第188話 顛末
どうしてそうなった!
俺とオリヴィアは正座をしている。いや、させられている。
鬼の形相のクロエに叱られている真っ最中だ!
「ランスううう!ここにお座りなさい!オリバー貴女もよ。さっきのは何?私達がどれだけ悲しんだと思うの?何故念話の一つもしないのよ!わたしううう」
泣き出した。
「悲しませて悪かったね。緊急だったんだ。念話も試したが出来ず、もう駄目だと覚悟したんだ。オリヴィアと・・・」
俺は魔力の流れが変わってからの事を説明した。
クロエに謝られ、そして皆に盛大に泣かれ、やがて抱き付かれた。
そして、俺は立ち上がろうとしたが、急激に意識が遠のきその場に崩れ落ち、気絶した。
意識を取り戻すとアリアのベッドで寝ており、隣ではオリヴィアが呻いている。誰かが見守っているが、良く分からない。
覚醒と気絶を何度か繰り返し、やがて朝になった。
唐突に俺ははっきりと覚醒したと認識した。
オリヴィアを起こし、ベッドの周りでウトウトしている妻達を起こした。
「心配掛けたね。もう終わったよ。そう感じるんだ。アリアとロトナ!父上と母上を呼んできてくれ。若しくはこちらから向かおう」
俺の雰囲気が変わっている事を皆が把握したようだ。
清々しかった。気分が良い。力が漲る感じだ。俺もオリヴィアも心臓がちゃんとドクンドクンと動いており、力強い鼓動の音を奏でている。
オリヴィアにステータスを確認させたが、上位天使になっていると言い、おろおろしていた。
「さあって、どうすっかな?」
クロエが寄ってきて、お願いをされた。
「ねえランス、ちょっとここに立ってみて!オリバーもよ」
そう言えばクロエが少し小柄になったように見える。
オリヴィアは変わらないが、神々しさが増したような気がする。
俺とオリヴィアの前に皆が並んだ。あれ?皆を見下ろしているっぽいぞ。どうやら俺とオリヴィアは、10cm程身長が伸びたようだ。
そして手を引っ張られ、姿見の前に立つと俺の髪がなんと金髪になっている。
「えっ!どういう事?」
どうやら俺とオリヴィアの髪が同じように金髪になり、俺も腰までのロングヘアーだ。
「あ、あのー?俺の髪の毛について誰か分かる?」
皆首を振る。誰も知らないのだ。幸い?顔は変わっていない。
俺は基本的にロン毛が嫌いだ。だから剣を出して切ろうとしたら、皆が必死に止めてきた。
「何をやっているの!勿体無いじゃないの!」
ロトナに怒られた。そしてロトナが懐から櫛を出して髪を梳かす。
「何これ!凄い!」
皆が俺のやオリヴィアの髪を梳かすが、超サラサラで引っ掛かりがない。驚いていた。
俺はふと思った。身長が伸びたから服のサイズが合わない。クロエに服の事を聞くと、もうちょっとで服屋と靴屋が採寸に来ると言う。実はロトナが手配していて驚いた。
そうこうしていると、アリア達のお父様とお母様が来て、挨拶もそこそこに元気になった姿を見て泣いていた。
そして服屋と靴屋が採寸をしに来たので、黙って採寸をされていた。
手持ちの服が無いので、系列の服屋に行き、今着られそうな服を買いに行った。
オーダー服は時間が掛かるので、既製服を購入した。それといつもの靴屋で新たな靴の注文と、今ある靴を調整してもらい、何とか旅に出る準備ができた。
屋敷に戻り、俺はオリヴィアを伴い風呂に入る。
目的はオリヴィアの体を確認していくのと、オリヴィアに俺の体を隅々まで確認して貰う為だ。大きくなった実感がない。どうも大きくなった比率が俺とオリヴィアは同じなので、2人だけでいると背丈が大きくなった実感がなかった。
オリヴィアの体を触っていくが、胸の感触も変わらなかった。
そうしているとセチアが入ってきた。セチアにお願いして体を触るが、触り心地に変化がない。セチアに聞くもいつもの俺だそうだ。よく見ると、手の大きさは今までと変わっていない。セチアの胸を鷲掴みにしても今までの感覚と同じだからだ。定規で測れよと誰も言ってこない。
俺はしょうもない奴だ。掌の大きさが変わったかどうかを確認するのに、胸を揉まないと分からないのだ。アホである。
セチアが何をしに来たかと聞くと、髪を切りに来たという。
実は流さが揃っていないので、実際問題として俺とオリヴィアの髪型は余り宜しくなかった。髪が長いのでまずは洗うという。
セチアは美容師の才能があり、タオ殿の屋敷に来てからというもの、オリヴィア、クロエは真っ先にカットしていて、その後三宝姫とクロエやアリアの母親達の髪のカットや手入れを時折行っていたと言う。
意外な技術に驚いたが、王家の美容師顔負けの腕前であった。いや、それ以上で皆絶賛していた。
風呂を出てからセチアに髪をカットして貰ったのだが、見違えるような素晴らしいカットに感謝した。
今風で言うとカリスマ美容師だ。
その後今日はお開きになり、皆が俺に甘えてくるのでクジの順番で可愛がっていった。因みに寝る時はクロエとアリアが俺の横に添い寝をしてくれた。
色々あった忙しい1日だった。疲れからか、横になると直ぐに眠りに落ちていくのであった。
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