第10話 明太の子


 時が流れるのは早いもので、僕は誰とも付き合えないまま、小学校を卒業してしまった……。

 正直、リアルJCになったセーラー服姿のムラ村さん達を見られないことは、非常に残念だ。


 卒業式を終えた後、すぐ次の日に名古屋を出た。

 朝の4時ぐらいに。

 さすがに、名古屋から福岡という長距離だから、飛行機で行くと予想していた。

 タイトなスカートを履いているスチュワーデスさんのヒップを、すれ違い様に拝めるとかなり期待する……。

 が、どケチなお父さんのせいで、車で15時間ぐらいかけて、福岡に引っ越した。


「クソがっ!」


 と車内で呟いたかもしれない。


 名古屋で出会えた女の子たちを思い返すと、ため息が漏れる。

 しかし、僕と反して、お兄ちゃんは車内でなにやら機嫌が良く見えた。


「おい、童貞。名古屋が忘れられないのをわからんでもないが、福岡はいいぞ~」

 と助手席からニヤリと笑う。

「なんで?」

「飯もうまいし、ほどよく都会だし、なにより博多美人がわんさかいる」

 それを聞いて、僕は鼻で笑う。

「そんなの偏見じゃないか……」

「レベチだ。博多はとにかく美人が多い。お前は小さかったからわからないだろうが、お兄ちゃんは昔たくさん見てきた」

「ふーん」


 僕はそんな地域差別をしない。

 可愛い子はどこにでもいる。

 あとエロい子も……。


 福岡について、すぐに中学校へ入学。

 

 正直、ノリが名古屋と全然違って困惑した。

 それに周りは、みんな博多弁全開で喋ってくる。


「童貞くんってさ。名古屋人なん?」

「いや、違うけど」

 

 福岡に来て、初めて話す女の子だった。


 髪の色が少し抜けていて、金髪ぽい。

 あと目がパッチリしていて、低身長。

 つるぺた。


「私、森盛もりもり まりなって言うっちゃ! よろしくっちゃ」

「ああ、よろしく」


 最初は「ちゃちゃちゃ」言うから、『赤ずきんチャチャ』にハマっているのかと思った。


 森盛さんかぁ……。

 福岡って結構いいかも。


 ある日、中学校で体育の授業が始まった。

 僕は小学校と同じく、教室で着替えるものと思い、体操服を持参して通学する。


 もう第二次性徴が始まった子も多いから、男女別々に着替えるものだと思い込んでいた。

 しかし、同じ教室で着替えると指示があったので、驚きだ。


 隣りに座っていた森盛さんが、急にシャツのボタンを外し始める。

 シャツを脱ぎ終えると、吊り下げスカートを床に下ろす。

 

「ゴクリ……」


 出てきたのはブルマ、とはいえ、女性が堂々と目の前で脱衣する姿は初めての経験だ。

 体操服とブルマ姿になった森盛さんを上から下まで、眺める。

 低身長、大きな目、未成熟ってレベルじゃない胸部。

 福岡、永住してもいいかも。


「どうしたと、童貞くん? はよ脱がんね? 運動場まで急がないかんけん」


 なんて恥じらいのない子なんだ!?

 男の僕のに脱衣を薦めるなんて……。

 そんなに僕の裸が見たいというのか。


「あ、うん……」


 促されて、僕は学ランを脱ぎだし、ブリーフ姿になる。

 すると、森盛さんが何を思ったのか、悲鳴を上げる。


「キャーッ! ちょ、ちょっと。なんしようとくさ!」

「なにが? 着替えているんだけど……」

「見ればわかっちょるよ! なして、そげな格好なんよ!」

「え……」


 気がつけば、辺りの生徒たちがクスクス笑っていた。

 どうやら、みんな制服の下に体操服を着ていたらしい。


 ブリーフ一丁の人間は僕だけ。


「は、はよ着ちゃらんね!」


 森盛さんは顔を真っ赤にして、僕をじっと見つめる。

 特に股間をだ。

 

 ハッ!? 辺境の地に来て間もないというのに……。

 この子、僕に惚れているかもしれない!?


(博多弁は正しくないと思われます、たぶん)

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