第377話 フェロモンに酔いそう

 俺はホールに足を踏み入れてすぐに中を見渡したが、その瞬間冷や汗が出て、思わず扉から1歩下ってしまった。


「お兄ちゃんどうかしたの?」


 肩車をしている女の子に問われたが、俺は正直に話した。


「だ、駄目だ!あ、あれは、あかんやつだ。女のフェロモンが強過ぎる。ああ、頭がクラクラして気絶してしまいそうだ。す、凄過ぎる!」


「あははは。お兄ちゃんっていっぱいお姉ちゃんと一緒なのに、情けないねー!くすくす」


「それを言われると辛いけど・・・」


 総勢210人位で皆見目麗しい女性で、そんな女性のみが集っているのだ。若い女性特有

フェロモンがムンムンとしている。


 おまけに何故か皆セクシーだったり、可愛らしい服だ。もえ~!と叫びたくなるようなキュートな女性や美人だらけなのだ。


 俺は失念していた。ヒナタがそちら方面で出来る奴だったと言う事を。

 今着ている服は普段から着ている服なのだろう。ゴスロリや胸元が開け掛けている着物姿、軍服、何故かミニスカポリス。コスプレとしか見えない服ばかりだ。モコモコな飾りに猫耳のカチューシャを着けた疑似獣人。似合い過ぎており、思わずあの中の誰かを抱きしめ、愛でたいと思う程に理性が飛び掛けた。


 勿論、性的に抱くのではなく、頬ずりやモフりたい方だ。うずうずしていた。

 無性にアンバーをモフりたくなった。アンバーには夜を共にする以外でも、頻繁に尻尾をモフらせて貰っている。


 ホールにいる女性達の中には、奴隷オークションの時に出品されていた奴隷達が身に着けていたような、辛うじて乳首と陰部を隠す下着のみの格好や、水着姿の女性がいたりもする。


 トリシアが震えている。


「ラ、ランス、や、やばい、やばいよー!可愛いいよ!凄いよ!もえもえ~!」


 鼻息を荒くして早速被害者1号に・・・頬ずりをしに行ってしまった。


 俺は不覚にも珍しく狼狽えたのだ。圧巻だった。


 そして腕を組んで来ているメイドさんに胸を押し付けられ、その感触に浸っていると、後ろから体当たりをされた。殺気が無いから気が付かず、一気に女性達の中に引き込まれてしまったのだ。


 情けない格好でよろめきながら中に入っていった。すると仁王立ちしてこちらを向いており、ショートカットできりっとした男勝りな感じで、男装が似合いそうな20代半ばと思われる見事なプロポーションの女性がいた。誰かに背中に体当たりをくらい、その見事な胸に飛び込んでしまった。


 と言うよりも、俺を待ち構えていて、俺を抱き止めてその見事な胸に頭を押し付けていた。


 突き放すのは簡単だが、加減が難しい。多分怪我をさせてしまうから引き離す事を諦めた。しかし中々良い感触だが、胸に圧迫されてしまい息ができない。俺は手をバタバタし始めた。


「きゃー!お姉さま積極的です!」


 周りからそんな声が聞こえて来た。


 俺は藻掻く素振りから本格的に藻掻き始めていたが、真っ青になったヒナタがその女性の頭をこついた。俺の顔は別の意味で真っ青だが。


「何をなさっているのですか?御主人様がお困りですよ!苦しがっていますよ!」


「違いますよ。私が男の本性を暴いてやります。紳士なんている訳が無いのですよ。どうせこの男も私の胸を揉んだりするのですよ。ほら、涎を垂らして・・・だらしない。初戦男なんてこんなもんですわ」


「ち、違いますよ!貴女が御主人様を拘束するも、抵抗なさらなかったのは、貴女の胸による圧迫の所為で窒息していて、まさに気絶し掛けているのであって、涎ではなく泡を吹かれておいでなのですよ!この方は貴女を傷付けずに引き離すには力が有り過ぎています。貴女に怪我をさせずに引き離せないから、抵抗せずに大人しく圧迫され、息が出来ないのですよ。紳士だと言ったでしょ。気絶しそうよ。離して差し上げて!」


「うそ!確かに私の体に何もして来ない!何でなの?。じゃあこれではどう?ほら坊やおいで、チュウチュウしても良いのよ」


 その瞬間俺は「ばぶう」と唸りながら、その女性が挑発的な態度で顕にした乳首を必死に吸い出した。またもやバブリモード発動である。


 そう、よりによって大勢の女性達の目の前で、赤ちゃん返りという醜態を晒しながら意識を手放したのであった。

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