第51話 最後の宿
ギルドにて奴隷商への支払い手続きを完了した後、俺は服屋に向かう事にしたが、ナンシーは宿に向かう。シェリーと落ち合う場所と時間を決めていなかったので、入れ違いになるのが嫌なので、シェリーと合流したら指輪での念話を行う事とした。
目的の服屋に着くと、丁度シェリーが会計をしているところだった。
ナンシーに無事にシェリーと合流した事を伝えた後、服屋でナンシーのギルド服を受け取った。本人ではないが、お金を払った当人が来たから渡してくれた。それと店主のお姉さんにこっそりとデートのお薦めの場所を教えて貰った。
引っ越しが落ち着いたらというか、新居の生活が落ち着いたらシェリーをデートに誘い、次はナンシーを誘いたい。出来れば2人には違う事をしたいと思っている。2人の間に秘密は一切ない。だからデートの内容は筒抜けだと思わないとだからだ。
ナンシーに服屋を引き上げると伝えたところ、ギルドに戻って仕事をするとの事だ。真面目だなぁ。
俺とシェリーは家具屋に行き、最低限必要となる家具を買う事にした。
シェリーが俺の寝室用に100万Gの高級なキングサイズのベッドとその布団を即決したが、躊躇がなかった。
因みに家具店は布団も扱っていたので助かったりする。
シェリーの部屋用や客間、今回の購入した奴隷用にと取り敢えず在庫のある5台のWベッドを購入する。
本来であれば奴隷にベッド等は不要なのだが、俺は奴隷として購入し、対外的にも奴隷として扱わざるを得ないが、奴隷として扱うつもりはない。直には無理だろうが、1人の人として向き合いたい。少なくとも俺の所にくる奴隷には優しく接し、いずれ奴隷としては開放するつもりだと伝えたい。すぐに開放してしまうと、周りに目をつけられ、ろくな事にならないので、慎重にやりたい。
次にキッチンに高級な食器棚を選び、テーブルと椅子も買う事にした。
貴族の食堂で使われる長いテーブルは、複数のテーブルを並べて構成するのが普通だとの事で、取り敢えずは10人が座る事を想定する。6人用のテーブルを2つと、それに合わせた数の椅子を買う。
各部屋用の机とその椅子を5セット購入。寝室用の高級な机と椅子もだ。
俺の書斎用に大きめの高級な机と椅子も発注した。安いので良いよと言うとシェリーに怒られた…
家の主たる俺の物は安物はダメだと頑なに主張していたので、お金にまだ余裕があるので良い物を買う事となったのだ。珍しく強く主張しており、気圧された位だ。
一旦これ位にし、会計を行ってから在庫がある分に関しては俺が無限収納に収納した。アイテムボックス持ちだと伝えると、ほっとしていた。珍しいが、この国にも数人いる筈なので、騒ぎにはならない。
発注した分も含め金貨450枚を払う。配送が無い分は安くして貰っている。
流石に全ての部屋の分を買うのは物理的にも金銭的にも無理だったので、追々必要な物を決め、買い足す事になった。
宿に帰る途中にふと甘味を扱っている店が目に入ってきた。ついついシェリーと入る。幸せそうにドーナツみたいなのを食べているが、頬に食べかすが付いていたので取ってやり、俺の口に運んだ。
シェリーは少し照れ笑いをしていたが、そんな彼女の笑顔を守りたい。俺は甘い物が特に好きという訳ではない。勿論嫌いではないが、出されたら食べるし、デートで女性をそういうお店にエスコートしたりもする。今回はシェリーの笑顔を見たかっただけだ。
こんな何の変哲の無い日常が俺には眩しかった。
食べ終わったので会計をする時にお土産を買い、店を出てからは寄り道をせずに宿に戻り、宿主に明日購入した屋敷に移るので、今晩がここに泊まるのは最後になる旨を伝えた。
今晩は宿泊者として最後の食事となる。
部屋で休んでいると、ナンシーがもうじき宿に着くと念話で連絡をしてきた。シェリーは俺の背中をマッサージしてくれていた。ずっと緊張しっぱなしだった為か、かなり凝っていた。うーん!極楽極楽!。
食堂の席に着くと、程なくしてナンシーが現れ、最後の?3人での食事を楽しんだ。
やはりナンシーも泊まる事になり、その日は他愛もないギルド職員の恋愛話で盛り上がったりした。
話の途中に俺は風呂に入る事にした。
今日の風呂はいつもと趣向が違った。
いきなり洗い場に裸の2人が入って来て、俺を洗い出した。
そこまでは良い。どさくさに紛れてバクンチョされたがご愛敬。そして先ずはシェリーが体を洗ってとおねだりをしてきたのだ。ねっとりと洗いましたよ!特に胸を。
次はナンシーもすがってきたのでやはり念入りに洗う。
うーん!至福の時だ。
そして2人して俺にそっち系のご奉仕をしてきた。快楽に意識が飛びそうだ。極楽極楽と思っていたが、俺は溺れそうになり意識を取り戻した。そう、何の事はない、湯船に浸かって寝ていたようだ。湯船に浸かりながら寝てしまい、夢を見ていた。やがて顔が湯船に沈んだので目が覚めたのだ。
そう、ご奉仕されていたのは夢だった。願望かな?つまり妄想だったのだ。
普通に風呂を上がるも俺の妄想以外は特にイベントは何もない。寂しいものだ。
2人も代わる代わる風呂に入る。 俺は風呂から上がった2人に代わる代わる真面目なマッサージをし、最後の宿を堪能した。
この時点で既に元の世界に帰るつもりは全く無くなっていた。後で愕然となるのだが、地球に家族がいるというか、もう会えないのでかつてはいたとの表現になるが、記憶になかった。だからナンシーとシェリーを彼女にしていても、向こうの家族に対してどうこう思う事がなかったのだ。
そして就寝時間になったが、2人と一緒に布団に入ると2人は腕にしがみついてくる。
俺はうとうとしながらふと思った。
名前が出てこないのだ。
そう自分の本名がだ。
慌てて泣きながら起きて呟いた。
「俺の、自分の名前が分からなくなった。くそー!」
シェリーとナンシーは俺を布団に戻し、前後から優しく抱きついてくれた。
「シェリーがついています」
「ナンシーは何があろうとランスの味方だからね!」
優しく頭を撫で、抱き寄せてくれる。どちらのだろうか、俺は胸元に顔を埋めて少し泣いていたのだが、優しく抱きしめられていたからかいつの間にか落ち着いた。
ただ一言2人に有難うとお礼をする。それを発するのが今の俺には精一杯だった。何かを喋ると泣き崩れそうだったからだ。
そして意識を手放す直前に感じていたのは、明日は大変な1日になるのだろうなと。そんな感じに思っていたが、心臓の鼓動が心地良く、その心地良さに癒やされながら、やがて眠りに落ちるのであった。
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