第9話 ある令嬢の手記
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シェリンガム暦1853年1月20日
今日は『魔力機関車』が走る鉄道の開通記念式典が開かれた。もちろん私も出席したわけだけども。どうにも納得できないことが二つばかりあった。
一つ目は、男性と女性で席が分かれていたことよ!
各家門の当主や令息方は前、夫人や令嬢たちは後ろの席。この国は、どうしてこうも女性の地位が低いのかしら。彼らはいつだって
二つ目は、ジリアン・マクリーン嬢まで後ろの席に座らせたことよ!
この1年で『
私が公爵位を継いだら、真っ先に改革してやるんだから!
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1月21日
テオバルト・マルコシアス侯爵。昨日の式典でも見かけたけれど、本当に美しい人だわ。
それにしても、あんなに堂々と王立魔法学院に乗り込んでくるとは。何かを企んでいるのは間違いないけれど……。
よりにもよって、ジリアン嬢を口説くだなんて!
だからこそ、彼の目的が分からないわね。ジリアン嬢はマクリーン侯爵家の後継者で、確かに国にとっての重要人物だわ。だけど、マクリーン侯爵は現在の議会で重要な位置にいるということもない。
近づくなら、もっとやりやすい令嬢が他にもいたはずなのに。私に近づいてきたと言うなら、まだ分かるわ。お父様は大蔵卿だもの。それなのに……。
気をつけておかなきゃ。
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1月28日
今日は、とてつもなく疲れたわ。
お祖父様とテオバルトが接触しないように、気をつけていたけど。授業じゃ仕方ないわよね。まさか、留学生に『この授業は受けるな』なんて言えないし……。
とはいえ、なんとか無事に終えられてよかった。
彼の精霊の魔法はすごかった。貴重なものを見せてもらえたわ。
それにしても、……ジリアン嬢は正真正銘、武人の子ね。
刃を交わして、はじめて友情が芽生えるだなんて。こういうの、なんていうんだっけ? 脳筋?
テオバルトも同類。彼には、本当に裏などないのかもしれないわね。
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2月1日
テオバルトが魔法学院に来て2週間も経っていないけど、すっかり馴染んでしまったわ。相変わらずジリアン嬢の尻ばかり追いかけているけれど。
今日も彼女の護衛騎士に
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2月7日
そんなことないわ。ジリアン嬢を放っておいたうえ、他の女との婚約話が噂になるだなんて。最低よ。
……こんなドロドロした世界、ジリアン嬢には似合わないわ。
彼女には、ただ
たぶん、彼も同じことを願っているんだわ。だから、彼女には何も話さないんでしょうね。そんな不器用だけど優しい
こんな不甲斐ない男だとは思わなかったわ!
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2月25日
ジリアン嬢が、ほとんど登校しなくなって2週間以上経つ。体調が悪いということだけど、本当のところは……。
マルコシアス侯爵は相変わらず楽しそうに学院生活を送っているけれど、少し寂しそう。ジリアン嬢がいないからといって他の令嬢に粉をかける様子もないし。
……やっぱり、本気だったのかしら?
もうすぐ春、ジリアン嬢の誕生日ね。
今年はこんな状況だから、パーティーはないかも。それなら、プレゼントだけでもお送りしなくちゃ。
今年は、何を贈ろうかしら。
第1章 完 To be continued...
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第2部 勤労令嬢、恋をする - 第1章 勤労令嬢と留学生
これにて完結です!
次話からは、第2章 勤労令嬢と社交界 が始まります!
1年前、ジリアンの異母姉妹であるモニカ・オニール嬢に『
ジリアンの潜入捜査の行方は?すれ違ったジリアンとアレン、そしてテオバルトの恋はどうなる?
波乱万丈の第2章にも、乞うご期待!
面白いなあと思っていただけましたら、応援&コメント、フォロー、★、おすすめレビュー、よろしくお願いします!
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