第81話 登場人物が一人の掌編を書いてみよう その7 『発光鬼灯』
春先に知り合いから貰った発光鬼灯の株が白い実を付けた。発光鬼灯は普通の鬼灯とは違って、薄暗いところを好むと聞いたので、家の中に鉢植えを置いておいたら、病気にかかることもなく立派に育ってくれた。愛らしい鬼灯の実が青白い冷光を発する姿は、鬼火にも似て美しい。夜にトイレに立つときには、明るすぎない道しるべとなってくれるのもありがたい。
発光鬼灯の原産地では、発光キノコを好む夜行性の鳥がいるのだという。その鳥が光る実を食べることで、発光鬼灯の播種をしているらしい。鳥を誘引するための形質が人間をも魅了し、こうしてはるか遠い土地まで種を広げる結果になっているのだから、世の中というのは不思議なものだ。
来年は、こぼれた種からも発光鬼灯を育ててみたいと思う。種から育てると、実を付けるのに二年かかるらしい。ゆっくりと手間をかけるのもまた、乙なものだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます