第261話 キングが
今俺達は400階層のボス部屋の前にいる。
「なあ裕美、ここにはどんなのが出ると思う!?」
「そうねぇ。あなたが対処するべきじゃないのがいると思うけど、またあのいやらしい奴らかしら!志郎には女性の形をした者を斬るのは無理でしょ!?」
「そうだよな。俺の苦手な相手しか出ないからそんな所か。斬れないのではなくて、精神攻撃にレジスト出来ないんだよ。まあ行くか」
そうして扉を開ける。
出て来たのはまさにキングだ。
「えっ!?マジか!?こ、これは想定外だ!?裕美は援護してくれ!うわわわ!」
俺はアンタレスとライトソードを顕現して戦闘を始める!
剣での打ち合いになれば、まず間違いなく力負けする。小さい傷を多数付けるが致命傷には至らない。
俺も時々殴られる。
剣を突くと躱され、剣を振ると弾かれる。
その場から動けないが、奴もこの場から一歩も動く事が出来ずに俺に向かってひたすら剣を振って来る。かなり厳しい。
今までで一番厳しいのだ。
かれこれ1時間以上斬り結んでいる。
しかも裕美の重力操作を最大限に掛けていてもだ。
そう手詰まりだ。
これが本気を出した時のキングか!と思い知った。
もしもの事を想定した時に思い至ったのは、時間停止を使わなければ厳しいと思っていたが、正にその通りになっているのだ。
時間停止以外は全て試した。
転移はことごとく読まれ、反撃を喰らうのだ。フェイントや出足払いを掛けるも駄目だ。
裕美に近付く事が出来ないのが幸いだ。いつ頃だったか、俺の左腕は食い千切られてしまった。
ふと思い裕美の再生した体を収納から出す。何があるか分からないから服を着せてあるのが有ったのを思いだしたのだ。確か元の体に戻る事に執着していた筈だ。
そうして裕美の体を出すとキングに投げつけたが、反応があった。
慌てて受け止めると、大事そうに、愛おしそうに抱きしめて泣いている。
やはり俺の知るキングのコピーのようだ。
裕美はワナワナと震えている。
そりゃあそうだ。自分の体が出て来たのだ。しかも俺はすっかり言うのを忘れていたのだ。この後が怖い。相当文句を言われるだろうなと思うが、服を着ている状態なのが幸いだ。
キングが我に返るまでの一瞬の間に転移し、ライトソードを振ってキングの首を刎ねた。
ドロップはキングが使っている剣だ。
最後は実に呆気なかった。
俺は裕美の体を収納に入れると、まずは自分の左腕を再生した。しかし、しんどくて片膝を付いた。
裕美が慌てて駆けつけて支えてくれたので、何とか倒れずにいた。
裕美が泣いている。俺を抱きしめてくれた。
意識が朦朧としてきて、流石にやばいなと思いシェルターを出す。
血を流し過ぎたようで、間もなく気絶したのであった。
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