくれる事自体は問題はない…


「それじゃあ付いて来てください!!」


…彼女が俺のことをアレックスと呼ぶんじゃなくて、キャプテンと呼ばなければな…

2人と別れる際に呼ばれたのを合わせると2回目だぞ。


「なぁリカオン、なぜ俺のことをキャプテンと呼ぶんだ?名前はさっき教えただろう?」


先ほどから疑問に思っていたことをぶつけると、リカオンは「え?」という言葉を発し立ち止まった。

…もしかして無意識にキャプテンと呼んでたのか?


「う~ん…なぜかは分からないですけど、あなたの事はキャプテンと呼んだほうがしっくりくるんですよね」


まさか前の世代の記憶が残ってるのか?

いや、探検隊の副隊長ドールの時と違って、別個体のリカオンがアニマルガールになったのが今の彼女のはずだ、そんな訳ないだろう…


「もしかして、駄目でしたか?」


別にそう呼ぶなっていう訳ではないが、昔の彼女リカオンと比べると声が低いからまだましなんだが、なんか調子が狂うっつーか…ああもうそんな叱られた子犬みたいな顔をするな。

分かった分かった、キャプテンでもなんでもお前の好きに呼んでくれ…


「いや…お前がそう呼びたければ、別に構わない」


「…!はい!」


そう元気よく返事をすると、彼女は嬉しそうに尻尾を振りながらまた歩き始めた。

…そういえばリカオンってイヌ科の動物だったな。

いや、イヌ科以外にも他にも嬉しいと尻尾振る動物は居るか。


「どうしました?何か気になる事でも?」


っとと、そんなこと考えるより今は目の前の任務に集中しなきゃな。

ってか、俺が考えてる間にあいつもうあんなところに…


「いや、何でもない。ってか、護衛が護衛対象を置いて先に行くなよ」


駆け足で彼女の元へ向かうと申し訳なさそうに「すみません」と謝ってきたが、彼女が歩き出したのに俺が立ち止まって考え込んでたのが悪いんだから謝らなくていいとフォローしておく。

さて、トラブルでも起きなければ日が落ちる前にロッジにたどり着けそうだな。






それから1時間ぐらいたっただろうか…

彼女と会話を交えながらロッジへ進んでいると、不意に彼女が立ち止まり周りの匂いを嗅ぎ始めた。


「ん?どうし…」


セルリアンハンターが立ち止まる事なんて一つしかない!


「…セルリアンか?」


小声でそう聞くと、彼女は静かに頷いて辺りを警戒し始めた。

くそっ!何事もなくロッジにたどり着けそうだなって話してた時にこれかよ!

