第292話 オークと、反省点と、役割分担

 空飛ぶ板で、魔境までひとっ飛びとはいかなかった。

 モンスター討伐に慣れていないベーク達5人が、げんざい演習中。


 相手はオークか。

 2.5メートルほどの巨体だが特別火を吐いたりしない。

 物理パワーは凄いが、バリアがある俺には、くみし易い相手だ。

 雑魚とも言う。


「くっ、【火球発射】」

「【火球飛べ】」

「【ハニスイコチリリ】」


 スペルブックを開いて、ベークとコネクタとリッツが火球を放つ。

 オークは丸太を削って作った棍棒で、火球を打ち消した。


「【石拘束】ですわ」

「【石拘束】いきます」


 ラチェッタとベスが石の触手でオークを拘束する。


「長く持ちません」


「任せろ。【特大火球発射】」

「【爆炎火球】」

「【コラモコ】」


 身動きの出来ないオークに火球が当たり爆発を起こした。

 ベークとコネクタとリッツがハイタッチする。

 まだ死んだとは限らない。


 ラチェッタとベスもベーク達とハイタッチした。


 気を抜いているようでは、まだまだだな。

 まあ、実際は死んでたが。


「はいはい、喜びは良いから集まって」


 俺はベーク達を集めた。


「反省点はいくつかある。分かるか?」

「役割が被ってますね」


 ベスがそう答えた。


「それもあるな。前衛職がいない」

「僕たちはそんな事は出来ない」


 ベークが俺の答えを否定した。


「お前らに、マイラやリニアほどの動きを求めてはいないが、拘束魔法を掛けるなら、足止めが必要だ」

「遠距離からの魔法では駄目かな? 上手くいった感じだけど」


 と納得いかないコネクタ。


「スピードが速いウルフ系とかだと苦戦するぞ」

「誘導弾があるさ」

「リッツ、誘導弾を振り切る敵もいるんだ。魔境とかだとな。それと、ソ・ミカカの詠唱は辞めろ。意思疎通が図れない」

「えー、良いと思ったのに」

「スペルブックの中身までは文句は言わないがな。一番の問題は敵の死を確かめるまで気を抜くな。やったと言ってから逆に倒されるのは様式美だが、かなり間抜けだぞ」


 さて、肉弾戦をどうやって仕込もう。

 筋力強化の魔道具が作れるから、それを使って貰おうか。

 地力ならオークにも負けなくなるはずだ。


 魔道具をベークとリッツに装備させた。

 リッツは自分から前衛に志願。

 ベークはコネクタとのじゃんけんに負けたので嫌々やることになった。


 拘束の魔法はラチェッタが担当。

 攻撃魔法はコネクタ、ベスの兄妹がやる事になった。


「オークが来ている油断するなよ」


 みんな短く応え、戦闘陣形を組んだ。



「ふはは、体が軽い。羽のようだ」

「トレンはこんな景色を見ているのか」


 ベークとリッツが剣でオークの足に斬り込む。

 刃筋が通ってないのか浅手に終わった。

 なんちゃって剣士だからな。


「【石拘束】ですわ」


 拘束魔法は簡単に掛かった。


「ベーク、リッツどいて。【爆炎火球】」

「【電撃】」


 コネクタとベスの攻撃魔法が炸裂。

 オークは死んだ。


「はいはい、集まって。今回の反省点は?」

「ずばっと斬れなかった」

「同志よ。俺達は剣士じゃない」


「まあ、ゆっくりと剣の腕を磨けよ。今回は間に合わないが、けん制ぐらいにはなるだろう」


「後衛は上手く機能してたと思う」

「拘束魔法が掛かっていれば、あんなものは容易いわ」


「そういう意味では、ラチェッタがMVPだな」

「えむ何だって」


 不味い英語が出てしまった。

 リッツに突っ込まれるとは。


「殊勲賞って意味だと思う」


 ベークの謎翻訳が発動したようだ。


「マイラ達は何かあるか?」

「死角から行ってずばっとよ」

「罠要素が皆無ですわ」

「一撃必殺でしたから、合格点です」

「オークの足ぐらい両断出来ないと」


 やはり彼女らの意見はあまり参考にならない。

 レクティの罠というところは少し同意できるが。


「ソ・ミカカ語の電撃魔法を要求します」


 ベスが声を張り上げた。


「あとでベークとリッツに頼め」


「拘束魔法の魔道具を作った方が良いみたいですね」

「それもベークとリッツに頼め。ソ・ミカカ語の性能の良い奴を作ってくれる」

「それで相談が」


 ベークが気持ち悪い目で見てきた。


「言ってみろ」

「警報魔法と拘束魔法を組み合わせた魔法が欲しい」


 作れって言うんだな。


「交換条件はなんだ?」

「僕に頼みごとが1回できる」


 ベークに頼み事か。

 必要になる事態が起きる未来が想像できない。

 でもそういうのがあっても良い気がした。


「よし、それで引き受けよう」

「ラチェッタ、良い魔道具を作ってプレゼントするよ」

「嬉しいですわ」


「魔境のモンスターの魔石は大きいから、それで作れ」

「よし、頑張ってモンスターを倒すぞ」


 拘束の魔道具か。

 道中の暇つぶしが出来たな。


――――――――――――――――――――――――


 肉体強化載せておきます。

 読まなくても良いです。

 


#include <stdio.h>

#include <stdlib.h>

#include <string.h>


extern void mystery_magic_name_get(char *str);

extern void time_wait(long time_ms);


void enhanced_body(char *str)

{

 FILE *fpi,*fpo; /*体の定義*/

 char str_com[256+5+5+5]; /*コマンドの格納場所*/

 int i;

 fpi=fopen(str,"r"); /*体を読み込みモードで開く*/

 fpo=fopen("temp","w"); /*仮の体を書き込みで開く*/

 i=getc(fpi); /*体のデータを入力*/

 while(i != EOF){ /*体のデータが終わるまでループ*/

  if(i & MUSCLE_FLAG !=0){ /*筋肉か判定*/

   i=i+100; /*筋肉なら100アップする*/

  }

  putc(i,fpo); /*仮のデータを出力*/

  i=getc(fpi); /*体のデータを入力*/

 }

 putc(i,fpo); /*仮のデータを出力*/


 fclose(fpi); /*閉じる*/

 fclose(fpo); /*閉じる*/

 strcpy(str_com,"copy temp "); /*コマンドに『copy temp 』をコピー*/

 strcat(str_com,str); /*コマンドに神秘魔法名を連結*/


 system(str_com); /*出力した仮データを体に上書き*/

 system("del temp"); /*仮データを消す*/

}

void main(void)

{

 char str[256+5]; /*神秘魔法名の格納場所*/

 mystery_magic_name_get(str); /*神秘魔法名ゲット*/

 strcat(str,".body"); /*神秘魔法名に『.body』を連結*/


 enhanced_body(str); /*筋肉強化*/

 time_wait(360000); /*1時間待つ*/

}

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る