第167話 歓喜
これは予想外のサプライズだ。
まさか、こんな風にプレゼントを用意しておいたなんて、きっと想像もしていなかっただろう。
でも、それでいい。
何故なら、コレを見て喜ぶ君の顔が見たいから、ずっと黙っていたんだもの。
この計画は、もう、随分と前から立てていた。それこそ年単位で、君と始めて出会ったときから特別なプレゼントはこれにしようと決めていたのだ。
でも、これは簡単に手に入る物じゃ無いから、毎年少しずつ、丁寧に計画を練った。
正直、こんなにも一つのことに集中したのは初めてで、何度も心が折れてしまいそうになったりもしたけれど、君の喜ぶ顔が見たくて頑張ることが出来たんだ。
そして、今年。漸くこれが完成したというわけ。
これは結構な大きさがあるから、君に秘密にするのはとても大変だった。
何故なら君は、とても好奇心が旺盛で、共に過ごせない時間のことを詮索したがったから誤魔化すのが大変だったんだ。
でも、君に知られるのだけはどうしても避けたかった。ギリギリまで秘密にしておいた方が、君はとっても驚いてくれるはずだと分かっていたからだ。
それでもこれが完成に至るまで、つい気持ちが昂ぶってしまったのは否定出来ない。思わずにやける顔や零れる鼻歌から、君は何かを感じ取っていたんだろうね。教えてくれないと言うことを不満げに頬を膨らませ、不機嫌そうにそっぽを向かれるのも何度もあった。
その度に君を傷つけてしまったのだと気付き落ち込んだけれど、それでもこのサプライズだけはどうしても完成させたかったから黙って我慢していたんだよ。
本当はもっと早くこれを見せてあげたかったんだけど、努力しても叶わないことって確かにあるんだね。上手くいったと思っても、別のところでボロが出たり、それを直そうとして余計にドツボにはまったりで、何度も堂々巡りを経験したりもした。
理想が大きくなれば成る程、思い描いた完成図とのギャップに苦しむ事も多かった。
正直に言えば、幾つか妥協したところもあるんだ。本当はちゃんと、計画通りに作りたかったんだけど、どうしても材料が手に入らなかったり、調整をしてみて上手くいかなかったりしたところは、初めのプランから変更せざるを得なかったんだ。
それでも何とか形になった。これは自分の事を褒めて上げたくなるくらい素晴らしいことだと思っている。
あっ。ごめんね。
つい、話に熱が籠もってしまったね。
こんな話退屈だったよね?
ううん。そんなこと無いって言ってくれるのはありがたいけど、本当はもう、プレゼントが見たくて仕方ないんだって分かってるよ。
だって、同じ立場ならきっと、君と同じように思うし感じると思ってるからさ。
それでももう少しだけ。此処でまっててくれないかな? そろそろこれも落ち着くと思うし。
あっ! 先に言って置くけど、期待はそんなにしないでよ! 一生懸命用意したけど、そ……そんなに上手く出来なかったところもあるから、結構誤魔化しちゃってるし。
あ、あんまり期待されると……その……なんか…………好みじゃなかったらゴメンって思って怖くなるから…………。
…………うーん。そろそろかな? ん? ああ。うん。時間をみてた。そろそろ午後三時になるでしょ? 今くらいの時間が丁度良いかなって思って。
それじゃあ、早速。君にこのプレゼントをあげるよ。
頑張ってラッピングしたけど、リボンが上手く結べなかったことは許してよね。
さぁ。リボンを外して、中身を確認してみて?
絶対気に入ってくれるハズだから! そうだって信じてるから!
…………あはっ、あははは。
そうそう……そうだよ…………これ……これだよ。
やっぱり君は気に入ってくれたんだね?
言葉も出ないくらい驚いてくれたし、目を大きく見開いてこれを見てくれるのも、喜んで気持ちが昂ぶったからでしょう?
大丈夫。これは君が好きにしてもいいよ。これは君が受け取ったものだから、好きなように使ってくれれば良いからね。
ああ。やめて…………そんな顔して見ないで。
そんな風にされると、興奮して理性が外れてしまいそう。
君がこんな風に喜んでくれるなら、来年のプレゼントはもっと良い物を用意したくなっちゃうじゃない。
あっ! そうだ。
良い事を思いついちゃった。
来年は、もっと気に入るモノを用意するね。だから…………その日を楽しみに待ってて。
約束だよ? 絶対に。
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