この場にフィルの奴が居たら「フラグ回収おめでとう」なんて言われてたんだろうなぁ…

って、そんなこと考えてる場合じゃねぇな。


「イェーガー、分かるか?」


「スキャン中…スキャン中………反応ヲキャッチ、方位170。距離………エラー、システムノ破損ニヨリ距離ノ測定ガ出来マセン。システムノ修復ヲ開始シマス」


装置の破損?もしかして助けを呼んできてくれって投げたときに壊れたのか?だが後ろから来るってことさえ分かれば何とでもなる

ひとまずそこの木陰あたりにでも隠れて様子を…


「キャプテン!」


「どわっ!!」






『―――――!』


「セルリアン?どうしてこんな所に?」


どうやら思ってた以上にセルリアンが近かったらしい…

彼女に木陰の方ではなく茂みの中に引っ張られた直後、俺たちが立ってたところに5体の小さいセルリアンが我が物顔で陣取ってやがる。


「痛ってぇ…」


「すみません、キャプテン。大丈夫ですか?」


「いや、大丈夫だ。気にするな…」


正直茂みに飛び込む前に何か言って欲しかったが、あのままあそこに突っ立ってたら確実に奇襲食らってただろうから仕方ない。

それに俺の好きなアニメみたいに爆破する防壁から落とされるよりは断然マシだ。

それにしてもあんの一つ目共…俺達を背後から襲おうなんていい度胸してんじゃねぇか…


「リカオン、この近くにお前たち以外のハンターは居るのか?」


「2人いますけど、でも今日は山の近くを見回るって言ってたので…」


となると、増援は期待しない方がいいな…

セルリアンの方に視線を戻すと、俺たちを見失ってるのか辺りを見回している。

このまま俺たちのことを諦めてくれたら嬉しいんだが、それで奴らがロッジに向かったりする可能性を考えるとなると、今ここで奴らを一掃しておいた方が…


「ちょっと倒してくるので、キャプテンはここに居てください。」


…何だって?5体だけとはいえあの数を一人で戦うつもりなのか?


「1人じゃ無茶だ!俺も一緒に戦う!」


「一緒にって、だめですよ!キャプテンの武器ではセルリアンを倒せないんですから!私に任せてここで大人しくしててください!」


ならせめて俺が囮に…って、行っちまったよ…

まぁ、リカオンの言うことに関しては御もっともか。

仕方ない、ここは彼女の言う通りここで大人しく現役ハンターのお手並み拝見といきますか。

危なくなったときはここから援護射撃するけどな。


「キャプテン、付近ノラッキービーストカラセルリアンノ目撃情報ガ来タヨ」


「何だって?どこだ?」


「方位310、詳シイ位置ハ不明。現在情報収集中」


「山の方向か…分かった、詳しい情報が入り次第教えてくれ」


くそっ、こんな時に…、リカオンが目の前にいる団体を一掃し終わったら伝えておくか。

戦ってる最中にこっちに来なければいいんだが…


さて…と

ホルスターから銃を取り出して視線をセルリアンどもの方に戻すと、ちょうどリカオンが孤立した1体を奇襲して倒したのち、そのまま肉薄しもう1体を倒し残りの3体と戦ってる様子だった…

こりゃ、俺の出番はなさそうだな。って思ってたらまた1体撃破し残りは2体だけだ。

そういえば昔カークに「お前は過保護過ぎる時がある。少しは彼女たちの力を信じてやれ」って言われた時があったのを思い出した。

アニマルガールの力を信じてないって訳じゃ無いんだがなぁ…実際に彼女らは基になった動物の身体能力を持ってるのをこの目で見てる訳なんだし…

ただ、彼女らを守るようにして動くといつの間にか俺が突出してる形になってる時が多いが………こういう所が過保護だと言われるんだろうな…


「もう出てきていいですよ」


おっと、色々と考え込んでるうちに片付けたみたいだな。

安心して銃をホルスターに戻そうとした時、彼女はなぜか俺がいる茂みではなく別な茂みに近づいているのが見えた。


あいつ…何であっちの茂みに……まずい!!


「キャプテン!セルリアンガ!」


「分かってる!!」


イェーガーの話を最後まで聞いてたら間に合わないと判断して彼女を助ける為に茂みから飛び出してリカオンの元へ走り出す。

くそっ!間に合ってくれよ!






ふぅ…セルリアンのと戦いには慣れてるとはいえ、さすがに私1人だけで5体と戦うのはキツイなぁ…

それにしても、キャプテンってかばんと違って好戦的な性格みたいだけど、ヒトってみんな性格が違うのかな?後でキャプテンに聞いてみよう。


ガサガサッ


「もう出てきていいですよ」


もう、あそこで大人しくしててって言ったのに…


…?返事がない?


「キャプテン?」


リカオンはもう一度茂みの中にいるはずのヒトに声をかけるが、返事が返ってこない。それどころか茂みの中から出てくる気配すらない。

疑問に思いながら彼女は茂みに近づくが、そこにいたのは彼女がキャプテンと呼ぶ護衛対象であるヒトでは無かった。


「―――――!」


セルリアン!!


