第86話 初心に帰ってサイバーパンク掌編を書いてみよう その22 『対戦車拳銃』
俺は対戦車拳銃を買った。とある理由で主力戦車並みの装甲を持つサイバネジャンキー男と、決闘することになったからだ。武器のレギュレーションは「自分の身体に内蔵できる、もしくは片手で持てる武器のみ使用可」だった。俺のサイバネは純粋なフィジカル特化型で、武器を内蔵する余裕などない。となると、片手で持てる武器を使うしかない。
そこで俺は対戦車拳銃に目を付けたのだった。決まれば実行あるのみ。すかさず、通販サイトで一番人気の対戦車拳銃をポチった。ただ、ここで俺は失敗を犯した。焦っていたこともあって、まともに対戦車拳銃の説明に目を通していなかったのだ。
届いた対戦車拳銃に、俺は驚愕した。とにかく銃身が長い。というか、薬室がクソ長い。この街の法律では、20mm以上の口径を持つ火器は銃ではなく砲になる。弾頭の径に制限がある以上、貫通力を上げるには縦に伸ばすしかない。付属の19mm×615mm徹甲弾は、弾丸というより杭に近かった。
俺の膂力ならこの竿竹のような銃も片手で持てなくもない。確かにこの弾なら戦車の正面装甲だって破れそうだ。しかし、実戦で弾を当てられるかと言われれば話は別だ。俺は泣く泣く購入価格の5%の手数料を払って対戦車拳銃を返品した。
結局、決闘では対戦車ロケットランチャー用のタンデムHEAT弾を手でしこたま投げつけて勝った。時には、奇をてらうよりシンプルな方法が功を奏すこともあるのだなと思った。
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