第315話 開き直り
手帳を確認していたが、確かに地球に妻子がいたのであろうと言う事を理解はした。
確か年齢が若返ったと書いてあり、18歳の頃以後の記憶は無くなるだろうと予測をしていて、実際にそうなったらしいが、実感はない。
まあ、仕方がない。記憶がないかららしいとしか言えない。
多分だが、もしも記憶があったとしたのならば、今の状況は罪悪感が半端ないのだろうと感じていた。いや、このような状況にはなっていないだろう。向こうの家族には悪いが、記憶が無くなって良かったのかも分からない。
シェリーに言われた。
「あのね、召喚された当初に私を助けてくれた時に、まだ記憶がちゃんとある時に頼まれたの。記憶が段々希薄になり、自分が自分じゃ無くなるのが怖いから、たまに指摘して手帳を読むように伝えてくれって。例えもうそんな事をしなくても良い等と俺が言っても絶対に従わずに伝えて欲しい。たまに思い出させて欲しいんだ。と言ったのよ。これはランスに命を救われた私の使命なの。だから私の言う事をちゃんと聞いてね。ソウルメイト全員と、今後そうなる仲間には既に伝えてあるの。私だけが苦悩するランスを見ているのよ」
普段優しいシェリーが強い口調で話すものだから、俺はただただ正座して頷いた。多分シェリーには辛い事を頼んでしまったのだと今更ながら気が付いた。なので俺に対するシェリーの想いを汲んで一緒に手帳を見ていた。
何故かシェリーが目の周りを拭っている。どうやら知らず知らずの間に涙を流していて、俺の心は揺れていたのだ。そしていつの間にか過呼吸になり、シェリーが慌てて処置をしてくれた。
どうやら心の奥底は忘れた筈の記憶に反応していたようで、シェリーに体を預けたが、黙って背中を擦ってくれた。シェリーの心臓の鼓動が心地よい。
そういえば以前はスキルをこまめにチェックしていたが、今ではしていない事に今更だが気が付いたりした。これも記憶が曖昧になっていて、壊れつつある影響なのか?
また、俺は暫くの間は、子供が産まれた事に対するお祝いをしに来る客の相手をして過ごす事になりそうだった。
そうは言っても午後は魔王の捜索に出掛けるので、中々忙しくしていた。
時々明智君の様子を見に行ったりしていたが、子供が生まれて1ヶ月位経ったある日、明智君が死んだ事が分かった。奴隷が死んだとのアナウンスが有ったからだ。
俺は慌てた。奴はそれなりに強く、魔物相手程度では遅れを取る事はまず無い。勿論俺よりは遥かに弱いが、にわかに信じられない状況だ。
つまり、シューマン山にはかなりの実力者がいる事になる。
急ぎ主要な戦闘要員を集め、緊急防衛と、シューマン山に出向くメンバーを決めるのであった。
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