第125話 奴隷を宛てがわれた
私は記憶をなくしているのに妙に落ち着いていた。
彼女が前も洗おうとしてくれたが、丁重にお断りして、脱衣場でも背中だけにして前は断った。
不思議な感覚だったな。
風呂を上がると、食事を用意してくれていたが、村長は村の復興の相談をしなくてはとセチアと私を残し出掛けていった。まあ奥さんがいるので2人きりではないが。
夕食を頂き部屋に行くと、ベットが一つだった。どうするのかと聞く。
「夜伽の後お1人でお休みをと言われましたら、私は床で寝ますので如何様にも。ただ、経験が無く、初めてですので、その、あの、失礼が在るかもです」
よくよく聞くと、彼女は村長の奴隷で、食い扶持に困った村の農夫が税を納められずに、10年位前に村長へ奴隷として差し出されて奴隷となり、以後はメイドとして働いているという。こういった事は初めてで、緊張していると。
風呂の事も聞くと、この国では男女別で、一緒に入ったのは奴隷が奉仕して体を洗ったり、着替えを手伝う為であると。
驚きつつ、彼女に言う。
「君は私に1夜の性接待をするように言われているんだね?」
「いえ、私を奴隷として、今回村をお救い頂いた分の対価として私を、あなた様に差し上げると言う意味です。私の役目は奴隷としてお仕えする事です。奴隷であればご主人様に夜伽のご奉仕をするのは当たり前の事に成りますよ」
「嫌じゃないのかい?」
「いやとかではないのです。私は奴隷ですので、逆らうと生きてはいけません。ご主人様に捨てられるというのは死を意味しますから」
「見も知らぬ者に性的に相手をしろと言われているんだよ。いやだろう?私は心から抱きたいと思わないと抱かないよ。でも君を床では寝かせたくはないから、今日は添い寝だけをお願いできるかな?目を失ったばかりで、今はその、女性を抱く気分ではないのだ。それと君に魅力が無い訳ではなく、私の問題ですから」
そう言うと彼女は少し涙ぐんで頷いた。
「貴方様は紳士様なのですね。自分で言うのも何ですが、私の見た目の良さの為に、今回盗賊が襲って来たのです。同じような事を嫌い、事実上の追放なのです。最早私はこの村にはいられないのです」
「そうだよな。確かに君は魅力的だ。村からしたら君は厄介者だよな。分かった。私で良ければ君の身を引き受けよう。話は変わるが、さっきのステータスの事を教えてくれないか?」
「そうですね。自分の能力を見たいと思い ステータス と言うか、念じてみて下さい。それで見える筈です」
成る程。頭の中でステータスと呟いた。
そうすると「封印状態 解除条件を満たしていません」
と頭の中に表示された。セチアに言うと驚いていた。
「聞いた事は有りますが、初めてそう言う方を見ました。何が有ったのでしょうか?貴方様は冒険者ではないのでしょうか?ステータスカードとギルドカードを出してみればどうでしょうか?」
出し方を教えて貰うと、2つ共無事に出た。
ステータスカードに血を一滴垂らして魔力を込めてと言われて実行すると簡易表示が出た。
名前 ランスロット
年齢 18
強さ 21232
職業 冒険者
彼女は絶句した。
「強さ10000を越えている方って、国でも数人しかいないと聞きます。あっ!冒険者カードにはなんと?」
名前 ランスロット
所属 バルバロッサ王都ギルド
ランク S
専属契約者 ナンシー・アルテミス
このように記載がある
彼女はカードを掴む手をぷるぷると震わせて呻いた。
「す、凄いでしゅ。プラチナのカードなので、ひょっとしてとは思いましたが、S級の方だなんて感激です!」
少し舌を噛んだようだが、恭しくカードを返してくれた。私もカードを見て、ナンシーって誰だろう?と呟くと、頭が痛くなった。
専属契約者って何者なのかと聞くと、ギルドの有望な冒険者に対して、専属の受付嬢を宛てがい便宜を図る。他の冒険者は手が空いている時にしか相手をしない、そのような制度だと。つまり助手を斡旋してくれている、それも無料で。かなり凄い事だと思う。
「それにしてもバルバロッサって、かなり遠いのですが、何故この国に来たのでしょうね?」
セチアさんは説明してくれた。バルバロッサへは馬車で4ヶ月は掛かると言う。
ただ、何も分からない所に手掛かりが見つかった。まずはバルバロッサに向かおう。そしてナンシーと言う受付嬢を探そう。少なくとも私の事を知っているのだろう。
私の目に刺さった矢はここに飛ばされる前に既に刺さっていた。つまり意識を取り戻す前に戦闘をしていたと思われる。荷物もない。一文無しか。色々考えていた。
「異世界転移ものの小説だと無限収納とかあってうはうはなのだけどな」
呟いている最中に
「無限収納の封印解除の条件を満たしました。無限収納を再開します」
アナウンスが聞こえ、息をするのと同じ感覚で無限収納の使い方が分かった。
収納している物を確認すると、死体が入っていたり、大量の食事、魔石、女性物の服のセット、自分の服など、色々あり自分が何者なのか益々分からなくなった。
お金が1000万G位あり、その事をセチアさんに話すと、かなり驚いていた。記憶を喪う前の私は本当に何者だったのだろうか?
「それと先程家に入る前に使ってくれた魔法は何なのか、是非教えてもらえないでしょうか?」
「あっ、それは生活魔法で、クリーンと言うんです。色々な汚れを取れるのとですね、あの時に使うと良いと聞きますが、ひょっとするとご主人様は使えるのではないでしょうか?」
試しにクリーンと唱えると使えた。
それと気になっていた首輪について聞いた。
「そう言えばこれって何なの?」
質問しながら首輪に触った。
「奴隷29を取得しました。従属魔法の表示封印解除の条件を満たしました」
謎のメッセージが又もや聞こえた。
「従属魔法って何なんだ?」
そう思うと詳細が頭の中に現れたディスプレイのような物に表示された。まるでゲームだなぁと呟く。
どうやら私は奴隷契約をしたり、再契約も出来るらしい。
試しに断りを入れてから胸元に手を当て、「奴隷契約変更」と唱えると、首輪が割れて奴隷紋が刻まれた事が分かる。
彼女は驚いて絶句していた。首輪が外れる事は生きている間にはもうないのだと思っていたようだ。
彼女は金髪で肩までの長さで黒目。
肌は白人のような肌だ。縦長のきりっとした男装が似合いそうな美人だ。彼女を見ていると何やら見えてきた。
名前 セチア
種族 ヒューマン
性別 女性(処女)
83-55-84
身長 158cm
年齢 22
レベル 1
生命力 83
魔力 68
強さ 78
ギフト
天気予報
スキル
調理3
メイド2
生活魔法
私は絶句した。3サイズが表示されるとかって男のロマンな力だろうと。
色々調べたり確認する必要がある事柄が多く、知恵熱が出そうだ。セチアさんには私の横で添い寝をして貰い、疲れから手を出す事もなく眠りに着いた。
ワーグナー王国1日目の終わりであった。
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