「しまっ!ぐぁっ!!」


咄嗟に回避しようとするも間に合わず、腹部にセルリアンの体当たりをくらい態勢を崩してしまう。

倒れないように何とか踏ん張ることができたが、態勢を立て直す直前に同じ茂みから2体のセルリアンが飛び出してきた。

その時なぜかハンターに入った当初ヒグマに教わったことを思い出した。


『いいかリカオン、今この場にいるセルリアンどもを一掃してもすぐに気を抜くな。たまにあるんだが、近くにいるセルリアンがこっちに気づいて近づいてくる時があるからな』


そうだった…。あの後も何回かヒグマさんに油断するなって注意されてたのに…


回避は間に合わないと判断し、少しでもダメージを減らすために防御態勢を取ろうとした瞬間…



パァンパァン!パァン!



謎の音が聞こえた瞬間、飛び掛かってきたセルリアンが彼女ではなく彼女のいる場所の左側に落下した。


今の音…確かキャプテンを助けに行く時にも…って、今のうちに距離を取らないと!


そう思ってすぐにセルリアンから距離を取る為後ろにジャンプする。

それを見たセルリアンがもう一度体当たりを食らわせようとジャンプした直後、彼女の護衛対象であるヒトの飛び膝蹴りがセルリアンに直撃した。






よし!走りながら撃ったからちょっと心配だったが命中した!

ここに来た時最初に戦った相手があの小さいのでよかったぜ。

もし黒玉野郎が最初の相手だったら攻撃が効かないって思ってただろうな…まぁそん時は蹴飛ばしたりとかしてただろうけど

リカオンの方は一瞬だけ戸惑ってたみたいだがすぐに離れてくれた。

だが残りの一体が逃がすまいと言いたげにもう一度体当たりを食らわせる為にジャンプしていた。

銃はリカオンに跳びかかったセルリアンを撃ち落とした時に弾が切れてリロードは間に合わない…だったら!!


「させるかああああ!!」


そのまま止まらずに彼女に体当たりを食らわせようとしていたセルリアンの横っ腹に跳び膝蹴りを食らわせ、その先にあった木に吹き飛ばす。

リカオンは…よし、大丈夫みたいだな。


「大丈夫かリカオン!」


「キャプテン!!な、なんで!!」


「おっとその話は後にしてくれ!来るぞ!」


彼女にそう言いながら最後のマガジンを装填すると同時に茂みから3体のセルリアンが飛び出してきやがった!


「セルリアン!?この辺りはヒグマさん達と一緒に見回った時は居なかったのに!」


「じゃあその後で湧いたんじゃないか!?そんな事よりどうやって突破するか考えるんだ!」


さて、とは言ったもののこっからどうすっかな?

助けに飛び出してきたのはいいが、俺の武器じゃ今のセルリアンを倒す事が出来ない…

幸いこのM1911JPカスタムは実銃の3倍は撃てるが、1マガジン使っても倒せなかったセルリアンを今装填されてる分で倒しきれるとは到底思えない…まして2挺あるうちの1挺は弾切れ寸前…となると、俺がセルリアンを撃って怯んでる隙にリカオンに撃破してもらうか?

俺と合流する前にもセルリアンと戦ってるみたいだからあまり負担は掛けたくないが、この方法ならある程度負担は軽くなるだろう。

ふと先ほど蹴飛ばしたセルリアンが気になって蹴り飛ばした方を見ると、打ちどころが悪かったのか木の根元にいくつかキューブが転がってる…って事は何も打つ手なしって訳じゃないはず…。


「キャプテン、私に考えが「自分が囮になるから逃げてください…だったら断る」


お前を囮にするくらいだったらこっちが囮になるし、もしそれでセルリアンにやられでもしたら俺はこの任務が終わり次第自ら命を絶つ。

そう思っていると彼女の口から出てきた言葉は俺の考えとは全然違っていた。


「いえ、こんなことは言いたくないですけど…まだセルリアンと戦いたいって気持ちは変わりませんか?」


その言葉を聞いて一瞬だけ彼女の方を見るが、すぐに視線をセルリアンに戻す。

セルリアンと戦いたいかだって?そんなこと決まってる!


