第27話 換金

 朝目覚めると、俺の顔は双丘に埋まっていた。シェリーが俺の頭を抱えていたからだ。


 どうりで寝心地が良い訳だ。

 チョット息が苦しいけど、柔らかさと心臓の鼓動が俺を癒やす。

 俺の手は彼女の背中を抱きしめていた。

 少し痺れていたが、その滑らかな肌の心地良さをいつまでも堪能していたかったが、そういう訳にはいかなかった。


 お互いおはようの挨拶をしたが、シェリーが先に寝床から出て俺の前にも関わらず、服に着替えはじめた。俺がぼうっとして眺めていたが、やはりエッチと言われた。


 今日は冒険に向けての道具の購入と、昨日倒した魔物の討伐証明部位、まだ出していなかった討伐証明部位を持っていた。

 その為、換金するのにギルドに行く事にし、普段着に着替えた。


 そんなシェリーの着替えを堪能していたが、やはり綺麗である。

 まだ一緒に過ごし始めてからは数日だが、日増しに肌の色艶が良くなってきているのが分かる。

 また、スタイルが良いと言うよりも、モデル体型を超えており、がりがりだった。

 そんな躰も段々と健康的な膨らみと柔らかさを取り戻しつつあった。


 実はまだ彼女と致す事を躊躇っているのには、彼女の躰が本来有るべき体重に遠く及んでいないのが大きい。まだまだ痩せており、痛々しく壊れそうなのだ。それに彼女とこれからの人生を一緒に歩む覚悟と、子をなす覚悟がまだ無かったのもある。昨日は裸で寝たけどまだだからね!彼女はまだ清い体のままだ。まだね。


 劇的な出会いではあるし、愛おしくもある。一緒に生きて行く覚悟も期待も出来つつあった。


 しかしこの世界にはコンドームが無い。いくら躰の外に放出しても、妊娠の可能性が高くなるので躊躇していた。

 実は手が有ったのだが、それを知るのはまだ先だ。生きる為にお金を得る算段が無くては、子を育てる事など出来る筈が無いのだ。


 なので今は彼女の健康回復を待つ事にし、決断を先送りにしていた。着替えの時にも確認したし、ベッドの中で背中を擦っている時にも感じたのだが、まだまだ痛々しい位骨が浮き出ているのだ。


 シェリーはシェリーで時折挑発してくるし、元気溌剌なのだが。


 朝食を済ませると、早速テント等を扱っている装備店に赴く。背嚢と2人用の小さ目のテントを選んだ。また、魔石ランプ、携行用の毛布、簡単な調理器具等、野営に必要な物を一通り選び購入していく。


 その後宿に荷物を置きに戻り、討伐証明と魔石を持ってギルドに向かった。

 魔石は一部を強化用に残す事にし、ある程度は売る事にした。


 実は魔石のいくつかは壊してしまい、倒した魔物の全てから回収できた訳では無い。

 首ちょんぱを狙う事が多いのは、一つにこれを避ける為である。袈裟懸け、薙ぎ払い、ましてや心臓への突き刺しにて魔石を壊すケースが多かったのだ。当初の俺の剣戟には鎧を貫通するだけの膂力が無かったので、首を刎ねる方が現実的で多用していたのだが、いつの間にか首チョンパが俺の主な戦闘スタイルとなっていた。


 本当は首を刎ねる方が難易度は高かったりするのだが。


 俺達がギルドに着いたのは11時を回った頃だった。

 朝のピーク時間を過ぎている為だろうか、受付カウンターは比較的空いていた。


 ナンシーの所に並んで順番を待つ。

 以前のように絡まれる事も無く、5分程で順番が回ってきた。


 南の魔の森で取れた分のオークの魔石は強化用に取っており、今日は持ってこなかった。


 ゴブリン8匹の討伐証明と魔石21個、オーク4匹の討伐証明と魔石4個、オーガの魔石2個を出した。

 常時依頼を昨日受注しており、ゴブリン6匹とオーク2匹の討伐依頼を完了する手続きをした。



 討伐証明はゴブリンが8000,オークが20000,魔石はゴブリンが8000,オークが32000、オーガが10万、昨日渡していた討伐証明が40000、クエスト達成報酬がゴブリンが10000、オークが20000,合計23万8千Gとなり、結構な稼ぎとなった。


 そして早速ランクアップし、Eに上がった。オーガはBランク寄りのCランクの魔物なのだと教えてくれた。


 今日はこの後は、武器を購入をする予定にしている。


 ナンシーがシェリーに尋ねた


「所でシェリーさん、お昼はこれからかしら?もう少ししたら私は休憩に入るのだけれども、もし良かったらお昼をご一緒に如何?」


 シェリーが俺の顔を見るので、俺は頷いた。


「じゃあロビーの待合スペースで待っていて欲しいの」


 シェリーに告げると他の受付嬢に、お昼に行く旨を伝えていた。


「お昼に行ってきます」


 そう言いつつ一旦カウンターの後ろに下がり、上着を羽織って出てきた。俺は一言も行くとは言っていないのだが、ちょっと強引だなぁと苦笑した。悪い気はしないけど。


「さあシェリーちゃん行きましょう。すぐ近くに美味しいお店が有るのよ!」


 呆気にとられているシェリーの腕をナンシーが取り、さも当然と行った感じで腕を組んで歩き出した。美人の2人が腕を組んで歩いているのは凄く絵になる。


 ギルドから200m位離れた所にある小洒落たカフェレストと思われるお店に来た。もしも俺一人だったとしたならば、入るのに敷居が高そうな女性客ばかりのお店だった。


 そして俺達は店員に案内され、席に向かって行くのであった。

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