第67話 初心に帰ってサイバーパンク掌編を書いてみよう その18 『ぱっと散って』

 廃工場にたむろしてる磁気嵐兄弟マグネティックストーム・ブラザーズの下っ端のチンピラたちを皆殺しにするだけで、スポーツタイプのホバー・カーを買えるだけの金が貰えるとあれば、興奮せざるを得なかった。しかも、武器弾薬に限らず、義体まで雇い主持ちとは太っ腹だ。

 義体は市警の鎮圧部隊が昔使ってたのと同じやつが貰えたし、銃に至っては最新のやつだった。ぼくに与えられた獲物は、Sp-AB25C、25mm空中炸裂弾ランチャー。銃に取り付けられたレーザーファインダーと義体の火器管制装置、知性化弾頭が連動して、敵により効率よく打撃を与えられる場所で弾頭が自動起爆する。従来の製品よりより洗練され、曳火射撃武器として最低限の機能を持った兼価版らしい。それでも、使い心地は最高だった。

 戦闘ソフトウェアに任せて、適当に引き金を引いているだけで、磁気嵐兄弟マグネティックストーム・ブラザーズのチンピラたちは次々と死んでいった。壁裏や機械の影に隠れても、ほどよい場所で弾頭が爆発して、致死性の破片が襲い掛かる。逃げ場などどこにもなかった。チンピラたちも果敢に応戦してきたけど、拳銃やサブマシンガンがせいぜいで、ぼくの義体の装甲を貫くことはできなかった。

 チンピラの九割くらいを殺した後、工場の外からバイクの音が聞こえてきた。誰か、増援に来たのだろう。でも、無駄だ。ぼくに勝てるはずがない。

 しばらくすると、工場の入り口から、ぼくが殺してきた連中とは雰囲気の違うやつが入ってきた。そいつは、磁気嵐兄弟マグネティックストーム・ブラザーズらしく筋肉隆々だったが、すこし脂肪も付いているように見えた。バキバキのボディビルダーというよりは、プロレスラーみたいな体形の男だ。

「てめえか、俺の弟たちにちょっかいかけてるってやつは」

「そう、追いかけっこしてたらみんな死んじゃった! で、ぼくになんの用?」

「死んでもらう」

「やってみたら? 無理だと思うけど」

 ぼくは男に向かって引き金を引いた。榴弾が男の目の前に飛んでいって、炸裂する。爆発の火花ぱっと散って、あたりに煙が立ち込める。

「馬鹿だ。勝てっこないのに」

「馬鹿はおめえだ」

 気が付くとぼくはバラバラになっていた。砕かれた四肢が辺りに転がっている。男はぼくを見下ろして言った。

「思いあがったクズが。死ね」

 男がぼくの頭に足を振り下ろすと。視界が真っ暗になった。

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