「ああ、勿論そのつもりだ」


「でしたら石を狙ってください」


「石?」


「はい、そこがセルリアンの弱点です」


言われた所をよく見てみると、確かに巨大セルリアンの背中にあった宝石みたいなのが頭の上にくっ付いていた。

なるほど…連中が昔よりタフになった理由がこれで分かった。

ってことはさっきのセルリアンは木に叩きつけられた後、頭から地面に落ちた結果石が砕けたってことか。

ただ弱点が分かったとはいえ、あの小さな的に無駄撃ちせず撃ち抜く事が出来るか?

まぁハンドガンでマッチに火をつけろって言われてる訳じゃないし、小さいとは言っても握り拳よりちょっと小さいぐらいのサイズだから大丈夫だと思うが…。


「キャプテン、そちらは何か作戦はありますか?もしあればキャプテンに合わせますけど…」


作戦か…


「じゃあ追加で出てきた3体は任せろ。お前は自分に跳びかかってきた連中にお礼参りと洒落込め」


「え?私が3体と戦った方がいいんじゃ?」


「何とかやってみるよ。ただそっちが片付いてもまだ戦ってる様だったら援護してくれ」


正直弱点である石を動きながら狙い撃てる自信はないけどな…

ま、最悪怯ませてる隙に懐に飛び込んで零距離射撃でも浴びせるとするか。


「分かりました。ところでキャプテン。お礼参りってなんです?」


「…何でもない。それより準備はいいか?」


「は、はい!いつでもいけます!」


「よし、じゃあ俺の合図で突っ込むぞ。いいな?」


「オーダー、了解です!」


ふっ、いい返事だ。なんだか昔を思い出すな…


「それじゃあ…行くぞ!!」


俺の合図と同時に共にセルリアンに向かって駆け出す。

さて、言ったからにはちゃんと倒さないとな!

そう思いながら一番近いセルリアンに狙いを定め、頭に付いてる石に向かって3発撃ち込む…が、弾は1発だけ石を掠めただけで全て外れた


くそっ!やっぱり走りながらじゃ当たらないか!


リカオンの方は…さっきより倒すペースは落ちてるようだが、あっちは大丈夫そうだな…


「キャプテン後ろ!!」


おっと、他人の心配してる場合じゃないな!!


「おぅらぁ!!」


後ろから飛びかかってきたセルリアンにカウンターで後ろ回し蹴りを喰らわせて近くの木に叩きつける。

さっきみたいに頭から落ちなかったが、顔から落ちてくれたおかげで弱点の石がさっきより狙いやすくなった!

無駄撃ちはしたくないが、1発で倒せるかどうか分からなかったから念の為2発撃ちこんでおくか。


take this食らえ!」


今度は相手が動いてなかったおかげで2発とも石に命中し、一回身体をビクっと跳ねた直後に吹き飛んだ。


よっしゃあ!セルリアンの撃破に成功!

って1体倒しただけで喜んでる場合じゃないな…


「キャプテン!こっちは終わりました!」


お、ちょうど終わったようだな


「んじゃ、援護頼む!」


セルリアンを倒し終わった彼女に援護を頼むと同時にセルリアンの目を狙い等間隔で4、5発撃ちながら懐に飛び込む。


やっぱ遠くからちまちま撃つのは性に合わねぇ!


心の中で思いながら怯ませたセルリアンを踏みつけ、石に2発撃ちこんで撃破する。

これで残りは1体だけ…奴はどこに行った?


ガサッ


「そこか!」


音のした方向にあった茂みに銃を向ける。

このまま茂みの中に撃ち込んで石に当たればそれでよし、もし当たらなかったとしても勢いは弱まっているはずだから地面に落ちたところを狙えばいいか。なんて考えながら引き金を引くが…


カチッ


弾切れ!?嘘だろ!まだ半分も撃ってないぞ!


