第123話 襲撃
気配を探るも、今の所屋敷や敷地内にはまだ誰も侵入してはいないようだ。俺は有るとんでもない事を試みようとした。
「冒険者ランスロットに告げる。お前が誘拐した勇者セリカ・キサラギ嬢の身柄をこちらに渡し、大人しく投稿しなさい」
ついに通告が聞こえてきた。
俺は答えず馬車小屋から屋敷の建物に向かう。屋敷の建物に辿りつくと屋敷の壁に手を当て、基礎を含めた屋敷全体を思い浮かべながら収納と唱えると、屋敷が見事にそこから消え失せた。当然ながら俺の姿は丸見えとなった。
馬車小屋に急ぎ向かいこちらも収納してあっという間に更地にした。
「S級冒険者と知って喧嘩を売りに来たのか?ここにはセリカという名の奴はいない。言っておくが敷地に入った者は何人で有ろうと敵対行動と見なし、この妖刀アンタレスの贄にさせて貰う。死にたい奴から掛かってこい。有象無象のボーイスカウトが何人来ようと驚異では無いぞ!」
俺はそう告げると敷地内の一辺に大きなファイヤーウォールを出して、召喚魔法というか、人工魔力体であるサラマンダーを唱えた。
するとトカゲに羽が生えた鳥に近い炎を纏った下僕が現れた。一応二足歩行もできるようで、俺より頭一つ大きい。サラマンダーは俺の方をじっと見ている。どうやら俺からの命令を待っているようなので、サラマンダーに敷地に入った者を焼き払うようにと命令を出した。初めて使う魔法なので、試行錯誤だ。
すると矢が一斉に飛んできたので、ファイヤーボールで蹴散らす。
俺は敷地外には攻撃をせず、ファイヤーウォールをあちこちに出して対応した。
遂に門の所から突撃が始まった。俺は先頭にいる奴らの所に直径10m深さ3m位になる巨大な穴を開けた。
多くの兵士が落ちていき、落ちなかった奴に情け容赦なくアイスアローを撃ち込む。俺も右腕に矢が刺さったが抜き取りすかさずヒールを掛ける。
屋敷の周りは既に数千人の兵士に囲まれている。試しに飛翔の魔法を使うも高さ20m位の辺りにドーム状に結界が張られており、俺は突破できなかった。どうやらレジスト出来ず俺が個別で閉じ込められたようだ。
穴やウォールを避けて抜けて来た兵士が攻めてきた。トマスの姿を見てしまい、少し切りつけて肩を脱臼させ、軽い怪我を負わせて、更に気絶させた。これでこいつも単なる負傷者だろう。彼がいると言うのは騎士団が動いたからだな。
両手に剣を握り締めて切り結び、死屍累々の惨状を作り出してしまった。なるべくならば殺したくはないが、当たり所が悪ければ出血死していくだろう。
俺の方も鎧や盾だけでは防ぎきれず、鎧で塞がれていない部分に切り傷を負っていくし、矢も刺さった。
いくらステータスが上がっても、肉体の強度は大して上がらないのだ。気を張れば新兵程度の剣の腕前であれば攻撃を受けても皮一枚を切るのがやっとで、腕で剣を受け止める事が出来る。だが、寝ている時だと娼婦に寝首を掻かれて殺される事も有りうるのだ。
一旦距離を置き、俺の周りにファイヤーウォールを出して一呼吸置いた。そうすると向こうも一旦退き、別の奴らが出て来た。
高校生達だ。
俺は威嚇の為にファイヤーボールをそこかしこに撃ち込み、クレーターを大量に作っていった。
兵士が大量に突っ込んで来る。なるべく殺さずにと思い手足を切る程度に留めている為、こちらも傷をどんどん負ってしまい、矢も何本か刺さった。そして遂に右目に矢を受けてしまい、視界が半減した。俺は一旦剣をしまい、投げ技での対応に切り替えた。片目だと距離感が狂い剣が当たり難いからだ。
目を復元している余裕がなかった。
内股に出足払い、大内刈りと、しまいには一本背負いも披露して無双になってきた。得意技を決めていく。
しかし高校生達が敷地に入ってきてからは事情が変わった。兵士もろとも魔法を放って来たからである。俺の鎧の付加効果で俺に対して向けられる全ての攻撃魔法を魔力に変換するので、俺には効かない。しかし周りの被害が甚大だ。魔法を放っている女の子にハラパンを決める。そうやって数人を無力化すると、向こうに焦りが見えた。
1人の男子から詠唱が聞こえた。ギフトだろうか?
「異世界より来たりし勇者により命ずる。時の彼方へ我が敵を送り出せ。門戸放出せよ。ランダムドリブンブン」
最後があれ?だったが、俺の方に奴が腕を向けて叫ぶと、間もなく何かが向かってきて俺に当たる。
(レジスト中・・・30%...70....100%突破されました。レジスット失敗)
失敗と聞こえてきた。すると上空に穴が開いた。そして俺はそこに向かって飛ばされていて、為す術が無かった。飛翔を使うも発動しなかった。しかし、その穴は結界の外にあった。
空に開いた穴に飛ばされていて、結界に押しつけられている状態だ。
非常に苦しい。
呻いているうちに結界が決壊しそうな音がし出した。頭が猛烈に痛く、激しい吐き気にやがて嘔吐した。
「ぎゃーきたねー!臭せぇぞ!」
下の奴らにまき散らしたっぽい。
無理やり押しつけられているうちにバリバリバリと音が激しくなってきた。そんな中、ダメ元で念話を送る。
「すまないこちらはもう駄目そうだ。俺の事を忘れて自由に生きていって欲しい。無念だ。愛している。ちくしょう!」
念話で刻印メンバー全員に伝えた。届いたかどうかは分からないが、意識を保てなくなり、程なくして意識を手放したのであった。
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