第311話 魔王との戦い

 俺はライトソードを出してそいつに近付いて行く。

 よし!奴もやる気満々だ。スキルか何かで逃げられたら厄介だから一安心だ。

 俺が階段の所に着くと、奴は階段を降り始めた。


 そしていきなり奴が魔法を発動するも、上段からの攻撃をヘルムが受けると熱線がヤツに向って放たれた。

 俺の装備のヘルムは攻撃反射があるというか、ビームに変換して相手にお返しをする。

 

 奴は慌てて躱す。

 俺はお返しにアイスボールをしこたま放つが、ファイヤーボールで消されていく。奴も無詠唱だった。


 やり難い。魔法陣が浮かび上がるから魔法を放って来る事は分かるが、向こうも同じく苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。


 一瞬睨み合いになり、お互い剣を出して鍔迫り合いになった。近くで見ると日本人のようだ。それも10代、そう高校生位だ。


「どうやら日本人のようだが、お前の悪辣ぶりは度を過ぎた。日本人とは言え討伐させて貰う。大人しく降伏するならば命だけは助けてやる!お前では俺に勝てんぞ!真の勇者には敵うまい」


「へええ!お兄さんが勇者?何人だ?日本人って嘘こくなよ!それにしても見事なパッ金だな?フランスか?あそこの毛も金か?後で確かめてやるよ!けけけ。お前の毛でカツラを作ってやるよ!しかしお前やたらとでかいな!倒れる時はさぞ豪快なんだろうな!それとお前、まさかとは思うが俺の事をばかにしているのか?降伏なんかするかよ!力ずくで来いよ。この世界は楽しいぜ!俺の配下に加わるなら女も取っ替え引っ替えでいい思いができるぞ!」


「同じ日本人として情けを掛けようと思ったが、どうやら無駄だったようだな。俺は既に30人以上の妻を持っているよ。お互い愛し合っている。お前はやり過ぎた。死んで悔い改めるんだな」


 俺はライトソードで斬り結ぶ。

 先程と違い、奴は魔法を放つのに詠唱を必要としていたが、俺はその暇を与えない。先程の魔法はどうやらアイテムの力だったようだが、それが俺に通じないので詠唱の必要な強力な魔法を使おうとしたようだ。残念だが、そうは行かない。


 そして俺はダンジョンでゲットした貴重な魔法無力化の使い捨てアイテムを、たった今使った。奴が強力な魔法を使えると分かったからだ。


 簡単な魔法ならアイテムのお陰で無詠唱で行ける筈だ。だがしかし、発動しないので焦っているようだ。


「悪いな。俺も使えなくなるが、魔法禁止のアイテムを使わせて貰ったよ。剣で来いよ」


「糞があ!ふざけんじゃねえぞ!魔法が使えないって何してくれるんだよ!しゃあない奥の手を使うぜ!お前の女は俺がヒイヒイ言わせてやるよ!」


 剣でがむしゃらに向かってきており、かれこれ30合位打ち合った。スキルが謎なので迂闊に攻められない。


「そろそろ死ねや!」


 そう言いいきなり転移してきた。

 だが、俺は予測をしていてアンタレスを前に出し、俺の後ろにライトソードを出しておいた。そして奴が見事にライトソードのある所に転移した。

 丁度心臓の所にライトソードが刺さり、奴の心臓を破壊し俺のライトソードも爆散し消えた。消えたと言っても再度顕現させれば出るのだ。


「甘かったな。転移程度は俺も持っていて想定済みだよ。死んでお前の所為で死んだ者に詫びるんだな。もう1、2分で意識が無くなるぞ。魔王とはいえお前弱いな」


「く、くそが!ぐふ。俺が、俺が死ぬなんて!嫌だ!嫌だ!奴の言う通りにしただけなんだ。頼む殺さないでくれ!助けてくれ!それに俺は魔王として召喚されたけど、ボスは俺じゃないんだ!俺はなり損ないなんだ!」


「他に魔王がいるのか!?それはそれで、お前がした事は許される事ではないぞ?」


「俺は逆らえなかったんだ!命令だったんだ!俺はまだ童貞なんだ!直接女とやるのは勇者を殺すまで禁止だったんだ。せめて死ぬ前にやりたかった・・・ふうふうふう。くそがあぁぁ・・・」


 そう言って奴は息絶えた。

 奴から奪ったスキルは結界魔法だった。これを使えば俺達の大陸も安泰だろう。


 俺は奴の最後の言葉に項垂れた。

 こいつが魔王で無いのならば、魔王は一体何処にいるのか?と。

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