「―――!」


「ちぃっ!!」


間一髪のところで後ろに転がるようにして体当たりを回避する。

危なかった…あとちょっとでも遅れてたら顔面に食らってたな…

咄嗟の出来事だったから宙にまった帽子に直撃してたが、顔面に喰らうよりかは断然マシか。

こいつが人型だったら巴投げで吹っ飛ばしてたんだけどなぁ…なんて考えてたら飛んできたセルリアンと目が合った。


「――――!」


ちっ、ガン飛ばしてんじゃねぇよ一つ目野郎!


「キャプテン!!」


「リカオン!任せ…たぁ!!」


巴投げの代わりに目が合ったセルリアンを思いっきり上空に蹴り上げる。

蹴り上げたセルリアンはきれいな放物線を描いてリカオンの足元に落下して、


「たぁっ!!」


彼女の放った踵落としが石に命中、最後のセルリアンが弾け飛んだ。


さて、本当にあれが最後だといいが…

イェーガーにシステムの修復は終わったか聞いてみたら、丁度システムの修復が終わったらしく、周辺のスキャンを始めた。

さぁ~、頼むからさっきのが最後だって言ってくれよ~…


「・・・スキャン完了。周辺にセルリアンの反応、及び目撃情報なし。ミッションコンプリート、リターンザベースRTB


ふぅ…どうやらあれで本当に最後だったみたいだな。


「はぁ~、疲れたぁ…」


っと、スタミナが多いアニマルガールでもさすがにきつかったか?


「ほら、大丈夫か?」


疲労でその場にへたり込んだ彼女に手を差し伸べて立ち上がらせる。

ほんと、懐かしいな…


「ありがとうございます…って、そうだ!駄目じゃないですか!あそこで大人しくしててくださいって言ったのに飛び出してきちゃあ!?」


おっと、さすがに見逃しちゃくれないか。

まぁ護衛対象が命令無視して敵に突っ込んできたんだ、立場が逆だったら同じことを言ってただろう。


「でもそのおかげで追い打ち食らわずに済んだろ?」と指摘するとちょっと不満そうに「そ、それは…そうですけど…」と返ってきた。


さて、俺の帽子は…っとあったあった。よし、羽も無事だな。

最悪羽は無くなったとしても網膜認証でなんとかなるが、いちいちラッキービーストの目に近づけないといけないから面倒なんだよな…。

っとと、そうだった。何で最後のマガジンは数発しか撃てなかったんだ?

マガジンを取り出して目盛りを確認するが、ちゃんと半分以上残量はあるな…。

もう一度再装填して地面に向けて引き金を引いてみたが、駄目か…、さっきと同じで弾が出ない…


「イェーガー、マガジンのスキャンを頼む」


「了解、スキャン開始・・・・・・完了。ドウヤラ目盛リガソノ場所デ固定サレチャッテルミタイダネ。充電スレバ普通ニ使エルハズダヨ」


よかった、マガジンが壊れた訳じゃ無かったのか。

まぁ5年近く放置されてたからな、何かしらガタが来てもおかしくはないか。


「それにしても凄いですね」


「ん?何がだ?」


「だって…ん?」


「…?どうした?」


「いえ…、あっちの方から物音が聞こえた気がして」


リカオンが指を指した方を見ると、確かに草や茂みをかき分けているような音が聞こえる…というかこっちに近づいて来てる?

まさかセルリアンか?おいおい…勘弁してくれ。こっちは満身創痍なんだぞ…



 「・・・なのか?」


 「・・・はずだ」


「あれ?この声…」



「まったく!貴様が作戦を立てるといつもどこかで破綻す…ん?」


ドンッ「いてっ!いきなり止まんなよ!…お?」


目の前の茂みから出てきたのはセルリアンじゃなくて2人のアニマルガールだった。

見たところ2人ともイヌ科のアニマルガールの様だが…


「ジェシー!キックス!2人とも何でここに?」


「リカオン?おめぇこそ何でこんな所に?」


なんだ、リカオンの知り合いか?って事はあの2人が山に向かったハンターか?

でもそうだとしたら何でこんな所に?

