学校祭を楽しもう!~その3・合唱祭本番直前~
「う、うわわわわ……この次、もう俺たちの出番なの? 早過ぎない? 誰か早送りボタン押してない?」
「誰かって誰だよ、神様か。舞台袖にくると、いよいよ本番って感じがするな」
「平然としてるなよ、山川ぁ! うわぁ、やばいやばい、マジで緊張してきた! 心臓ドクドク言ってる! 膝ガクガク言ってる! 歯ぁガチガチ言ってる!
「膵臓が発する擬音なんて生まれて初めて聞いた」
「ええと、ええと、歌い出しってなんだっけ? 『アーユーレディ?』『イエー!』『オーケー、エブリバディレッツシンガソーン!』だったっけ?」
「どこから引っ張り出してきたんだ、その盛り上がりそうだが場違いなノリ。そして『イエー!』は自給自足するのか」
「なんとかしてくれよ山川ぁ! 俺もう、緊張し過ぎて歌えないぃぃぃ!」
「ったく、世話が焼けるな。じゃあ、掌に『人』って漢字を三回書いて、呑む真似をしてみたらどうだ。『人を呑む』っておまじないだ」
「ヒト、ヒト、ヒト……盗賊なんて呑んでどうするんだよ? おいしいの?」
「……『
「うー、落ち着かないぃぃぃ。舞台に立った瞬間、まるで観客全員が俺に注目してるような錯覚に陥っちゃうんだよな」
「なるほどな。じゃあ、その錯覚を無くすおまじないを伝授してやろうか」
「おおお、そんなのあるの? 教えてくれ山川!」
「まず、前のクラスが舞台から降りたら、お前が一人で真っ先に舞台に飛び出していき、司会者からハンドマイクを奪う。次に指揮台の上に華麗に飛び乗ってポーズを決め、観客席を指差しつつマイクを握って、さっきの歌い出し、ハイ」
「『アーユーレディ?』『イエー!』『オーケー、エブリバディレッツシンガソーン!』」
「そうそれ。あとは何事もなかったかのように指揮台から降り、俺達に合流して本番に臨むだけ。簡単だろ」
「ほ、本当だ、簡単だ! ……よし、前のクラス終わったな、いざ!」
「そうすれば恐らく、錯覚じゃなく、観客全員がお前から目を離せなくなるだろうからな」
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