第154話 修行2日目

 朝起きるとユリアが俺の胸に頭を埋めてシクシクと泣いていたので、俺は優しく頭を撫でながら気遣った。


「おはよう。体は大丈夫かい?」


「うん大丈夫なの。あのね、ユリリンは元気なの。今はこれが夢じゃなかったから安心していたの。助けてくれてありがとうね!」


「所でそのゆりりんというのは?」


「えーシロリンはゆりりんの事を知らないの?これでもドームを満員にした事があるのにぃー!ショックー」


「はい?シロリン?うーんなんかさ、テレビで見た事があるような気がするんだけど、俺は記憶を失くしていて、気が付いてからまだ1週間位なんだ。だから君の事はもし会っていたりしていても覚えていないんだ。ただ、この世界に来た後は日記を付けていたから、知識としては色々あるんだ。あのね、80人の高校生と1人のサラリーマンの新幹線の駅での消失事件って知らないかな?」


「記憶喪失って大変だよね!あっ、それ知っているよ!確かに大騒ぎだったね!私もスマホで何度も見たよー」


「そのサラリーマンが俺なんだよ。因みに君が転移するどれ位前の事だったのかな?」


「えっとねー、シロリンが消えてから半年後にユリリンの番になっちゃった!私の中じゃあその事件は1年前かな。そうそう、そのあとね、謎の小学校で80人の失踪もあったよー!大騒ぎだったよ」


 現状と俺の年齢、他の召喚者の事、ユリアの転移の話しとかをしたが、首を傾げる。ユリアがあくびをしていた。


 まだ少し早かったみたいだ。しかし、やはり時間軸がおかしい。


 俺が考え事をしているとユリアが俺の顔と当たりそうな距離で俺を見ていた。

 そうしていると朝のトレーニングの時間となったので走り込みに行こうとしたら、ユリアも行くと言う。


 なんでも日本でアイドルをしていた時は、スタイル維持の為にランニングは欠かせなかったと言うので、一緒に走るがそこそこ付いて来られていた。ただ、半年のブランクは正直きつそうだった。


 軽めの柔軟を行ったが、ユリアの体の柔らかさに驚いた。アイドルをする前は新体操をしていたと言うが、人間技じゃないと思う位の柔らかさに唖然としていると、彼女はどや顔だった。


 いつの間にかクロエとオリヴィアも混ざっていて、メイドさんが食事の前に風呂にと言うので皆で入るが、何故かユリアがモジモジとしているので、クロエはピシャリと言った。


「何をやっているの?きのう清めの儀式までおねだりして、しかも念入りにして貰ったのでしょ?私なんか胸を揉まれただけなのよ。貴女が羨ましいわ」


 クロエが良からぬ話しをしているっぽいが、皆で気持ち良く入り、ユリアの視線が股間に固定されていたが、有る事を言い、早速3人に頭を叩かれていた。


「ひょっとしてシロリンは不能だったりするの?美女4人とのお風呂なのに!」


 これが引き金だった。

 クロエにみっちりとこの世界は冒険者として動く時は色目を使うのは不文律として禁止されていて、男性は直ぐに分かるから自制が大事で…と言っていると俺の事になってきていたので、俺は足早に食堂に逃げて行った。


 食事の時に今日の予定の話しになり、午前は俺は修行、セチアは貴族の勉強で、ユリアも一緒に受ける事になった。そして午後からは新たな奴隷を受け取る事になった。


 午後の奴隷の受け取りと服の買い出しをセチアに任せ、俺は屋敷をオリヴィアと見に行く事になった。


 クロエはギルドで外す事の出来ない来客に対応しなければならないというので来れないが、昼過ぎに不動産屋が来て一緒に屋敷に向かう事になった。どうも国王からも口添えがあったらしく、最近取り潰しになった侯爵だか子爵だかの屋敷が国有になっており、それを斡旋してくれるという。国王に本格的に気に入られたようで、クロエが言うには見なくても即決出来るレベルらしい。どちらかと言うと国王の顔を立てる為に行くらしいのだ。


 この時は別の意味の国王の本気を感じるとは思いも寄らなかったのだが、楽しみで早く行きたくて、新たな生活に期待を膨らませていた。


 戦闘要員の2名は2人で剣の手合わせをしてお互いの実力を確かめる事にしている。


 マクギーが来たので挨拶をしてから今日の修行になったが、俺は二刀流を教えて貰う。

 その前にきのうの追加で、二刀流を相手にする時の打ち合いを30分位行う。次に俺が二刀流でやはり基本の型からゆっくり始め、30分もすれば周りが驚く速さになっていた。次にマクギーも二刀流で始めたが、やはり30分もすると次の獲物に。マクギーが槍に替えてから30分もしないうちに終わったのだが、マクギーの体力が先に尽きて昼前に終わったのだ。


 殆ど教える事がなくなり、明日は槍と棒術で、そこで修行が終わりそうだと。明後日に行う模擬戦は1:9の割合で、例えスキルを使わなくとも俺が勝つだろうと言う。スキルを入れたら既にこの国では俺に勝てる者はもはやいないと言いきっていた。だが俺はイマイチ実感が持てなかったのであった。

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