第365話 コンプリート

 ダンジョンを攻略したとの知らせが入ったので、俺は急いでゲートを出して水樹達の元へ向かう。


 彼女達の姿を見て泣きながら抱きついていた。

 彼女達の体をベタベタ触って行く。


「怪我は無いか?危ない事はなかったか?怖くなかったか?」


 皆大丈夫だと、誰1人として怪我もないと。皆一応に俺の心配具合に呆れつつ、感謝をしていた。


 娶っているメンバーも、まだ娶っていないメンバーである水樹達に対しても同じように触れ、異常がないか確認していたものだから、娶っていないメンバーは真っ赤になりくねくねしていた。


 即刻屋敷に送り、風呂に入って先ずはゆっくり休むようにお願いした。一応回収したダンジョンコアを見せられて完了報告をしていた。


 結局2つ目と3つ目の攻略は、ほぼ時を同じくして終わった。念話が入り連絡があった順でゲートを出して迎えに行き、やはり涙を流しながら妻達を抱きしめ、皆が呆れる中、体に異常がないかをひとりひとりベタベタと触り確認していった。


 赤毛のトリシアがわざとセクシーな喘ぎ声を上げたものだから反応してしまい、理性が一瞬飛んでしまった。皆の前だというのに服を剥ぎ取り始めてしまい、慌てた妻達が俺を捕まえて叱りつけられてしまったような一幕もあった。一度死んでしまったトリシアを見てからは、特に彼女に対する想いは強かったのだ。あの時の悲しみと絶望感は今でも俺の心に少なからず影響が残っていて、2度とトリシアのあんな姿は観たくなかった。その為、妻達に過剰な心配をしてしまうのだと思う。


 ただ、トリシアだが、今の淑女然とした姿は俺の好みであり、ドストライクだ。早く正式に妻にしたくてウズウズしていたりする。そのトリシアも、リギアやライトアイに頭を叩かれながら怒られていた。それ以外は特に何もなかった。


 皆がダンジョンに繰り出している間は、俺は心配で心配出来が狂わんばかりだったのだが、やはり待つという事に俺は向かないのだなと今更ながら思い知らされた。


 特にセレナには今までこんな想いをずっとさせてしまい、待つ辛さという精神的な負担をさせていたものだから、申し訳なさで一杯だった。連絡が来たら俺を救援する為の人員を送ったり、迎えに行かなければならなかったのだ。


 屋敷に戻った後セレナのお腹に顔を埋め、泣きながら謝罪をして抱きしめ、ついつい求めてしまった。ただ、セレナは待つのは辛くなかったと言う。



「あのね、志郎さんを待つ事が辛いのではなく、会えないのが辛いの。ほら、私って日本人じゃないですか。特に昔の人は、妻は夫の帰りをただ黙って待ち、家庭を守るものなんですから。ちゃんと無事に帰ってくると信じているから、どんと構えて待っているから。でも、配慮してくれて嬉しいの」


 俺の考え過ぎだったようだ。俺の反応を見て、今回だけだからと言ってくれて、また泣かせて貰った。そんな俺をいつも優しく抱きしめてくれるセレナは、俺にとってまさに女神様だった。


 翌朝になり、ダンジョンアタックをしたメンバーから詳細報告を受けていた。


 特に何もなく、俺が攻略したダンジョンと同じとしか言いようが無かった。コアを見比べたが、差が分からなかった。ボスの構成や、最終階層数、聞いた内容が全て同じだった。簡単過ぎて拍子抜けし、怪我をしたのはよそ見をしながら歩いていて頭を打ち付けただけだと。誰だ?トリシア以外思い付かないぞ。転倒し擦りむいただけで、戦闘中の怪我は皆無だった。その怪我も皆に付与している肉体再生でさくっと治ったと。誰が怪我をしたかは、本人の名誉と恥ずかしいからと伏せられ、俺も一言、油断大敵だから以後気をつけてね!それだけをトリシアの目を見ながら伝えて終わった。


 これからどうするかとなったが、先ずは攻略した6つのダンジョンを結んだ中心部の探索が必要となり、早速向かう事になった。


 今回はダンジョン探索メンバー以外で向かう。

 気になる事があるからと、オリヴィアが天界から戻っていて、オリヴィア、アンバー、壮絶なじゃんけんを勝ち抜いたブラックスワンを率いる。

 アンバーは俺の護衛として来る事になった。

 まずはセレナを連れて、飛行で探索エリアの外周に行き、ゲートで探索メンバーと入れ替わり、探索を開始するのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る