などと考えていたら、昔のドイツ軍のオーバーコートに似た服を着たフレンズが俺のことに気づいたのか顔をこちらに向けてきた。


「…?リカオン、そいつは誰だ?」


「あ、この人はキャプテン。パークにヒトが戻れるか調べてるんだって」


…後で他人に俺のことを紹介するときは名前で紹介するようリカオンに教えとくか


「ほぉ… 申し遅れました、自分はセルリアンハンター ジャーマン・シェパードです。皆からはジェシーと呼ばれています」


「俺はキックス!ドーベルマンのフレンズだ!よろしくな!」



ちょっと待てジャーマン・シェパードとドーベルマンだって?

そういえばパークから撤退する直前ぐらいに、国連軍から軍用犬が何匹か脱走したって話を聞いたことがあるが…もしかしてその時の軍用犬がフレンズ化したのか?

っとと、そんなことよりこっちも自己紹介しなきゃな


「ジャパリパーク復興委員会所属、調査員のアレックス・フェットだ。彼女からはキャプテンと呼ばれてる。よろしくな」


「ところで、2人ともどうしてここに?山の近くを見回るんじゃなかったの?」


「あ~…、その予定だったんだがな…ちょいと野暮用が入ったというかなんというか…」


何だ?やけに歯切りが悪いな…


「実は山に向かっている途中にセルリアンを見つけたんだが、こいつが何故か途中で見失ってな…」


ジェシーが親指で褐色のアニマルガール、キックスのことを指差しながらこの場にいる理由を説明してくれた。差された当の本人は「別に好きで見失ったわけじゃねーぞ」と口をへの字にしながら軽く抗議している。

なるほど…、それで見失ったセルリアンを探してる最中に俺達と出会ったと………ん?


「キックス…だったか?セルリアンはどのくらいいたか分かるか?」


「あ?あ〜…確かここにいる人数にあと1人追加したぐらいはいたはずだが…それがどうしたんだ?」


5体か…、茂みから出てきたセルリアンの数と同じだな


「キャプテン…もしかしてさっきのセルリアンって?」


「ああ、俺もそう思ってた…」


「知ってるのか?」


知っているも何も、さっきまでそいつらと戦ってたんだからな。






「なるほど、我々が見失ったセルリアンをお前たち2人で倒した…と」


「あいつら以外に居なければ…だけどな」


と、いう訳で2人にセルリアンと戦った事を詳しく説明する。

別にそのことを隠さなきゃいけないっていう理由もないからな。

説明してる途中でリカオンが興奮気味に俺がセルリアンを倒したという事を2人に伝えていたが、俺が倒したのは3体だけで、そのうちの1体は俺が直接倒したわけじゃない。

話を聞いてたキックスは「お前スゲーなぁ!」と興奮していたが、ジェシーの方は終始俺に疑問のまなざしを向けていた…


「ふむ、俄かには信じがたいが、リカオンが嘘をついているわけでもなさそうだな…」


「わりぃな、こいつちょっと疑り深い性格でな」


「貴様が疑わなさすぎるだけだ…それで、お前たちはロッジに向かっている最中と言っていたな?我々も同行しても構わないか?」


「それは別に構わないが…そっちの方はいいのか?」


「ああ、どのみち我々もアリツカゲラに報告するためにロッジへ行く必要があるからな」


「それにフレンズの護衛もハンターの仕事だからな!」


ふむ…こっちも満身創痍な状態だったし、お言葉に甘えるとするか


「分かった、それじゃあよろしく頼む」


さて、少しばかり想定外なことが連続で起こったが…これ以上トラブルが起きなければ途中で日が沈んだとしてもロッジへたどり着けるか。


それとリカオンが何が凄いって言おうとしたのか聞いてみたら、セルリアンを探知できるイェーガーの事を言おうとしていたらしい。

確かに、普段のパークガイドロボットとして運用されてるラッキービーストしか知らなければそう思うのも無理はないかもな。

まぁその探知機能とかのおかげでコストが通常のやつの3倍ぐらい跳ね上がっちまったがな

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セルリアンハンターの帰還 名無しのジオン兵 @nanasinojionnhei0079

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