第140話 オリヴィアさんとは?

 ギルドに着くとクロエとオリヴィアがギルドの入り口で待っていたが、周りの冒険者がギルドマスターの装いに驚いていた。2人共清楚な感じのドレス姿だったからだ。


 俺を見付けるとオリヴィアが深々とお辞儀をして来た。クロエは恥ずかしそうにモジモジしている。


 おかしい、クロエは自信満々なフェロモンムンムンなおねえキャラだと思っていたのだが、これではまるで乙女じゃないか!


 一度着替えているのだが、2人共質素な落ち着いた上品なドレスを着ており、不覚にも見惚れてしまった。 高級レストランでドレスコードが有っても大丈夫なドレス姿だ。ただ、よくギルドに持っていたなと感心した。


「こんばんは、クロエ、オリヴィア。お仕事お疲れ様。今日はどのようなお店に連れていってくれるのか楽しみですよ。それにその服はとても似合っていて素敵です」


「お世辞がお上手ね。でも嬉しいわ。お店は気に入ってくれると嬉しいのだけれども。多分驚くわよ!」


 クロエとセチアに腕を掴まれて店に向かうが、オリヴィアはまだ俺を警戒している素振りが見える。


 クロエの格好と貴族と言うのを裏切った感じでなんの変哲のない中級宿の食堂に来ていた。

 食堂の女将がクロエを見ると親しげに声を掛けた。


「おやクロエちゃんが男連れてくるなんて珍しい事もあるもんだね。いよいよパートナーを決めたのかい?」


 クロエは親しげに声を掛けられていたが、頷いた。


「不覚にもこちらの殿方を好いてしまいましたの。この私の魅力に落ちなかったのよ。失礼な御方ですよね!」


 女将が驚いていた。


「あんた言っていたよね?自分に靡かなかった奴を全力で落とすってさ。でもあんたが落とされたんだね。やるねぇお兄さん。あたいのクロエとオリバーを宜しく頼むよ」


 女将に頼むよと握手をされたが何も起こらなかった。今までは初めて肌が触れた女性の場合何かが見えていたのだが、今回は起こらなかった。

 どうやらクロエの馴染みの店のようで、ギルドでの雰囲気と余りにも違い、ギャップからどぎまぎしながら席に着いた。クロエとオリヴィアに料理をお任せしてとなりのセチアの手を密かに握っていた。


 料理が来る前にまずクロエに聞いた。


「クロエは女将さんとはずいぶん親しいようですが、ちょっと意外でした。貴族でありギルドマスターでしかもこんなに美人さんなのにこのような庶民のお店に普段から来ているなんてね!気さくなクロエは活き活きとして眩しいですね!」


「ふふふ意外かしら?もうここは長いのよ。私がまだ一介の冒険者をやっている時からの付き合いなの。美味しいのよここのお料理は。でもやはりランスは女性の扱いがお上手ね。年上の私がまるで子供扱いかしら?わたくしのような年上は嫌いじゃ無いのかしら?」


「美人に年齢は関係ありません!肉体年齢は確かに貴女の方が上ですが、実は私の魂は45歳で、転移時に18歳の体になったんですよ。そう、若返ったんですよ。だからね貴方は私より20歳近く若いので、俺からすると死語ですがピチピチの若い女性なのですよ。それに26歳って色気の有る女盛りで、私の居た世界では結婚適齢期って年齢でしたよ。私はクロエのような物怖じしない女性は好きですよ!」


「あらあら魂はやはり年上でしたか。年齢に関してはオリバーの方が詳しくなくて?」


「そういえばオリバーじゃなくてオリヴィアとクロエはどういった関係なんですか?ギルドマスターと受付嬢の関係だけじゃないですよね?因みにオリヴィアは人界に来て何年なの?」


 二人が顔を見合わせて頷いてオリヴィアが話し始める。


「普通は天界から転移できないの。だからね、転生させられてこの世界に来て今こうしているのです。冒険者をしていたクロエの専属受付嬢をしていてたのだけれども、クロエが冒険者を引退してギルドマスターになってからは、私は専属をせず、一般の受付嬢としてやっているの。時折冒険者として鍛えていたりして、簡単には死なないようにしているの。それと、そのごめんなさい」


 やはり震え出すので、クロエと席を変わって貰い、強く抱き締めて背中を擦りながら聞いた。


「俺の事がやっぱり恐いのかい?今は記憶を失っているが、手帳に記載があり、当初はこの世界に来た事を怨んだけど、記憶を失う前は寧ろ感謝していたんだよ。今もこうやって君とクロエ、そしてこのセチアという素晴らしい女性と出会えたんだ。感謝こそすれ、怨むなんて無いよ。俺の魂に掛けて誓うよ、オリバーを愛して決して俺からは傷を付けない。いつかきっと元の天界に戻る道筋を作ってやる。だからね、俺を受け入れて俺の所に来るんだ。君を欲しいとは思っても、決して殺そうとはしないよ。この世界に転移させてくれてありがとう」


 そして店の中でセチアもクロエも居る中であるにも関わらず軽くだがキスをした。

 オリヴィアは泣きながらも落ち着いたようだ。


「うん、有難うございます。私、ランスロット様が現れて目が合った瞬間この人があの時の転移者だって分かったの。遂に見つかってしまった。殺しに来たのだと。でも良かった、生きていてくれて。あっ、後ね、そのね、今のがね、私のねファーストキスなの。天界ではキスをしたと言うのは婚姻をした証なの。だからね、もう夫婦なのです」


「えっえええええ!ごめんなさい!知らぬとは言え俺なんかが」


 と言っている最中にクロエが指で口を塞いできた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る